表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

1-1

本編。


Q. ナディアは王国語を話せるようになりましたか?

A. カタコトなら話せるようになりました。王国民からはぶっきらぼうに聞こえます。

ここは王国の辺境の村。


乗り合い馬車を乗り継いだり、徒歩で馬車駅のある村から村へ歩いたりしているうちに、国境を越え、王国の村にたどり着いた。

旅人組合の身分証明書しか持っていない場合、国境で旅人組合の証明書が本物かどうか、証明書発行リストに名前が乗っているかなどを調べるために数日待つことになる、と聞いていた。証明書を発行したばかりであったり、帯剣したりしていれば不法者を疑われるため尚更長く待つことになる、とも。しかし国境では待つことなくそのまま素通りであった。きっと軍団長の言う便宜とはあのことだったのだろう、とナディアは思った。


この村は度々帝国から国境を越える者が来ることもあり、幸いにも小規模ながら2階建ての宿屋がある。

玄関先には老婆の店番がおり、ナディアが話しかけると愛想良く返答した。


「あの、」

「いらっしゃい。おひとりかい?」

「ああ」

「何泊だね」

「1部屋、1日、明日出発する」

「そうかい。向こうから来たんだね?」

「ああ」

「王国は初めてかい?」

「ああ」

「そうかい。王国はいいところだよ。私はもう歳だからあちこち行けないが、この国にはいいところがたくさんある。良かったら全部見てってくれ」

「楽しみに、している」

「身分証は持っているかい?」

「ああ」


ナディアが旅人組合の身分証を差し出すと、老婆は「うん、問題ないね。ゆっくり休んでおくれ」と、ナディアに声をかけながらそれを返した。

「2階の階段横の部屋が空いているよ。これは鍵だ」


ナディアは老婆から渡された鍵を受け取ると、部屋に向かうべく足を進める。

宿屋にはナディアの他に、傭兵らしき人が数人いて、宿屋併設の食事処で何やら話し込んでいた。


部屋は広くはないが、布団しかないような狭さというほど狭いわけではなく、一晩の宿としては十分すぎるくらいの部屋だ。

ここで一晩過ごし、夜が明けたらこの辺りで最も大きな街に行く。そろそろ何をして生計を立てるか考えなければならない。


10年近く軍団に所属していたため、今からどこかの店の店員やら机の前で雑務やらの仕事をするよりは、武力を生かした仕事を探す方が分があるだろう。

とはいえ、町の警備隊などは身元と信頼性が重要となるため、旅人組合の証明書だけでは入隊できない、というのが帝国の常識であった。王国でもそれは変わらないはずである。要人警護など以ての外だろう。となれば、王国の傭兵ギルドに所属するのが適当か。


傭兵ギルドは武力専門の組合である。100年以上前に王国が戦争の渦中にあった時に活躍していた傭兵団が、戦後団員が食いっぱぐれて賊に落ちることのないよう設立された、というのが成り立ちであり、由緒あるギルドである。

現在では商隊や旅行の一団の警護や警備隊のシフトの穴埋めから、賊の根城の調査までを請け負う。達成した依頼の数によって信頼度のランクが上がるシステムが特徴で、ランクが高い者は商会や貴人からスカウトが来る……こともあるらしい。

似たような組合に冒険者ギルドがあるが、冒険者とは名ばかりで雑用―――草刈りとか迷子犬の捜索とか―――が主で、依頼さえこなせば最低限の生活ができる仕事斡旋所の様態となっている。


ナディアは手持ちの金を数える。今までの給料と退職金名目の路銀のおかげでまだ2週間は過ごせる。

路銀が尽きるまでにギルドに登録して、生計立てられるくらいまでにはランク上げないとな、と考え、ナディアは夕飯を摂ろうと部屋を出る。すると、外が少々騒がしいことに気づいた。


食事処にいた傭兵達が馬鹿騒ぎしてもここまで騒がしくなるまい、とナディアは思う。異様な雰囲気を感じ、部屋に返して愛用の剣を持って外に出た。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