狂気系のボウゲン⑥
「ったく、兄貴にはかなわんのぉ……。結局巻き上げられてしもうたわい。
……まあ、ええわ。久しぶりに楽しませてもろたけぇのぉ。
坊っちゃん、ええ勝負させてもろたわ。また遊びに来いや。」
草野組長は、鷹揚に笑いながら、まさとし君としげはる君に感謝を述べる。
そして、少年たちとの再戦を誓う。
「おーい、アレ持ってこい!」
草野組町が声をかけると、若頭のパンチパーマが部屋の奥から箱を持って駆けつける。
「誇ってええぞ、ガキども。
おどれら、本職の極道相手に、掛け合いでイワしちゃったんじゃけぇ。」
そう言うと、箱から草野ジム所のバッジ……というか代紋バッジを取り出し、まさとし君の襟元に取り付けてやる。
蛍光灯の光を反射したバッジは、誇らしげにキラキラと輝きを放つ。
そして、もう一つバッジを取り出すと、しげはる君の方に向き直る。
「えっ?……でも僕、草野リーダーには負けましたよ?」
困惑するしげはる君に、草野組長は上機嫌で言う。
「なぁに、極道がしみったれた事抜かしよったらお終いよ!
……坊ちゃん、おどれのボウゲンは本物じゃ。本職極道のワシが言うんじゃけぇ、自信もって受け取らんかい!」
「ありがとうございます、リーダー。……それじゃ、有り難く頂戴しますが、来週まで預かっててください。
やっぱり、イカレヴィシャスを倒してから貰いたいので。」
しげはる君の言葉に、草野組長は目を丸くすると、ガハハハと鷹揚に笑う。
「ええで、坊ちゃん!気に入ったわい!
ほな、相手してやるけぇ、何回でも来いや。
……聞いたかおどれら!これが本物の男っちゅう奴じゃ!ワレらも見習わんかい!」
そして、ジム所の若い衆に訓示を述べる。
「ウンウン、これがボウゲンバトルの醍醐味なんじゃけぇ。
……ウン?」
腕を組み、晴々した顔でバトルの余韻に浸っていたボウゲン博士が、異変に気づく。
ドルドルドルドル、ブゥーン!という音が聞こえる。
「族かいのぉ。しっかしヘッタクソなコールじゃのぉ。
まずはロッキーのテーマから100遍練習して……」
草野組長が言いかけたその時、ジム所の中に警官隊が雪崩れ込んできた。
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「コラァっ!離さんかいボケェっ!!
ワシらは近所の小学生と遊んでやっとっただけじゃろうがい!!」
床に組み伏せられ、関節技をかけられている草野組長が顔を真っ赤にしてがなり立てる。
「そうじゃそうじゃ!この子らはワシの孫と、その友達じゃい!
何もやましい事しとらんのに、ワレら一体どがぁ了見でカチ込んで来よったんじゃいボケェ!!」
後ろ手に手錠をかけられたボウゲン博士も、上に乗っかって体重をかけている警察官を怒鳴りつける。
「やかましいわいアホ!シラぁ切るんじゃねぇ!
賭博の現行犯じゃい!キッチリ起訴してやるけぇ、逃げられる思うんじゃねぇぞコラァ!」
警察官もまた、このヤクザ二人と同じような口調と剣幕で罵倒する。
「まさとしィ!しげはるゥ!
今度大会やっちゃるけぇのぉ!『喧嘩腰罵倒会』、開催決定じゃ!友達連れて参加せぇ!」
「……次は3店方式でやっちゃるけぇ、サツ対策も万全じゃ!安心して参加せぇ!」
屈強な警察官に囲まれ、事務所から連れ出されるヤクザ二人がまさとし君としげはる君に大声で告知する。
「馬鹿野郎コラ!警察舐めんじゃねぇッ!
ワレらの手になんで今手錠がかかっとるんか、今のワシの言葉で分からんのかいボケェ!!」
ボウゲン博士達をしょっ引いて警察官が外に出ると、蹴破られて歪に変形したドアがバタンと閉まる。
いつもの展開に、まさとし君としげはる君はしばらくジム所の中で立ち尽くす。
「……おじいちゃん達、また連れていかれちゃったね。」
「……ウン。」
一分ほどの沈黙ののち、まさとし君が口を開く。
「……ところで、『喧嘩腰罵倒会』だってね。出る?しげはる君?」
「もちろん!……それまでにはバッジ貰いにこなきゃだけど……草野リーダーと、おじいちゃん、出てこれるかなぁ?」
二人は無言で顔を見合わせたあと、肩をすくめる。
「……帰ろっか、アルチュウ。」
そして仲良く家路についていった。




