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ドアマットヒロイン? いえ、ドアはございません  作者: 六軒さくみ(咲海)


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嫡男には嫡男の苦労があるらしい

伯爵家の都合の良い残念な長女として育ってしまったフランだが、

侯爵家の嫡男として育ったローランドとて苦労は絶えない。

嫡男として生まれたからには、親の期待は一挙に押し寄せてくるからだ。


次代に「血」を繋ぐのは当然として、家というもの守り抜くことこそ本題なのだ。

ローランドは嫡男として産声を上げたその瞬間から、いばらの道が始まった。


幼いころから両親をはじめとする一族の重たすぎる期待を一身に背負い、

子息として大きく羽目を外すことを許されることもなく、

面白みがないと友人たちに揶揄されながらも至極真面目な十代を送った。

まさに清く正しくである。


そのため血のにじむ、努力をしたのだ。

剣の稽古で何度も姉に叩きのめされて、何度血がにじんだからわからない。


貴族の子弟が勉学のために入学する学園においても、

そこそこの好成績ををのこし、文武両道の見本と言われ、まさに理想的な男子となった。

世の中には学園で羽目を外しすぎて退学になるアホもいると聞くが、

ローランドはそのような人間達とは別世界の住民にとして生きてきた。


卒業後は父から賜った伯爵位で、貴族院に席を置きつつ、王族の近衛として身を置いている。

まさに貴族の花形としての道を歩んでいるが、ローランドには新たな悩みができたのだ。



まず、結婚だ。


両親は政略とはいえ夫婦仲もよく、未だに新婚気分の浮かれ夫婦。

姉は好きなった男を押して押し倒して、強引に結婚したつわもの。

(もっとも相手の公爵が姉を崇拝しているが…)

そんな事情もあって、両親は期限を決めて、ローランドに恋愛の自由を当てえてくれているものの、

両親も姉もはっきりいってローランドの恋愛にはまったく参考にならない。


そもそも期限を与えてくれてはいるが、

あえてそこでも次期当主としての力量を試しているのだ。

真実の愛だとかぬかして、家の格とは釣り合わない相手を選んでしまったら、

たぶん、失格の烙印を押されてしまう。


世の中には、家の格の合う婚約者がいながら、

子爵だの男爵だのの令嬢と「真実の愛」に目覚めたとか抜かし、

派手に婚約破棄をする輩がいるそうだ。


大体、家の格を抜かしたとしたもだ、

婚約者がありながら真実の愛とやらに目がめるのはありとしてもだ、

婚約者がいながら他の女に入れあげて、段取りすべてをすっ飛ばす男は愚かとしか言い様がないし、

なによら婚約者がいると知りつつも色目を使う尻軽女など、

高位貴族の妻になんぞ出来るはずもないのだ。

巷では、その手の小説が「悪役令嬢」として人気らしいが…これには言いたいことはあるが、口を噤む。


ただ、ローランドの場合、相手の家の格が落ちたとしても、

そのお相手が「相応しい」と判断されれば、父は全力で協力するだろう。

貴族の子女には、家の格は低いのにもかかわらず、とんでもない逸材が眠っている場合もある。

両親のいろんな意味を含んだプレッシャーをひしひしと感じているのだ。


ローランドの身分を持っていて婚約者がいまだに決まっていないとなれば、

そりゃどんな問題が起こっているのかは想像に難くないので、勝手に想像してほしい。

特に女側からの猛烈なアプローチを、想像してほしい。


もっとも決まっていないのには政治的な意味合いもある。

そんなこんなで、フランにとって災いの種が生まれたグリーンフィールド家の書斎で、

まだまだ、話は続く。



「ローランド、あなた結婚はどうするつもりなの」

「またその話ですか…」


うんざりとばかりに、紅茶をすする。


「心に留まった方はいないの?」

「いないですねぇ。みんな肉食獣ですよ」

「あなたねぇ、女性を獰猛な動物に例えるのは失礼よ」


と、いわれ、その獰猛な動物の親玉のような姉を見る。

好きな男に一直線に向かっていき、

まさに猪突猛進という言葉がはまるような体で、姉は男を押し倒したのだ。


堅物で女っ気もない若き宰相を「磨けば光る原石」などと抜かして、

アッという間に、押し倒して結婚までこぎつけたのだ。

その姉に失礼とか言われても、ピンとこないのは人というものだ。


「私がどなたか紹介しましょうか」

「いえ、結構です」


ローランドは即答した。

全力で即答した。


姉のお仲間なんぞ、冗談ではない。

しとやかで品良く、令嬢らしくたやおかな、姉のお友達はみんな肉食動物なのだ。

いらん、いらん、そんな獰猛な肉食獣など求めてはいないのだ。


「その失礼な思考は見逃してあげるわ」


あきらかに、何を想像していたのかを理解した姉が右眉をピクピクさせながらも、

反論したいのを我慢する。

姉の婚約者はこの獰猛な肉食獣を「崇拝」というカタチにしてコントロールしている強者なのだ。

さすがは、王太子の学友で、国王が若いながらも宰相にと望んだだけの堅物である。

 

「私の結婚は色々と複雑な事情が絡みますからね」

「そうね。政治的な意味合いでは選択肢が狭まるのは致し方ないわね」

「残念ですよ…レーリアが早死にしたことは」

「そうねぇ。あの子なら、政治的にも家柄的にも問題なかったのに…」


姉と弟がしみじみと思い出すのは、幼馴染みのレーリアでローランドの婚約者候補だった。

生まれながらにして病弱で6才を待たずに夭逝してしまったのだ。


「どちらにしても、私の場合は政治的にも中立で、王族に対しての発言力は皆無で、貴族院でも地位の高くない一般普通の貴族から選びたいですね」

「あなた、それ探すの大変よ」

「わかってますよ。だから、今から刺繍するんですよ」

「まったく話がかみ合ってないわよ、ローランド」


テーブルの上に並べられた茶器を自ら片付けると、ローランドはすでに刺繍の準備を始めている。


「デザインを忘れないうちにカタチにしたいんですよ。それに、そのハンカチの見事な刺繍をみたら、刺激されました」

「あら? あなたが他人の刺繍に興味を持つなんて珍しいわね」

「物語の一節を刺繍に刺すなど、私には思いつきませんでしたよ…発想が柔軟でおもしろい」


しばらく退屈しなさそうです。

という弟の言葉を聞いて「こりゃ当面は嫁取りは難しい」と思った姉である。


が、そのローランドの希望に添う嫁が、実はフランだったりするのだから、

世の中というのは、よく出来ているものである。

もっとも、フランはまったくあずかり知らないわけだが。





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