柴犬と金欠小僧達
「参ったな。立て続けに新入りだぜ?」
「見ろよあいつ。喧嘩もまともにした事無さそうな顔しやがって。」
「ほっとけ。普通の仕事が出来なくて仕方なくここに来るやつが大半だろ?どうせまた死ぬ。バカなやつは死ぬ。場慣れしてねぇ奴も死ぬ。」
「お前はバカだけどまだ生きてるよな!ガハハ!新入りは大抵身の丈に合わねぇ依頼を受けてやっすい武器を買って、服はお洒落で防具は何も無しときたもんだぜ。」
「そうだな、って、あ?今誰がバカだっつった?」
「おめーだおめー」
「あ゛?なんだとハゲコラ!そもそもてめぇは防具もクソもいつも半裸じゃねぇか!」
「仕方ねーだろ革鎧着ると蒸れんだからよ。血ぃついたらシャツが汚れんだろ!」
「おいおい、、、やめろ」
ヒゲオヤジと筋肉ハゲのしょうもない喧嘩が始まった。
半裸冒険者が存在出来る理由としては、この世界に蚊がいないからだ。
その代わりに人間を捕食する存在が山ほどいるらしく、危険は盛り沢山だ。
「・・・・」
目の怖い姉ちゃんはゴクッ、ゴクッとエールを煽り、ジョッキをテーブルに置きながら彼らを見つめ、黙ったままだ。
冒険者ギルドにやってきた少年少女達はアホみたいに雑然とした嫌味を聞いていないようだった。
「ここが冒険者ギルドか!」
「早く依頼を受けてみたい。」
「焦らないで、先ずは近場の依頼を消化して実績を重ねたら?」
「とりあえず登録して。話はそれから。」
良くも悪くも新人って感じだ。
あどけない顔立ちに、低い背丈。
男子2人に女子2人の仲良し4人パーティ。
未だ成人してないんだろうか。
心配そうな受付嬢をよそにはしゃいでいる。
俺は後ろ脚で首を掻きながら、今晩のメニューを考えていた。
ジャーキーにしようか?それとも黒パンのかけらか。
「依頼はどれ?」
「うーん、『野うさぎの駆除』『ネズミの駆除』『墓荒らし(野良犬)の捕獲』『草刈り(鎌は貸します)』『建設現場の人工出し』etc...」
「・・・なんか思ってたのと違うな。」
彼らは武器より先に常識を身に付けた方が良さそうだ。
「へへへ、お兄さん達、お困りの様ですなぁ??」
「あなたは?」
フードを深く被った小男がテーブルの端から近づいて、コソコソと少年達に告げた。
犬は耳が良い。
ヒソヒソ話は透き通るように聞こえる。
(・・・へへっ!場所は伝えました。もしもその場所で奴らを見つけたら、成功報酬をくだせぇ!)
(良いぞ!!皆もそれで良いよな?)
(え?う、うん。リーダーがそれで良いなら。)
彼らは嬉しそうにギルドを出ていった。
彼らは口約束を間に受けた上で全員で合意なんかしてしまったんだな。
怖い怖い。