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本能寺から来た男 外伝

アメリカ太平洋軍の苦悩の決断

作者: 一色強兵

「本能寺から来た男」の外伝です。

昭和十八年(一九四三年)十一月、チェスター・ニミッツはアメリカ合衆国保護領ハワイ共和国のホノルル市にあるアメリカ太平洋艦隊司令部のオフィスで、共和国政府幹部との会議に臨んでいた。

米布互恵条約によって、アメリカはハワイ共和国に軍事基地を設け、真珠湾の軍港化を認められているのである。

ニミッツは、太平洋艦隊司令長官として、前任のキンメル大将の後任として赴任したばかりであり、今日は先日表敬訪問した共和国政府からの答礼訪問を受けるという非常に儀礼的な会合となるはずだった。


アメリカはハワイを、自国領にしようと、長いこと画策していた。

最初にその発案がなされたのは、メキシコとの最初の戦争が終結し、カリフォルニア州を属州として加え、そして南北戦争勃発前となる一八五二年、つまりペリーが浦賀にやってくる前年にまで遡る。

が、この議会に提出された法案は、多数派の支持を得られず、長いこと足踏みをさせられることになる。

何故か。

要するにハワイ諸島の先住民をアメリカ人と認めたくない勢力がアメリカに多かったからである。

イギリス人のクック船長によって西欧に発見されてしまったハワイは、統一国家も無い、幾人かの族長に率いられた文字も持たない部族社会で、その先住民は人種としてはタヒチあたりから渡ってきたミクロネシア系と見られていた。

そしてイギリス人との接触の中で先住民の中に英傑が現れ、彼によってハワイに初めての王朝が誕生する。これがカメハメハ王朝だ。

が、この王朝誕生の過程で、クック船長は先住民に殺されてしまう。

距離的にも、場所が大洋のど真ん中ということもあり、ハワイへの英仏の干渉は、限定的なものにならざるをえなかった。

そして賢明なハワイ王も英仏とのつながりを維持し、国を発展させていったのである。

英仏がハワイに対し、一定の距離を置いた関係を保っている間に割って入ったのがアメリカ合衆国だった。

先ほど紹介した通り、最初の併合案が米国議会に提示された一八五二年ということになる。

この一八五二年という時期は実に興味深い。

南北戦争前であり、つまり奴隷解放宣言前に、有色人種のハワイを併合しようとした、ということになるからだ。だから否決されたのである。

王国というれっきとした政体があり、しかもそれが非白人の国だと分かっていて、それでもなお、アメリカに併合しようとした勢力がいたのである。

要するにアメリカ合衆国とハワイの関係というのは、現実のハワイとの交流が本格的になる前に、合衆国の将来的戦略展望によって牽引されたのである。

合衆国に西海岸という太平洋への入り口が開いたことが、ハワイに注目させることになったのだ。

ハワイ併合案は議会の賛同を得られなかったが、それでも以後、ハワイとの結びつきはどんどん強化されていった。

そこまでして、ハワイに近づいた理由は、太平洋をアメリカの内海にするというのがアメリカの国家戦略だったからだ。

その海洋戦略の上で、ハワイは欠くことのできない駒だったのである。

アメリカはハワイとの間で、一八七五年に米布互恵条約を結ぶことにより、ハワイにおける基地機能確保を成功させた。

因みにロシアからのアラスカ購入や、ミッドウェー諸島の統治開始もほぼ同じ時期に行われており、明らかに一つの戦略でこれらが行われたことが読み取れる。

とにかくハワイとの交流を深めた目的の第一が太平洋艦隊の基地の確保にあったとすれば、第二の目的は、ハワイの米国化である。

早い話が、ハワイをアメリカ人の国にしてしまえ、ということだ。

つまり議会に併合案を否決した根拠は、ミクロネシア系はアメリカ人とは認めがたいということにあり、白人のハワイなら容認できる、ということの裏返しである。

そしてこれと言った産業の無かったハワイへの投資と開発援助は、大規模プランテーションという農業、つまり多数の労働力を必要とする産業をハワイに根付かせることになる。

ハワイ王国にとっても国家の財政を潤す産業の発展に反対する理由はない。

大規模な移民を受け入れる必要があると言われれば、簡単に頷くしかなかった。

そこに目をつけ、アメリカはハワイ王国の欽定憲法を書き換えさせることに成功する。

これにより白人の土地所有と、白人をハワイ王国の要職につけることが可能になった。

こうしてハワイにおける白人人口が急激に増えることになったのだが、この白人急増を見て、さすがに王党派も危機感を覚えたのである。

ハワイ王家の取った行動は、日本に援助を求めることだった。

一八八一年(明治一四年)、ハワイ王が来日し、明治天皇に移民を求めたのである。

つまり増えた白人とバランスを取るために日本人を入れるという王党派の苦肉の策だった。

このハワイ王家の困った時に日本を頼るという姿勢はその後も幾度か繰り返され、日米間の感情的対立を深めていく遠因になる。

とにかくハワイにはその後多くの日本人が渡ることになり、ハワイ王国は、白人、ミクロネシア系、日系が数の上で並び立つ国へと変わることになったのである。

そしてこの日系と白人がハワイで並立したことが、日本での反米感情、アメリカでの排日の一因になったのである。

一八九三年に白人グループが女王を追放しハワイ王国はクーデターによって倒される。

そしてハワイ王国の代わりに誕生したのが現ハワイ共和国である。

実はこの時すぐ、アメリカはハワイ共和国のアメリカ併合を行った。

が、ちょうどクーデターの時に、日系人が巻き込まれるという事件も発生し、そのために日本海軍もハワイに寄港する一方、日本政府からアメリカ大統領に対し、クーデターが不当で、共和国は認められないし、併合も認められないと抗議するという事態になった。

