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柴犬とプライマルな住民

「んぎゃああああ!?・・・!!?・・・ゴバッ!!」


俺、柴犬。


俺を害そうとするニンゲンがどんな結末になるか?


喉笛を噛んで終わりだ。


牙の攻撃は一撃必殺。


重要な血管をズタズタに引き裂いて失血死させる。


騎士の決闘や街中の喧嘩とは違う、純粋な殺害を目的とした行動だ。



「はああぁぁっ!!」

「やあぁっ!」


前衛の少年2人が果敢に巨躯の盗賊達を攻撃して牽制している。


「チッ!クソ犬にクソガキが!!」

「調子に乗りやがって!!ぶっっっ殺してやる!!」

「アタマ捻じ切ってオモチャにしてやるぜ!!」


とても雑魚とは思えない勇ましい台詞だが、それはあくまでも格下の少年達に限定して発揮された気勢だ。


だがそれも囲み込んだ優勢の時のみの効果。


柴犬たる俺が不意打ちで一番小賢しい奴を殺してかき乱したせいで奴らの急襲プランは水泡に帰していた。


「今だ!!」


どうやら2人の少女は魔法使いらしく、詠唱の時間を前の2人が稼いでいた様だ。


「風よ!水よ!森の氣に集いて禍なる者を討ち倒せ!『エメラルド・バースト』!」


「月の女神ルーナ・マーナの名の下に!戦士の勇気を月光で明らかにせよ!『ウルティマ・ノクティ』!!」


水と風の精霊がエルフの如き美しい神速の剣士を象り、魔力の奔流で盗賊達がバラバラ死体になるまで斬り伏せられるのは一瞬だった。


月の力で勢いを増した前衛2人は最も強い盗賊のリーダーをボコボコにした。


倒れ伏した盗賊に剣士の少年が声をかける。


「大人しく捕まる気はあるか?」


「ペッ!!いけ好かないクソガキが!死ね!」


盗賊がブーツに隠したナイフを取り出して襲いかかる。


「残念だ。」


盾を持った少年がナイフを弾き飛ばすと、剣士の少年が首を刎ねた。


〜〜〜〜〜


「ワフッ!ワフッ!」


俺は今、盗賊が隠し持っていたジャーキーをくちゃくちゃと噛んでご満悦。


少年達は悪くない連携だ。


このパーティならよっぽどの事が無ければ大丈夫なはずだ。


さっきは不意打ちをされたから、次から注意するだろう。


「ステファニーの噛みつきのおかげで助かったぜ!」

「ビーンズの軽やかなステップを見たか!?あの参謀ぽい盗賊、目ん玉ひん剥いて死んだな!」

「ちょっと!不意打ち受けて危なかったのは2人が騒いでたせいなんだからね!?そ、れ、と!この子の名前はケルベロスなんだから!」

「いいえ、名前はアブラアゲにしましょう。かつての勇者のペットと同じ名前です!それが良い!」


おいおい、勘弁してくれ。


俺はお前たちのパーティに入る気はないぜ?


それよりも、魔法だぞ魔法。


こりゃわざわざ噛み付いたりしなくても良いんじゃないか?


俺の快適な柴犬ライフの為に、どこかで魔法の練習でもしてみよう。


少女2人の魔法を間近で見たし、転生した柴犬なら『柴犬魔法』を使えるかもしれない。


知らんけど。



俺はジャーキーを咥えて、4人の帰り支度を見届けると新たな街に向けて歩き始めた。


「あっ!どこ行くんだよ!」

「まぁ、そのうち戻ってくるだろ?」

「あの子は野良犬ですよ?」

「今回の助太刀は偶然とは思えませんが、、、いずれ神々が我らを引き寄せるでしょう。」


後にこの4人が活躍を続け柴犬と出会うのはしばらく先の事。


〜〜〜〜〜


冒険者ギルドへ帰還した4人は盗賊の首を持ち込んで高額の報酬を受け取り、華々しいデビューを飾った。


「??どうした?ずいぶんと騒がしいじゃないか?誰か高難度依頼でも消化したか?」


情報屋がニマニマと笑う。


「へへへ・・・どうやらあの新人、ちゃんと仕事を片付けたようです。報酬も頂けましたしね?」


「何?」


目の怖い姉ちゃんことフラウは情報屋の一言でジョッキに伸ばした手を一瞬止めた。


すぐにエールを飲み干し、続きを促す。


「こないだここにいた野良犬が大活躍して討伐したとか。そんでその後、犬は何処かに消えたそうです。」


「ふーん。あの『お利口さん』ね。。。もしかしたら、人間の言葉を理解する神獣の幼体が化けていたのかもしれないわ。あの件の意図を見抜いて怖がっていた。裏で汚いマネをしてるのを分かったのかも。」


フラウは残念そうだった。


冷徹に見えて動物を可愛いとは思っていた。


仕事では私情は挟まないが。


「へへへ!まさかぁ!でもまぁ、不思議な事なんて山ほどありますからね。」


「『お利口さん』を見かけたら教えてくれ。」


「それくらいならいつでも。で?捕らえた犬共は使えたんで?」


「いや、ダメだったわ。森に放った瞬間に一目散に街に逃げていってね。計画を見直さざるを得なくなったのよ。」


「そりゃあ残念です。」


野良犬達は柴犬に救われ、知らぬ間にこの街の野良犬達の陰の英雄として讃えられるのであった。

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