速報1
ボタンを押す。ガコン、と音を立てて自動販売機からコーヒーが出てくる。
カショ、とタブを引き、その冷たい苦みをぐぐっと喉に流す。もっぱら自分で淹れる派だが、たまには缶コーヒーも悪くない。
「あ、先輩」
「ん」
財布を手に後輩が寄ってきた。私は一歩避け、自販機の前を空ける。
後輩は会釈して、ミルクティーのボタンを押した。
そうだ、給湯室で話した件を聞いて見ようか。おそらく彼女もあのニュース記事を見ただろうから。
「この前話していたことなんだけど」
「はい」
それだけで何の話かわかったのか、彼女はその表情に陰を落とした。
「あの日○△新聞の記事、見てみたよ。なんだか見られているみたいだね」
「・・・」
あまり反応がよろしくない。やはり自分のことを書かれて、少々気味が悪く感じたのだろうか。
「嫌なら答えなくてもいいんだけど、君はどう思っている?」
「・・・会社にたくさん盗聴器が仕掛けてあるのかなあって」
「私もそう思う。偶然にしてはできすぎている」
「あのときは大したことないと思っていたから言ったんですけど、なんだか大事になっている気がして、人に相談しにくくて・・・」
「盗聴器か何かが見つかれば証拠になるんだけど、うーん。調べるのも気が引けるし、勝手に警察を呼ぶわけにもいかないし、困ったね」
「はい・・・」
「他の誰かにこのことを言った?私は同期には話してみたけど」
「誰にも言っていません。気のせいだって言われるのが怖くて」
「そうだよねえ・・・」
会話に進展がないまま、後輩は一礼して事務所に戻った。
あの子のためにも何かしてあげたいけど、見えるところにカメラや盗聴器があるわけでもなし。本格的に調べるなら探偵に依頼しなければいけない。
どうしたものか。
変わりのないコーヒーの香りが、訪れない変化を示しているようで、私はため息をついた。




