ドラーニャはもてなしたい
いつもの通りドラーニャは兄に尋ねた。
「この『四阿で食事をする』の四阿とは何でしょう」
「ふむ、阿とはおもねる事、四は四方で誰にでも、とすれば八方美人に類する言葉だろうか」
「八方美人で食事ではよく分かりませんわ」
「いや、そうではなくてね……太鼓持ちと言う職業が有るのを知っているかい」
「名前を聞いた事はある程度ですが」
ドラーニャは眉を八の字にしつつ、正直に答えた。
「うん、お座敷や食事処に呼ばれ、芸をして人を楽しくさせる職業だよ」
「いわゆる宴会芸と言う奴ですわね」
「そうだね、となれば私の言いたい事は分かるだろう、妹よ」
ドランの問いかけにドラーニャは口角を上げて頷く。
兄も博識であるが、妹も知識欲は高く決して引けを取らないのだ。
「阿るように見せても人を楽しませる、つまり楽しい状態で食事をするよう饗す事を『四阿で食事をする』と表現するのですわ」
「うん、流石ドラーニャ、我が妹だ」
いずれ自分も主賓として四阿で食事をするよう饗したいとドラーニャは思った。
留学先で四阿で食事を取ろうと誘われたドラーニャは、
特に代わり映えのない食事に肩透かしを食らった気分になったが、
こうして外で気兼ねなく楽しく食事をするのも学生らしく良いものだと思い直した。
※四阿の阿は棟の意味らしいです。
ちなみに四阿と言うと、何故か全体が白で円柱と丸い屋根、数メートル四方の狭い感じが思い浮かびました。