社内情報1
「お疲れでーす」
給湯室にいると、後輩がやってきた。
同じようにマグカップを持っているから、この子もコーヒーを淹れに来たのだろう。
「お疲れ様」
私は淹れ終わると、マドラーを持って一歩避ける。
「ありがとうございます」
彼女は会釈してポットの前に立つ。ポットが唸りを上げる。
あれ、水少なくなっていたかな。
「水足りる?」
「1回分くらいはあるので、これ終わったら新しく入れますね」
「ありがとう」
彼女はてきぱきと、自分の分を淹れて水を入れ替え始めた。
「そういえば先輩、昨日のニュース見ました?」
「えっ」
私が反応すると、彼女は一瞬振り向くが、すぐに何事もなく向き直る。
「実は気になるニュースを見ちゃって、内心穏やかじゃないんですよ」
「・・・気になるニュースとは?」
アレのことじゃありませんように、と思うと同時に、誰かとアレの話をしたい、と思う気持ちも沸く。
自分の心が身構えるのがわかる。
「里見先輩のことが書いてあったんです」
きた。
それ以上でもそれ以下でもないように、心で受け止める。
「ニュースで?里見さんのことが?」
この子はどこまでわかっているのだろう。昨日初めて見たのだろうか。
「先輩のこと、って言っても、本人かどうかはわからないんです。ただ昨日の先輩の行動とそっくりだったので、そうなのかなあって」
「へえ・・・珍しいこともあるもんだ」
「まさかどこかから見られているのかなあ、なんて」
「・・・」
穏やかじゃないな。
実はそれ、前からなんだ、とは言えない。下手に彼女を刺激しても良くない。
「会社に監視カメラのようなものもないし・・・偶然じゃないかな」
「ですよねぇ、私もそう思います。びっくりしちゃいました。先輩も良かったら昨日の○△新聞のニュース、見てみてください」
「わかった、今夜見てみるね」
「ありがとうございます」
よほど心配だったのだろうか、彼女の表情がちょっと和らぐ。
そのままコーヒー片手に出て行った。
私は2杯目のコーヒーを淹れる。
後輩のセットしてくれたポットで。




