無視系のボウゲン③
「いや~、やっぱり強いなァ、まさとしくんは!」
たける君は敗北してなお爽やかに、まさとし君の勝利を称える。
「君もとっても強かったよ、たける君!僕も今回ばっかりは負けちゃうかと思ったよ。
……またやろうね、バトル!」
まさとし君も驕ることなく爽やかに、たけるくんの強さを称える。
──ボウゲンバトルは、スポーツマンシップを重視する紳士のバトルホビーだ。
友情、努力、勝利。この三つの要素をモットーとする。
「おいコラこのボケカスがァ!
離さんかいこの下等公務員ッ!」
まさとし君とたける君が友情を深めているその後ろで、ボウゲン博士がパトカーに押し込まれ、ギャアギャアと罵詈雑言を吐いている。
「やかましい黙れこの三下がァっ!
通報があったんじゃい!ヤクザが子供に絡んでるってなァ!」
警察官も負けじと博士を罵倒する。
「まさとしィーッ!
…どうせまたすぐ出てくるからなァ!またウチに遊びに来いやぁッ!」
ドアが閉められる前に博士が大声を張り上げる。
「誘拐でも企んどんのかいこの不審者ァ!
キッチリ起訴しちゃるけェ、覚悟せェこのアホンダラがァ!」
警察官の怒鳴り声と共に、パトカーのドアが閉まり、サイレンを鳴らしながら走り去ってゆく。
暫く無言で見送るまさとし君とたける君。
「そういえばまさとし君、隣町の『ボウゲンジム所』は行った?」
気まずい空気を打破するかの如く、たける君が口を開く。
「なんだいそれ?初めて聞くなァ。」
まさとし君は首をかしげる。
「すっごい強いボウゲントレーナーが居るんだって。僕も友達と一緒に行ってみたけど、ジム所に入れてすら貰えないんだ。
でもアルチュウならいけるかもしれないよ!
……あとね、勝てば『バッジ』が貰えるって噂だよ!」
ボウゲンバトルのような、小学生男子に流行するホビー界には、時たま真偽不明の噂が飛び交う。
ボウゲンジム所──それは、腕に覚えのあるボウゲントレーナーたちが手合わせを通して互いのボウゲンに磨きをかける場であり、ボウゲンバトル界の頂点、ボウゲンリーグへの登竜門。
ジム所バッジは、その暴言のキレと圧力の証明。持っているだけでそのボウゲントレーナーは一目置かれる。
──そのように、小学生男子達の間でまことしやかにささやかれていた。
その『ジム所』が、隣町にあるという。
ボウゲントレーナーなら誰もが目指すその道へ、まさとしくんも足を踏み入れていくのだった。




