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柴犬と火口売りの少女

シャカシャカと赤い落ち葉を踏み締めて走る柴犬と他の犬達。


この異世界にも秋がやってきた。


落ち葉の山に勢いをつけて突っ込むと、何故か楽しい。


「ウォゥウ!!!!」

「楽しい!!」

「ハッ!ハッ!ハッ!」


犬達は互いに臭いを嗅いだり、じゃれたり、枯れ落ちた枝を引っ張って遊ぶ。


あちこちから斧を振るう音がする。


パカンパカンと小気味良い音が森に響く。


切り出し工場で薪割りに勤しむ男達。


駄馬が荷車に乗せられた薪や柱材を運んでいく。


英雄街に限らず秋口は薪割りの季節。


今の時期は動物もなりを潜め始め、あちこちで年の瀬の準備に忙しくなる。


一部、ミノタウルスやギガント等の魔物が雪山を徘徊したり人里近くまで現れるが、冒険者が出張って倒す事も少ない。


冬山は魔物が凍死したりするのが当たり前で、たとえ人里に降りてきても瀕死なんて事もある。


縄張り争いに負けたり越冬に失敗した魔物は春頃に動物や人間達の糧になる。


てなわけで俺のような暇を持て余した犬達は何をするかというと、先程の様に落ち葉に突っ込んだり、冒険者と一緒に鹿や猪を追い詰めたり、農地に近寄る害獣を追い払ったり、夜中に寂しい独り者の家で暖を取ったりするのだ。


しかし、この厳しい季節を乗り越える為に築かれた人間社会の恩恵にあぶれる者もいるのだ。



「みなさん、火口は要りませんか?ひと握り銅貨1枚で、、、お願いします。。。。買ってください、お願いします。」


薄汚れた服と頭巾を被った痩せぎすの少女が、木屑や乾燥したキノコ、松ぼっくりに似た何かを売り歩いていた。


この異世界にマッチは売っていない。

昔ながらの火打石を使うし、魔法使いは火魔法を使えるからその類が不用だ。


だが薪にいきなり火は付かないからこうした細かく砕かれ乾燥した端材には一定の需要がある。


俺は少女を見つめる。


売り上げを持って帰っていく様だ。


なんだかオドオドして様子がおかしい。


少女から恐怖の感情を嗅ぎ取った俺は後をつける。


少女の家の中から怒号が聴こえてきたかと思ったらドアが開け放たれ、酒臭い男が髪の毛を掴んで少女を道に放り出した。


「ウィーッ!!ヒック!クソガキャ!!これっぽっちの銅貨で養って貰おうだと!もっぺん火口を売ってくるまで帰ってくるんじゃねぇ!!」


「ぅぅ・・・・・」


顔がボコボコに腫れ、あちこち青痣を作った少女はとぼとぼと歩き始めた。


ゆっくりとした歩みに柴犬はついていく。



少女は再び火口を売ろうとしたが、英雄街の広場には辿り着けなかった。


空腹と疲労で眩暈が酷いようだ。


少女は火口売りの最中も何回か空腹で座っている最中に気絶していた。


だがそれも最後だ。


少女は倒れて起き上がらない。


死神はすぐそこまで迫っていた。


「クゥーン」


「・・・・お母さん・・・」


柴犬は思う。


このまま彼女を死なせてやる方が楽なんだろうか?

それとも、苦しくても足掻くのが幸福なのか?


だが少なくとも分かる。


一回美味いもの腹一杯食ってから死ね!


食ってみれば分かる!


「ワフッ!」


俺はヒョイッと少女を咥えると冒険者ギルドまで全速力で走った。


〜〜〜〜〜


「ダイズ、そりゃ火口売りのガキじゃねぇか?」

「おい、起きろ!どうした!?なんなんだこの顔?誰にやられた!?」

「剣士!お湯もってこい!エルフ!鹿でも猪でも魔物でも良い!なんか食い物持ってこい!」

「落ち着けドワーフ。こういう時はまず身体を暖めてやって麦粥を少しずつ食わせると決まってるのさ。」


冒険者ギルドは餓死寸前の少女にてんやわんやだった。


特にドワーフはキレていてハンマーを取り出して、少女の父親を探し出して何をしでかすか分からなかった。


「放せよ!」「落ち着け!」「落ち着いていられるか!!」「分かったから座れ!!」


さて、これからどうなるやら。


とりあえず俺は寝るぜ。


俺は少女を暖めるという仕事を一晩中続けた。


消えかけた暖炉に薪を足したり、火が消えかけたらブレスで着火した。


ドワーフ、お前もいびきかいてないで手伝ってくれよ、、、

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