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柴犬とネイル

「トリトンペトラム火山付近にクロムヘッドが出現した。」

「頭の大きさが馬背3つ分。真偽が問題だな。」

「ファイアドレイクと見間違えたか、、、」

「いやいや、商人の話じゃファイアドレイクを喰ったらしいぞ!」

「「「それはないない」」」


胡散臭い博打の予想みたいな話ぶりだが、情報が集まり切らなければこんな会話になりがちな冒険者ギルドだ。


規模がデカい依頼は準備にも時間と手間が掛かる。


俺を世話した3人組はその次に実入りが良さそうな『ジョーリザード討伐』依頼書を取った。


「嫌なんだが、そろそろちゃんとした依頼やらないとな。仕方ない、、、」

「せっせと木盾作って良かったな。」

「俺も盾使わなきゃいけないんか?アイツらとやり合うとなんでもボロボロにしやがるからな。」


3人組はギルドを出て行った。


今回はクロムヘッド狙いの冒険者についていくか?


どうする?


ふとギルドの端を見るとテーブルでエールを飲む一団が居た。


明らかに他の冒険者とは違う雰囲気を漂わせている。


ロン毛無精髭の偉丈夫が一団のリーダーなのだろうか、イラついた顔で掲示板を睨め付けると冒険者達が少し緊張した面持ちになる。


「クロムヘッドか。並の冒険者にゃあ荷が勝ち過ぎだ。」

「あれを冒険者が殺れんなら『軍』なんざ要らんな。」

「黙れ!バルトロ、俺らはもうソードパレスとは関係ねぇ、反吐が出る!」


ゴンッ!とジョッキをテーブルに叩き付ける男。


「クソが・・・ムカつくぜ、帰るぞ。」

「帰るぞ、ったって、宿代稼ぎに来たんでしょう?」

「うるせぇ、、、1人にしろ、、、」


肩を怒らせながら歩く偉丈夫はギルドを出ると当て所もなく歩き始めた。


俺は彼の後を付けてみる事にした。



「チッ・・・・クソどもが。。。」


なんかやさぐれてるな。


「おい、、、コソコソ尾けてくんじゃねぇ。用が無ぇなら、、、、殺すぞ。」


鉄塊の様な殺意をぶつけられた。


多分、今の間合いくらいなら一瞬で踏み込まれるだろう。


こりゃあ強そうだ。


「ワン!!」


偉丈夫は肩透かしを食らったように呆気にとられた。


「???あぁ??いぬぅ??ギルドにいたやつか?だがさっきは・・・まぁいい。。。」


既に敵意は無く、彼は近付くと俺をヒョイと抱え上げて正面から観察する。


「ふーむ。。。犬だな。」


正確には柴犬だな。


「さっきは『魔人』みてーな気配がしたんだが、あんな姑息な連中でも流石におめーみてーな仔犬を尖兵にするわきゃねぇか。やれやれ。」


「ワフ?」


魔人がなんだか知らないが、誰かれ構わず吠えたり噛み付く駄犬と一緒にしないでくれ。


はぁ、とため息をついた偉丈夫は柴犬の俺に自己紹介してきた。


「俺はネイル。ただのネイルだ。。。おめーは、、、ダイズ??って呼ばれてんだっけか?結構有名だよなおめー。先輩冒険者って訳か。よろしくな、ダイズ先輩!」


「ワフッ!」


こそばゆいから後ろ脚で首を掻きたいが、降ろしてくれない。


「おっと、すまねぇな。」


地面に着地した柴犬。


「なぁ、ダイズ先輩よ?俺ぁまだやりてぇ事があんだ。冒険者なんかやってる場合じゃねぇんだわ。自分が強いと勘違いした冒険者どもをぶちのめしたり、魔物を狩るのも、チンケな賊をぶっ殺して粋がるのもちげぇんだ。」


なんか深い事語り出したな、こいつ。


めんどくさっ!!!


「退屈か?まぁ聞いてくれよ。人には言いたくねぇんだ。俺が求めてんのはな、圧倒的な強さだよ。強くなって、この国に仇なす敵の首を獲って、文句言ってくる奴を黙らせる。そんで居場所を守る。どうだ?」


なんて不器用でプライドの高いやつなんだ。


素直に『助けて』が言えないタイプか。


「クロムヘッドくらい、簡単にぶっ殺した方が良いだろう?そうでもなきゃ生きてたって意味がねぇ。」


極端な奴だな。


柴犬の俺を見てみろ。


生きてたって意味はないかも知れないが全力で柴犬ライフ楽しんでる。


少しは人間ライフ楽しめよ。


人間ライフ一抜けした俺が言うのもなんだが。


「・・・もう一度騎士になるのさ。俺を嵌めた奴らに、強さと恐ろしさを見せ付けてやる。」


うん、やっぱ人間ライフは利用し利用される関係性しか無いからクソだ。


いや?犬ライフも本来なら主従関係厳しいな。


やっぱり柴犬無頼スタイルこそ至高。


衣食住保証無し!義務無し!制約無し!現金無し!パスポート無し!健康保険無し!


怪我と弁当自分持ち!


これぞ真の自由!


いつ死ぬか分からんけど!


「明日・・・クロムヘッドを殺る。ついてくるか?」


「ワン!!」


俺は哀れな無精髭ネイルを応援しにクロムヘッド討伐に向かう事が決まった。

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