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ドアマットヒロイン? いえ、ドアはございません  作者: 六軒さくみ


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12/23

それは教育的指導

フランの頭の上で、怒涛の如く言葉が渦巻いているのだが、

当事者であるフランは、ゆったりと久しぶりにおいしい紅茶を堪能しているのだから、

随分と図太くいやたくましくなった。


喧噪激しい一の核で3年も生活していれば、慣れることはたくさんある。


本日、突如として玄関にあらわれたフランを見て、

一番最初に腰を抜かしたのは家令だった。

何事もなかったかのように、応接間のソファに座っているフランを見て、

次に腰を抜かしたのは父親だった。

母に至っては、泣きだす前に気絶した。

妹は喜ぶより先に驚いていたし、弟はこんな時にまで悪態をついている。


とにもかくにも突然戻ってきた長女に話を聞かなければと、

両親は家令だけをその場に残して、リリアンとアンリスタを部屋から追い出した。


そして、今までどこにいたのか、

何をしていたのか、

何より突然なぜに家出をしたのかと、

次から次と繰り出される質問にどう答えようか、

考えるものの何から話せばいいのか、言葉にできなかったフランは端的に


「一の核でお針子をしていました」と、告げた。


その言葉を聞いて、父の口から瞬間、魂が抜けるのが見えた気もしたが、錯覚だろう。


そんなこんなで、なぜか、夫婦喧嘩に発展し、

言葉が渦巻き状態なので、フランはとりあえず、お茶を飲むことにした。


以前なら、ここで仲裁役を買って出るフランだが、

この3年で余計なことをしないのが一番だと学んだので、

今は両親たちの言い合いに気にすることなく茶菓子を頬張り紅茶をすすっている。


両親たちの喧嘩の原因は弟のアンリスタのことだ。

フランはあの日、アンリスタと悪童たちに何を言われたのかから始まり、

学校でのアンリスタのひどさを率直に告げた。


今までなら「そこをなんとかしてちょうだい」と両親に言われたら、

「仕方ない」と自分ら言い聞かせて、半ば諦めつつもなんとかすべく奮闘しただろうが、

この時は「それはお父様とお母様の仕事ですよ? 私は姉であって親ではありません」と言い返した。

それを聞いた両親は言葉を詰まらせた後、フランを凝視して、夫婦喧嘩を始めたのである。



なんとも忙しい限りである。


気がつけばどっぷり日も暮れて、いったんお開きになった後、

疲労困憊な全員が食事もとらずにベッドに横たわって翌日を迎えた。

人間は睡眠をとると落ち着くので、

両親も前日とは比べ模様もないくらいに落ち着いて、フランの話に耳を傾けた。

家に戻るのが困難だと一人ぐるぐる思考で悩んでいたフランは拍子抜けしたくらいである。


けれど、人というのは悲しいかな、急に変わることなどできない生き物なので、

両親のフランがいなかった間の後悔などは長続きしなかった。


1週間もすると、「都合のいい長女フラン」が帰ってきたわけなので、

あっという間に3年前に逆戻りかと思われたが、ここからがフランの3年にわたる

一の核修行が花開くことになる。



さて、花開くちょっと前の出来事である。


フランはまず自分が家出した理由を、再度、両親に告げた。

今まで我慢に我慢を重ねたことで、限界であったことを。

ところが、両親はそれを聞くと

「なぜもっと早く、打ち明けなかったのだ」

「家を出る前に言えばよかったのに」とのたまった。


これには傍で聞いていた家令が、

「何を言ってんだこのアホ夫婦」という顔をしたものである。

それを聞いたフランの方は、首をかしげて考えると、

「聞く耳をお持ちじゃなかったのはあなたたちでよ」とかわいらしく告げた。

どんなにかわいらしくても、内容は「あんたら今更なにいってるんじゃ、こら」である。

さすがの両親も押し黙った。


結局のところ、両親は反省はしていないまでも、

今までフランが我慢したことだけは理解できたらしい。

理解できても実践できるかはまた別問題なので、それは後日の話になる。


さて、次に妹のリリアンである。

姉が帰ってきたことで、

お預けを喰らっていたデビューができると喜んだのもつかの間。

婿取りの話も姉にお願いしようと思っていたが、

その姉が「私はお針子で生きていきたいの」なんぞといっていると両親から聞かされた。


いやいや、ちょっと待てよの話である。


そんなことになれば、デビューは出来ても、

あのアンリスタが漏れなくついてくる上に、やりたくもない領主教育をされる。

冗談ではない。

すくなくとも、周囲の友人たちはデビューを終えて、

そろそろ婚約の話もきかれているのだ、

自分だけ置いてけぼりとか冗談ではない。


などと、反省したように見えたリリアンも結局は反省などはしていなかった。

はっきりと「嫌なことは嫌と言えばいいのに」と思っていたが、

はっきりと「嫌だ」といわれると、これはそれでとても対応に困ってしまった。

あねが途方もなく、変わってしまった気がする。



そして、事件いや、フランの一の核修行が花開いた合図は、

屋敷内にパーンと響いた小気味よい音だった。


その音は、一度ならず二度。

三度と響いたのだ。

何を隠そう、フランがアンリスタの頬を思い切り平手打ちした音である。


「ふざけんな、何様だ、お前」


アンリスタが頬を別の意味で真っ赤にして、姉につかみかかるも、

するりと躱され、逆に思い切り投げ飛ばされた。

平手打ちだけでも屈辱なのに、投げ飛ばされたのだ。


「何様って、お姉さまよ。アンリスタ。今後は、お前やバカ女などという口答えは許しません」


いつの間にやら、フランの手には箒が握られており、アンリスタが悪態をつくたびに、

箒でその尻や頭をはたく。

その隙のない動きに、家令もメイドたちも呆けたように見つめている。


そして、さすがにアンリスタが

「覚えてろよ、くそ女」と悪態をついてその場を逃げ出すに至り、

周囲のギャラリーが拍手する。


「あぁぁすっきりしたぁ…」

と、若干、いやかなり震えた声でつぶやく。

よく見れば、手も足も震えているが、

今までのフランを考えればよくできたと言わざる得ない。


そうフランはひとつ、実践したのだ。

教育的指導というものを。


すいません…話が間延びしてしまいました…。

次からはがらっと変わる予定です。

予定です…予定は未定…と申しますが、書きたいところまでは書きたい

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