柴犬とフロウラ
「ひぇ〜!!なんで騎士がここに!?」
少女の父親は玄関で腰を抜かした。
「ソードパレス領主から与えられた我が権限によりお前を英雄街から追放する。罪状は王国民を私欲の為に虐げた事。逆心あればこの場で斬って捨てる。」
以前ギルド前に来ていた令嬢の護衛をやっている女騎士が衛兵を引き連れ、火口売りの少女の父親に沙汰を言い渡していた。
「お前が娘にやった所業、見させてもらった。何度か広場の英雄像で火口を買わせてもらったが、その金で彼女に何も食べさせてやらなかったのか??父親なのに、、良くも平気な顔をしていられる!」
女騎士は話していて我慢が限界に到達しそうになり、男の胸ぐらを掴んでいた。
「ぐぇえッ!?」
「フーッ、、、殺してやらないだけ優しいと思え。このクズが!さっさと消え失せろ!家財道具を持ち出す事まかりならん!2時間以内に英雄街を出なければ衛兵が斬る。さぁ行け!」
蹴り飛ばされた男が慌てて家に戻ろうとするが、喉に剣を突きつけられる。
「クソッ、、、、、」
〜〜〜〜〜〜
ダイズを眺めに冒険者ギルドを通りがかったソードパレス領主の令嬢とその護衛騎士は、良く広場で見かける火口売りの少女が暴行で死にかけているとその場で通報を受けた。
少女の身体はいくつもの虐待の跡があり、事態を重く見た護衛騎士は交代の護衛要員に令嬢を任せ、その権力でもって衛兵と共に法を執行したのだ。
「まさかダイズ君があの子を救出したとは、まだ何も知らない子供が殺されるところでした。」
「えぇ、ソードパレスの、しかも私達の目と鼻の先で悪逆非道は許しませんわ。」
「・・・このところ、ネイル殿が騎士爵を取り上げられてから、巡回していた地域で治安が悪化しています。あの噂は本当だったのでしょうか。。。」
「一部貴族騎士が悪処を使ってソードパレス領の権益を冒しているという話でしょう?」
護衛騎士が令嬢と話しているのは騎士団内の不正の事だ。
「騎士は暴練や末振だけ出来れば良いとだけ思っていたのですが、なかなかそうはいきませんね。」
「大丈夫です。貴女はよくやってくれていますから。これからもよろしくお願いします。」
「は。」
そんな重い話に繋がるとは知らない柴犬は、火口売りの少女ことフロウラと冒険者ギルド周りだけの軽い散歩ルートを歩いていた。
大量の犬達と共に。
「良いかお前ら、フロウラを守れ!フロウラの為に働け!フロウラの為に遊べ!分かったか?」
「「「ワォン!!!」」」
「ワンちゃんがいっぱいわたしとダイズについてきてる!」
フロウラはちゃんと栄養を取ったら元気になった。
「ガッハッハッハ!!遊べ遊べ!たまには良いだろうが!」
「ほんと、どうなるかと思ったぜ。」
「食い物の心配ならしなくて良い。どうせ俺たちは食い切れないくらい狩りをするから。」
酒飲み3人組はギルドでは飲まなくなった。
彼女の父親がやっていた事を聞いてフロウラの前で酩酊するのは謹んでいるのだ。
俺の率いる犬軍団は『フロウラ親衛隊』だ。
今や最強の柴犬である俺は野良犬を調教するなんてお手のもの。
俺が何かやっているというのはギルドも把握しているが、犬達は基本的に俺かフロウラの言う事しか聞かない。
犬達は勝手に小型のホーンラビットや雉を仕留めるので食い扶持に関しては心配が要らない。
3人組はフロウラの後見人になるようだ。
もともと稼いでいた3人からすれば子供1人養うなど平気な様だ。
受付嬢も甲斐性が出てきたと喜んでいる。
〜〜〜〜〜
「「「ワンワンワンワン!!」」」
「ナイスだよ!犬軍団!」
エルフの放った矢がヒュウッと熊の脇腹に吸い込まれて貫通する。
「グゥォェアアア!!??」
驚いて少し離れた場所まで走るが、力を失って倒れる熊。
「おぉぉぉ!!!」
山道を歩けるようになるまで回復したフロウラと親衛隊の犬達を連れて狩りをしに来た。
3人組が猪、鹿、熊を解体する様子を見守るフロウラ。
「弓矢ってすごいね?あんなデッカい熊を一撃で倒すんだもん。」
「俺の腕が良いのさ。」
「言ってろ。」
「肉を焼くのに関しては、任せろ。」
ガリガリだったフロウラは少しずつ本来の在るべき身体付きに戻りつつあった。
肉を頬張る3人組を見てフロウラが決意する。
「わたしも、なれるかな?冒険者。」
「なれるさ。」
「大丈夫大丈夫。」
「俺たちにドンとまかせとけ!」
「「「ワンワォン!!ワンワン!」」」
そんな様子を見守る柴犬。
頑張れよフロウラ。
美味いもんいっぱい食って、俺みたいにぐーたら出来ると更に良いぞ?
柴犬は未だ知らない。
救われたフロウラもまた多くの人々を救うという事を。




