やがて私は“彼”になる
決められた運命。プログラムされた世界。
それを、あなたは信じますか――?
いつからだろう、いつからだ。もうそれを思い出すことはできない。
この世界は、いや、少なくとも自分の周りは、“決められた通り”に進んでいる。
毎日夜、就寝前、私はニュースをチェックする。
今日どんなことが起きたのか。私の知らないところでどんなことが話題になっているのか。それを見ることは自分と世界を切り離して考える素になるし、明日の話題の種にもなる。
実際そんな出来事などなかったかのように毎日は淡々と過ぎてしまうのだが、それでも自分と関係のないどこかの世界の何かを、知っていたい。それは心の平穏にもなる。遠い世界の出来事だからこそ、冷静に捉えられるということがある。
ところが、そこにときどき“異物”が混ざる。
これはどこの世界だろう、と開いたニュースが、まさに自分のいる世界だったとき。
いや、自分のいる世界のことを異物というのはおかしいが。
遠い世界のことを報じていたニュースが、急に自分の隣に来る。それはまさしく“混ざったもの”に見えた。
これは異物だ。
何事もなかったかのように見ていた隣の席の子が話題になっている。
ニュースに名前は出ていないが、その行動、特徴、今日見た彼女に間違いない。
いや、同じような他の人だろうか。
いや、いや、いや。私は動悸を抑えようとする。
よく見ろ。どこか違う情報があるはずだ。
これが彼女じゃないという証拠が。どこかに。
ない。
しかし、彼女の動作を見ていたとき、記者がいただろうか?
ここに書いてある○△新聞。
報道陣が入るなどとは聞いていない。周りにいたのは、よく知った人ばかりだ。
そうら見ろ、このニュースはどこか別の場所の話だ。
そう思って過ごしている。実は、毎日。
毎日近くの出来事と同じことを報じるニュースがある。
今日の時間は、彼女の動きから4時間後くらい。
徐々に、その報道までの時間は短くなっている。




