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ドアマットヒロイン? いえ、ドアはございません  作者: 六軒さくみ


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余談 料理とは爆発だ


さて、布団に入ってマダムの言葉を考えていたフランは、この3年間を思い出そうとして、

あっという間に寝落ちしてしまったので、とりあえず、勝手に進めようと思う。


伯爵令嬢として生きてきたフランに、何かできるかといえば何かができるわけではなかった。

祖母とてそれを見越して、平民として生きている自分の異母妹に託していたのだ。

ただ、予想外だったのは、フランの我慢が長すぎて、

祖母の異母妹もそこそこの年齢になってしまったことだ。


フランが頼ったときすでに齢70を超えており、杖を使ってやっと歩いている状態で、

フランのために何かできることははっきりいって何もなく、

下手をすりゃ、お世話係となってしまったのだ。


底をつくほどの貧乏ではないが、とても裕福とは思えない暮らしぶりで、

着の身着のままのフランを追い出すことはない「いいひと」ではあったけれど、

祖母のように守ってくれるような人間ではなかった。


そこにはおそらく、同じ父親から生まれたにもかかわらず、

自分は平民でしかないという思いもあったのか、

時々、フランにきつく当たったのだ。


異母妹の母親は、祖父の屋敷で下女をしていたそうなのだが、

ある時酔っ払った当主に無理強いされて、そのまま身ごもってしまった。

それをメイド頭に伝えたら、ある程度の金を握らせて邸を追い出されたのだ。


父親のいない子を育てているのは珍しいことではないが、

子供がいるため仕事が限られるのは確かだ。

結局、夜の酒場で仕事をして、日銭を稼いで暮らし、娘である異母妹を育てた。


異母妹が10代の時、事情を知った祖母が迎えに来て、

表向きは祖母の侍女として引き取られ、

そこではマナーなども覚え身分は別としても穏やかな生活を送ったのだが、

祖母が亡くなり、暫くは豪商などのお家でマナー教師として働いていた見ものの、

65を超えたあたりで、生活がきつくなってしまった


そこに現れたのがフランだったので、

ついつい都合よく便利に使ってしまうことを覚えたのだ。

フランもそれに異を唱えることはなく、聞き分けのいい都合のいい長女から、

便利で都合のいい召使にチェンジしただけである。


ただし。

ここが異母妹の大きな誤算だったのが、

フランははっきり言って本当に何もできない、

生活力のない伯爵令嬢だったのだ。


まず自分で身支度をすることができない。

今まで邸で都合よく聞き分けのいい長女だったが、

家で虐げられて使用人のように扱いを受けたわけではない。

だから、侍女もいたので、着替えはすべて手伝ってもらっていたのだ。

おかげで、ドレスを一人で脱ぐこともできない。

そもそも伯爵家令嬢が外出用のドレスを着ていたのだから、一人で脱着など無理である。


異母妹は、自分の若いころの服を着せることにしたのだが、

不本意にも手伝う羽目になった。

フランは何度もごめんなさいと謝りつつ、

ドレスを脱いで着替えたのだが、その軽いことと言ったら。

びっくりするくらいである。


次にお茶である。

お茶なんか自分で用意したこともなければ、

歩いて数歩しかない家屋なども初めてである。

茶器を渡されて突っ立っているフランに、異母妹はため息をつきつつ、

お湯を沸かすように告げるもお湯を沸かす作業なんてやったことがあるはずもなく、

かまどすらない家でどうやって沸かすのかわからない。


異母妹は仕方なく、暖炉で湯の沸かし方を教える。

暖炉とかまどが一体化してるなんて、

信じられないとばかりにフランが声を上げた。


そうこうしているうちに、どっぷりと日が暮れて、

フランも異母妹も泥のように眠る羽目になった。


翌日、お湯すら沸かすことのできないフランが、

朝食など用意できるはずもなく、異母妹と一緒に用意することになったのだが。

これが驚きの連続だった。


まず、料理前の野菜なんて目にしたこともなかった。

包丁を見たことがない。

料理を切り刻むなんてできるはずもない。


そのうえ、硬いパンなど初めて食べた。

薄い紅茶も初めて飲んだ。

極めつけは、スープの具材も貧相なもので、薄味だ。


けれど、人というのは、腹がすけばなんでも食べられるもので、

フランは与えられたものを素直に食した。


そこから、フランの料理修行が始まったのは言うまでもない。

異母妹とて、フランが料理を覚えてくれないと、

痛む足で料理をとなければならないから、それはもう必死に教えた。


ところが、どうもフランには料理の才能が今一つだった。


パンを作ろうとして、小麦粉をあたりに振りまいた。

言うとおりに作っているはずのスープがとんでもない色に変色した。

おかしい。


フランは頑張った。

仕舞にはフランではなく、料理でもなく、

異母妹が爆発して、料理は異母妹の担当になった。

解せない。


それでも1年を過ぎたころには、まともに料理ができるようになった。


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