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柴犬と潜入捜査官

「よ〜しよしよし!それ!!」

「ワォンッ!ワンワン!!」


転がるボールを追いかけて遊ぶ足の短い犬。


柴犬が仄暗い過去を持つ女、蛇楼教の幹部第三位・ヴァイパーの飼い犬?として過ごし始めて2週間が経った。


ここは少し寒さが強くなってきた王国の温暖地域に位置するバルチスタ領。


以前、ヴァイパーが襲撃を起こした街の、日本でいうところの東側といえば良いのだろうか?


オレンジベレンと呼ばれる街だ。


その街にある借家から魔道具屋に通い、ロベルタという偽名で働いていた。


この星は太陽が毎日登る方向が入れ替わるし、月は3つあるし色が違うので異世界の方角の概念が俺には分からない。


現在の彼女は、変装の魔道具で緑の髪と紅い瞳の色を茶色に変えている。


王国指名手配になってから第二位補佐のメンデスがヴァイパーに用意したものだ。


違法な上に高額で探知されにくい特別製だ。


権力者に怨みがある職人が丁寧に作った一級品だという。


「ここらへんにボールがあるかなぁ?」

「ワフッ!!」


茂みの奥に転がっていったボールを探すフリをして俺はサクサクとヴァイパーが通れるくらいの穴を掘り進める。


虹色ムカデの力で掘った土は何故か異空間へ消えていくので不思議だ。


「よーしよしよし!モコ、その調子よ!」


ここは襲撃する際にヴァイパーが使用する着替え、装備、武器等を隠す場所。


「この地で空を惑わせるがいい--『同化(フェキレイデム)』」


偽りの景色が現れた。


この様に場所を見えなくする魔法を彼女は使える。


ある程度掘ると別の経路に脱出路を掘ってそこも隠す。


こうして日々幾つかの隠し場所を設けているのには理由があった。


「次の襲撃は上手くこなして、また同じ場所に潜伏したいの。襲撃の度に毎回居場所を変えていたら冬が越えられなくなってしまうわ。この季節にずっと誰にも関わらず見つからずに生きていくって、すっごく難しいんだから。これまでは短期の仕事ばっかりやってたけど、ソードパレス領から王都まではもう積雪が凄いらしくてね。このバルチスタ領もすぐ雪が降る。それまでに・・・仕留める。」


「ワフッ!」


週末のボール遊びという名の工作活動を終えるとフリータイムだ。


「あんまり遠くに行っちゃダメだからね?」


「ワォンッ!!」


俺は俺で柴犬としての犬序列第一位としての活動があるのだ。


トテトテと歩くと裏路地に佇む大きな犬が横になっていた。


「よぉ豆っ毛の。また来たんか。」

「あぁ、元気かい?」

「元気も元気。いつも通りだ。」


このマスティフはオレンジベレンを良く知る老犬だ。


他の犬も彼には敬意を払う。


「俺達以外に住み着いた新顔はいるかい?」


「あぁ新しく来た奴がいたな。なんていうんだっけな、『臭くなさ過ぎるやつ』だろ?あまり臭いがしないのが逆に気になってな。覚えておいたのさ。」


この異世界で毎日風呂を沸かして入ったりするのは困難を極める。


だが魔法使いや一部の上級騎士、貴族なんかは違う。


こんな片田舎の街に『臭くなさ過ぎるやつ』がいたら犬からすれば怪し過ぎるのだ。


「どこにいる?」「青果店のすぐ側にある宿屋だ。」「ありがと!お土産を後で持ってくる!」


俺は青果店まで走ると臭いを判別する。


最近は嗅覚が発達して臭いを視覚化する事すら可能になった。


おまけに聴覚も鋭くなって声を聞き分ける事も容易だ。


「こないだ襲撃した場所の近くにまだ居るのか?レディ・ヴァイパー(毒蛇の淑女)が。」


(この宿屋は掃除が行き届いている。おかげで音が良く響く。)


柴犬はしめしめと思いながら潜伏している間者の会話を盗み聞く。


「あくまでただの勘だがな。(太陽)教会を刺激したくない上の意向で捜査はするが、予算は無限じゃないんだ。お前の実家の身辺が落ち着くまでの間、この冬はここにいてもらう。対象を発見出来なければ、来春からは再び戻れるように調整する。」


「どうだかな。俺はこのまま没落かもしれん。」


「そう言うなアルトル。お前の親父さんは、、、何も悪い事はしていない。予算の一部を孤児院に当てただけだ。」


「それを『横領』と喚き立てた貴族は教会から金をもらって『黒狩り』と称して利敵貴族を潰してるんだ。孤児院の子供達に『黒』がいると虚偽の密告をしてな。」


「さぁな。いずれは太陽教会もなんとかしないといけないが。」


「何も出来んさ。ヴァランダール様は高潔だが謀略には無縁だ。闘い意外は片手落ちだしな。他の騎士団も、、、ネイルが辞めたと聞いた時からおかしかったのさ。今は全てが灰色に見える。」


(お、ネイルの知り合いか!悪いやつでは無さそうだけど。)


「そろそろ俺は行く。お前がここにいる事は教会も知らない。何かあってもはぐらかせる。お前は情報さえ集めれば良い。無茶はするな。」


「しないさ。これ以上、親父に心労はかけられん。」


(この街は広くない。ヴァイパーとアルトルが出会うのも時間の問題だな。太陽教会、、、怪し過ぎるな。これは忙しくなりそうだ。)


柴犬は帰り際にネズミを捕らえてマスティフに渡すと、ヴァイパーの居る借家へと戻った。

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