喧嘩腰罵倒会 二回戦⑤
「そこまでッ!トレーナーによる暴力行為により、りく選手、ここで失格です!
勝者、アルチュウ!」
ボウゲンファイターの声が響く。
ボウゲンバトル界の頂上決戦である喧嘩腰罵倒会にあるまじき、反則による失格。
しかし、会場からは割れんばかりの拍手が轟く。
「ええぞ!子分は親分のために命を張る。親分は子分を守って勝ちを捨てる。
それが男の生き様ってモンよ!」
「いや〜、メダル3枚スってしもうたが、ええモン見せてもろて気分がええわ。
次回もおどれに張ってやるけぇ、またええ勝負見せてくれや!」
トレーナーとボウゲンの熱い絆に感銘を受けた観客席のスジの者達は、惜しみない賞賛を反則負けしたりく君に送る。
突然の失格負けに呆然としているロジハラゴンをクーラーボックスに押し込んだ後、りく君はまさとし君の元へ駆け寄る。
「ゴメンね、まさとし君。……アルチュウ、大丈夫?」
息を吹き返し、床の上に腰を下ろしているアルチュウを心配そうに見つめながら、りく君はまさとし君に詫びる。
「うん、気にしないで。
……カッコよかったよ、ロジハラゴン。
りく君、君は本当に強かった。君といいバトルができて、光栄だよ。
また、バトルしようね。」
まさとし君は爽やかにりく君の健闘を讃え、右手を差し出す。
りく君はその手を取り、硬く握る。
「バトルの間は敵同士。しかし決着がつけば、勝者も敗者もなく、同じ道を目指す同志。
なんと美しいことでしょう!
ご来場の皆様ッ!今一度、ステージ上の両選手に、暖かい拍手をどうぞッ!!」
ボウゲンファイターの掛け声に、会場は再び割れんばかりの拍手に包まれる。
通りすがりの買い物客も、空気を読んで足を止め、盛大な拍手を送る。
鳴り止まない拍手の中、まさとし君とりく君は手を振り、観客の声援に応えていた。
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「あァ?おどりゃついさっき『よく見てませんでした』って認めとったやろがい!
それなら誠意見せろや誠意!頭床に付けんかいボケェ!
見さらせ、おどれの肩ぁぶつかって脱臼したんじゃぞワシは!
一生残る怪我ぁ負わして逃げるんかいコラァ!!」
致命の一撃に会場はどよめく。
「決まったァーッ!
しげはる選手のバイショックス、フィニッシュブローを決めてきましたッ!
のりゆき選手のイキリオラツキー、土下座の姿勢から起き上がれませんッ!」
「ふむ、これは被害者系の毎ターン連続攻撃、『ムービングゴールポスト』じゃのぉ。
……どんなに小さな非であっても、被害者系に対しては認めてしまってはいけないんじゃ。
それを起点に、どんどん要求を釣り上げていくからのォ。」
大盛況の中、大会は進行してゆく。
しげはる君は、順調に勝ち上がってゆく。
「さあ準決勝、まさとし選手のゴクツブシと、ゆうた選手のシネックスの大一番!
レディ、ファイト!!」
そしてまさとし君も、立ちはだかる強豪を下してゆく。
気がつけばもう準決勝だ。
「ほ〜ん?さっきから死ね死ね吠えとるだけで、なぁんのヒネりも芸もないのぉ。
そこらへんの野良犬の方がよっぽど弁が立つわい。
おどれのマスターさんが可哀想じゃ。こがぁ役立たずの介護させられてのぉ。
……ええかコラァ!マスターに申し訳ねぇ思うなら、指詰めて詫び入れんかい!!」
醜悪な豚の顔つきをさらに歪め、辺りにドス黒い霧を立ち昇らせながらシネックスを恫喝するゴクツブシ。
「決まったぁッ!まさとし選手のゴクツブシのパワハラだッ!
シネックスは自己批判から抜け出せないッ!」
「ふむ、これはパワハラ系のスキル、『人格否定』じゃのぉ。
立場マウントを取られた状態でこれをやられると、致命傷になりかねん。」
危なげなくシネックスを下したゴクツブシ。まさとし君は決勝戦に歩を進めた。
そしてほどなく、第二ブロックの準決勝も決着がつく。
決勝でのまさとし君の相手。
それはもちろん──しげはる君だ。




