ひとの恋路を邪魔する奴は・・・2
頭を掻いている、持っている筆の柄で。
上役がこの部屋から出ていき、代わりに調書を取りに来た役人が、だ。
一行の向かいに座っている、役人が、フウと小さなため息を付いて、彼らを、睨むわけでもなく、かといって、友好的な眼差しのそれでなく。
ただ、煩わしいもの、面倒なものを見るそれであった。
もう一度、小さなため息をつくと。
机の上の書類に、文字を走らせ、走らせた文字を見ながら。
『で、おぬしたちは、その世界と言うところから、この世界に誘導されて、ある目的のため、この世界を書き記すため、やってきたと。』
一行の学生服が『そう』と肯定の返事をすると。
『その、少女の館と言うのが分からん』
と、冒頭の筆の柄で、あたまを掻くシーンの繰り返しとなる。
『この、近辺で、その様な、力のある領主、執政官、地主、地頭を含め、悪党や、無宿人に至るまで、心当たりは全くないのだ。』
傍にあった、資料をパラパラめくり、そして閉じ言った。
『まさか、隠密ではあるまいな?もしそうならば、生きてここを出す訳にはいかないのでな。』
と物騒な物言いになった。
『だから、出来ればそうで無い事を証明してくれないか。いくら役目とは言え、命のやり取りは、もううんざりだ、先のハルマゲドンで、いやと言うほど、生き死にを見てきたので。』
中央公儀から、秘密裏に各地方行政を探索する公儀隠密は、地方にとっては死活問題であり、総力を挙げて排除するものであった。
ハルマゲドンが終焉し、いよいよ復興に取りかかる矢先に、隠密となれば、追い打ちを受けるものだ。
しかも、ここの領主のお嬢様と呼ばれている者の、婚礼が近々あり、そのことに難癖をつけるとも限らない。
実際、この婚礼に伴い祝福の強制など、民を苦しめているだの、なんだのと、格好の標的だ。
暫く腕を組んで、考えている役人は、あくまでも穏便に済ませることが出来ればそれに越したことは無い、何かいい方法は無いかと。
考えあぐねている。
向かいに、相対して座っている。
学生服と、長い髪の紺のブレザーの本を持っている少女、白いセーラー服を着た少女に向かい、もう一日ここに留め置くことを伝えた。
埒が明かないので、明日、その取扱いを執政官経由で委ねようということになった。
とりあえずの処遇が決まり、その取り調べを受けていた、その部屋から移動しようとした、その時。
入れ違いで、違う役人が慌てて入って来て。
『領主のお嬢様が、是非話がしたいとの事。すぐにでも移送するようにと。その時は貴殿も一緒にとのお達しである。』
と、今まで、取り調べを担当していた、役人にそう伝言した。
それを、受け取った取り調べ担当の役人は天井を見上げ、頭を掻き、小さくためいきをついた。
それが彼の癖だと分かるほど、繰り返していた。
人外に、邑に領主の婚礼だの、隠密だの、取り調べを受けて、それでお嬢様ときた。もう何が何やらだ。どこへでも連れて行ってくれと。一行は半分投げやりになっていた。
短めですが、読んでいただいて、大変ありがとうございます。