柴犬とダンジョン
「ゴシャァアア!!」「ブモォッ!!ブモォッ!!」「シュロロロロ!!」「キョェェエエ!!!」
「・・・ワフ?」
突然意味不明な光に包まれたかと思ったら、洞窟に飛ばされ、怪獣大戦争に巻き込まれた柴犬。
あのギガントが持っていた石は魔石ではなかった様だ。
光り物を集めるギガントは時折そういった珍妙なモノを拾うが、魔力を持たない為ただの綺麗な石だと思っていたようだ。
俺も浅ましく齧り付かなければ良かったぜ・・・
「ガルルルルッッ!!!」
俺も勇ましい柴犬だ。
これまでに修行した魔法を貴様ら相手に実験してやる。
トロル、ミノタウルス、ランドバケトカゲ、メガハゲワシの猛攻撃を掻い潜り、短足で軽やかなステップを踏む。
「ファイアー・ガウ!!!」
赤く燃え盛る顎が現れ、ハゲワシに齧り付いた。
「キョエ・・・!?」
「「「!!??」」」
火炎の牙で身体をグサリと貫かれながら黒焦げになるメガハゲワシ。
汚ねぇ焼き鳥いっちょ上がりだ。
「ブグモゥゥゥ!!」「ゴシャェエエ!!」「シュロロロロ!!」
魔物達はさっきまで互いに争っていた癖に俺が一撃でメガハゲワシを倒したのを見て急に協力し始めた。
いたいけな柴犬に対して何てやつらだ。
「ファイアー・ポウ3連!!」
柴犬の前に浮かび上がる巨大な灼熱。
魔物3体の目前に激しく爆ぜる肉球が放たれて迫ったが、急には止まれない。
ドカッ!!!
「「「ギャァァァァァ!!??」」」
ブスブスと燃え上がり、煙を上げる魔物達。
「ゴ・・・シャァ・・・!」
トロルだけは何とか立ち上がり、俺に玉砕のタックルを仕掛けてきた。
「ラッシュ・ポウ!!!」
これまで取り込んできた魔石、化け熊、シュレッダー、クロムヘッドのパワーが込められた柴犬の引っ掻きは鋼すら断ち切る。
一瞬でデスサイズ形状の漆黒の三本爪が柴犬の前脚から現れて振るわれる。
頭が転げ落ちたトロルはそのままの勢いで倒れた。
あとは魔石ウマウマタイムである。
食べると力が漲る感じがする。
トロルは皮が固かった。
中々の防御力ではあるが俺の敵ではない。
トロルの肉はイベリコ豚、ミノタウルスは高級な牛肉、メガハゲワシは焼き鳥、ランドバケトカゲはササミみたいな味だ。
焼いて食べると魔物が寄ってきたが俺があちこちにマーキングしたせいか踏み込めない。
柴犬は強大な力を持ってると分かってくれたようだ。
嗅覚が鋭くなり、20キロ先の出来事も朧げながら臭いで探る事も出来る。
ランドバケトカゲの魔石の影響で無性に泳ぎたくなった俺は洞窟にある地底湖で潜水したりして魚もゲット。
なんと俺の牙は毒も注入出来る事が分かった。
トカゲとクロムヘッドの影響だろうか?
やたらデカい淡水魚(軽自動車サイズ)を仕留めて美味しく頂きました。
メガハゲワシの胃液や溶解液は何でも消化してしまう。
全部食べても腹を壊す事は無かった。
〜〜〜〜〜
洞窟をトテトテと1時間ほど歩く。
道中色々な魔物が現れたが大した相手ではなかった。
ガルルと威嚇すれば飛び退いたり固まって動かない魔物もいる。
(クンクン。血の臭いがする。人間が怪我しているようだ。)
俺が血の臭いを嗅ぎつけると、同じく他の魔物も集まり始めた。
「ギチチチチチチ!!」「チューチュイッ!!チュー!!」「ゼンインコロシテヤル!!」「ヒュォォオオ!!」
虹色ムカデ、ジャイアントモール、オーク・カリギュラー、シルバースカルナイトの大混戦だ。
「グォオオォ!!!ムシ!ネズミ!ホネ!ゼンブコロス!!」
豪奢な宝石や貴金属を身に纏ったオークが大剣を振り回して、数メートルはある虹色ムカデをバラバラにする。
ジャイアントモールも袈裟斬りにされ、シルバースカルナイトとオーク・カリギュラーの一騎討ちとなった。
「ヒュォォオオ!!」
シルバースカルナイトの黒い息吹がオーク・カリギュラーの右腕を腐り落とすが、左手で持ち替えた剣で銀色の頭蓋骨を叩き割られた。
「グォォァアアア!!オレサマノショウリ!!オレコソガシコウ!!サイキョウダァァ!!」
オークは勝鬨を上げると鼻を鳴らして血の臭いの在りかを探し始めた。
「ニオウ、、、ニオウゾ、、、シンセンナチノニオイ、、、ワカイ、、、ニンゲンノオンナ、、、オレノ、、、オレノモノダ、、、オカシテ、コワシテ、ユックリバラバラニシテヤル、、、、、ソノマエニ、、、」
オーク・カリギュラーは大剣を振り回しながら隠れている柴犬に突撃してきた。
「コソコソシヤガッテ!!チイサイヤツ!!フミツブシテヤル!!」
巨体が繰り出すストンプ。
柴犬はこの時を待っていたのだ。
「ヴェノム・ガウ!!」
紫色の顎がオーク・カリギュラーの脚に齧り付き、貫いた牙から致命毒を注入される。
クロムヘッドとランドバケトカゲの毒を喰らえば通常であれば緩慢な死を待つだけである。
「ウグゥァァァァ!!??」
「ラッシュ・ポウ!!」
突然小さな柴犬に反撃され、咄嗟に剣で攻撃を受けたが、そのまま毒による麻痺で転倒し起き上がる事も出来なくなった。
「オレサマハ、、、オマエヲ、、、コロシテ、、、、クッテヤル、、、、」
普通の魔物なら喋る事すら困難な毒にオークカリギュラーは抵抗していた。
だが相手はこの俺、柴犬である。
(はいはい、そのまま動かないでねー?魔石摘出するから。)
グジャグジャグジャグジャ!
「ヤ、、ヤメッ!!??・・・!!!」
「ワフッ!ガブッ!!」
生きたままのオークカリギュラーの心臓を喰らうと魔石と一緒に凄まじいパワーが溢れてくる。
新しい魔法は異空間にモノを詰め込める魔法だ!
ついにきた!『アイテムボックス』!
試しにこのオークが持ってたピカピカの装飾品類を仕舞い込む。
「クゥーン・・・」
魔力がごっそり減って身体がダルくなってかなりキツい回数制限がある。
一日一回が限界かも。
なんと殺したオークが持っていた所持品も引き継いだ様なので後で出してみよう。
虹色ムカデの魔石の力は壁をスイスイ登れるし穴掘りもサクサク進められるようになったし、地中にある宝石の在りかが分かるようになった。
(さて、あらかた魔石も齧ったし、救援に向かいますか。)
虹色ムカデの力でショートカットして行くと若い女性が傷だらけでへたり込んでいた。
こうして蛇楼教徒の女と柴犬は出会ったのである。




