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第7話 開腹手術

普通の大学生、伊織美鈴が、ラジオのお仕事に巻き込まれていきます(笑)

テレビに比べて極めて少人数で制作されているのがラジオ番組です。

その現場は数々の苦労にまみれていますが、それ以上に楽しさにも溢れています。

そんな雰囲気が伝わるといいなと、書き進めていきますのでよろしくお願いします!

毎週水曜日更新予定です。

「このクマさん、誰から送られてきたの?」

 美鈴の問いに、木村が首をかしげる。

「差出人、書いてないのよ」

「ますます怪しい!」

 カッターを手に、まるで手術中の外科医のようなポーズをキメている牧原が、肩越しに振り返って木村を見る。

「ほんでこれ、誰宛に来たん?」

「明日のゲストさん宛、だったと思う」

「どなたはん?」

「声優の山梨カナさん」

 山梨カナと言えば、今をときめく超人気女性声優だ。数々のアニメで主役やヒロインを演じ、歌を出せばベストテン入り間違いなし。番組宛にプレゼントが届いても、ちっともおかしくないだろう。

「でも、どうして事務所じゃなくてここに送ってきたのかな?」

 美鈴のその疑問には、牧原が答えた。

「山梨さんは大人気や。事務所には山程プレゼントが届くらしい。クリスマスとかはトラックでどーんて来るみたいやで」

 美鈴が目を丸くする。

「すごーい!」

「あまりに多くてぬいぐるみとかパッケージの開いてないお菓子とかは、幼稚園や色んな所に寄付してるとか聞いたなぁ」

「わー、いい人だ!」

「手作りのクッキーとかは、処理に困るみたいやけど」

 確かにそうだ。

 ファンの手作りには愛情だけでなく、何が混入しているか分かったものではない。そう考えた美鈴は、思わずブルっと震えた。

「つまりや。事務所に送っても、その中に紛れてまう。そやから、ゲストに出る番組に送ってきたんやろなぁ」

「なるほど〜、頭いいですね」

 思わず感心してしまう美鈴。

「感心してる場合やないでぇ。ほんなら、開腹手術を始める……伊織くん、俺の額の汗を拭いてくれ!」

 両手を挙げたまま、顔だけを美鈴に向ける牧原。

「了解です!……って、本当の手術じゃないんですから、さっさとぶった切ってください!」

「ぶった切るって、キミは腹を裂かれるクマさんが可愛そうや思わんのか?」

「今はそんなこと言ってる場合じゃないでしょ!」

「はいはい」

 そしてゆっくりとカッターの刃を、デスクに寝かせたクマの腹部に近づけていく。それが今まさに、布地を切り裂こうとしたその時一一

「ストーップ!」

 と、木村の大声が室内に大きく響いた。

 ビクッととして手を止める牧原。

「びっくりしたぁ! 木村ちゃん、いきなりなんやねん!?」

 怯えたような顔を牧原に向ける木村。

「だって、もし爆弾だったらどうするんですか!? どかーん!ってなったら、私も伊織ちゃんも怪我しちゃうかも!?」

「俺を心配したんやないのかーい!」

 木村の心配ももっともだ。

 放送業界では有名な事件が過去に起こっているからである。

 1993年夏、ラジオ局であるニッポン放送の深夜番組宛に、爆発物が送付される事件が2件発生した。声優の裕木奈江、歌手の加藤いづみ宛の封筒が届き、いずれからも爆竹や乾電池が仕込まれているのが発見されている。スタッフのチェックにより爆発には至らなかったものの、ラジオ業界を震撼させたのは間違いない。

 またその翌年、日本テレビ本社に女優の安達祐実宛の郵便物が届き、開封した安達の所属事務所の社員が、左手親指を失う重傷を負っている。封筒の中には、鉄パイプ、乾電池、ニクロム線、磁石などで作られた爆発装置が仕込まれていた。なおこの事件の犯人は特定されず、2009年に時効が成立している。

「ええい! その時はその時や!」

 牧原はそう叫ぶと、思い切りカッターをぬいぐるみに突き立てた。

 静寂に包まれる番組デスク室。

 黙々とクマの内部を探っていた牧原だが、何か黒くて小さな物体をその中からつまみ出した。

「これやな」

 牧原の手には、長さ5センチほどの長方形の何かがある。

 じっとそれを見つめる美鈴。

「それ、何ですか?」

 恐る恐る聞いた美鈴に、牧原がニヤリとして答えた。

「盗聴器や」

「ええーっ!?」

 美鈴と木村が、揃って大声を上げた。

クマさんの中から発見されたのは、なんと盗聴器でした!

しかし、過去の事件の話を聞いていると怖いですよね。

でもご安心を!

あの頃の事件もあって、現在のラジオ局では番組宛てのすべての郵便物を金属探知機でチェックしています。なので、私たちスタッフの手に届く前に、危険は取り除かれています。

警備の皆さん、ありがとうございます!

さて、ついに見つかった盗聴器ですが、この後どんな展開になるのでしょう?

あ、そうそう、今回のお話も私が体験した実話です!(笑)


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