日本政府がこの時、これほど強硬な姿勢を取ったのは、日系人の数が無視できないほど多かったからだ。

一九〇〇年の国勢調査によれば、ハワイの総人口は一五万四千人であり、そのうち、原住民のミクロネシア系が約三万七千人、白人が二万九千人に対し、日系人は六万一千人もいたのである。

つまり住民の構成から言えば、過半数に迫る勢いで日系人が増えていたのである。

この最多の人種が日系人という状態はこのまま定着する。

アメリカからすれば、大した資源も無い絶海の孤島にわざわざ本土から資本をつぎ込み、大軍を置く基地を整備し、経済を回して、ゆくゆくは自国領にしようとしていたのに、いつの間にか、人口最多が日系人になった、というのは表面上は人種無関係でアメリカ人と認めるにしても、本音の部分では大誤算に違いなかった。

そうは言っても、アメリカはこの時期、フィリピン、グアムの領有をスペインと争っていた(米西戦争)ということもあり、大統領は日本の抗議を受け入れた。

その結果、ハワイ共和国には女王を復権をさせるように求め、アメリカへのハワイ併合の方は白紙撤回したのである。

が、アメリカ傀儡のハワイ共和国はこのアメリカ大統領の要請を内政干渉だと無視し、結局王政の復活はなされず、なし崩し的に、欧米諸国が承認する形で、ハワイ共和国が正式に残ったのである。

なので結果から言うと、アメリカの傀儡とも言えるハワイ共和国とはなったものの、国際法上正式な形ではハワイをアメリカ領にはできなかった。

が、アメリカの戦略上、それで困ることは何も無かったのである。

なお米西戦争の結果、アメリカはグアム、フィリピンを自国の勢力範囲に加えたことで、フィリピンからハワイへの移民も急拡大することになる。

これはつまり、日系人がこれ以上増えるのは避けたいものの、安い労働力そのものはまだまだ増やしたいというのがアメリカの本音だったことを表している。

住民の多数は日系人ほかの非白人というこの事実は、後にルーズベルトが彼の戦略シナリオをまとめる際、万一日本に攻撃されても白人住民の被害の及びにくい米国領リストに名を刻ませることにつながった。


アメリカの国策として見れば、このような領土権益の拡大は、確固たる国家戦略として連綿と続いていた時期にあたり、その次のステップ、パナマをコロンビアから無理矢理独立させ運河建設を強行、へ受け継がれることになる。

一方、日本もまた、朝鮮半島を足がかりとし、後の満州国建国につながる戦略の根幹をなすことになる日露戦争を同じ時期に戦っており、いわば、イギリスに学んだ愛弟子二国が世界的には同じようなことをやっていた、ということになる。


余談だが、赤坂宮が幕府を開き、最初に行った国家戦略研究で、このハワイに対するアメリカ合衆国の関与の歴史は、米墨戦争と並んで、アメリカ合衆国の意思決定と行動選択を如実に示した好例として深く幕府スタッフに認識されることになった。

すなわち、一度明確に記述などで確認された約束は、思いのほか律儀に守るものの、約定されなかったこと、約定として記載が無く口約束のような曖昧なもの、などに対しては、その戦略に合致する限り徹底的に自国利益を優先し、無視する国であるということ。

さらに、戦略目標は滅多なことでは動かさないということも加えられる。


これらのことは、アメリカという国の成り立ちと本質に深く結びついていた。

アメリカの権力の根源は、大統領とも議会とも憲法とも言えないところにあったのである。

いわば民主主義だからこそ生まれる多数決によった資本の形作った意思である。

それが、議会や大統領ほかの要人を説得できないとなれば、彼等が反論できない状況を作ることに全力を挙げるのである。

その最たるものが、手段を選ばずやれることは全部やった感じのハワイなのである。

そして、自国の国際社会における正統性の担保においてもアメリカは抜かりのない国だった。

つまり国際社会にアピールできる、都合のいい証人を確保すべく周到な根回しを行うのである。

テキサス共和国とハワイ共和国、パナマの分離独立、フィリピン、グアムの割譲などは、それらに対する西欧列強のタイムリーな承認無くしては、成就できなかった。

これを知った赤坂宮は、このアメリカのやり方を第二次米墨戦争における幕引き計画を立案する上で、大いに参考、いやありていに言えばパクったのである。

そういう意味で赤坂宮から見れば、ハワイの近世史は米国打倒への道筋を明確に示してくれた好材料だったのだ。


とにかく、アメリカはハワイを併合はできなかったものの、ハワイ共和国、グアム、フィリピンを勢力圏に加え、それらをアジアに繋がる生命線として手に入れることはできた。

ところが、この生命線には明確な弱点があった。

つまりグアムとフィリピンを結ぶ補給線のちょうど中間地点に、目障りな大規模海軍基地があったのである。それが日本が第一次世界大戦でドイツから委任統治を引き継ぐことになったパラオ諸島である。

日本海軍はこのパラオを一大泊地として整備していたのである。

中国で日本軍が暴れている時、蒋介石支援ルートでもあった、この補給線上にあるパラオの日本軍を牽制することは、ハワイ太平洋艦隊の最大の任務であった。

フィリピンのマッカーサー率いるアメリカ陸軍とともに、太平洋に展開するアメリカ軍の戦略目標は、誰に指図をされなくても、自動的に日本軍になっていたのである。


一方、ハワイ共和国の内政では、日系人と白人の間の対立は深まっていった。

要するに日本人は貧乏であってもプライドは高いし、いろいろなけじめをはっきりつけたがる傾向があり、もう一方のアメリカ本土からやってきた白人は、最初から金儲けを狙って、農場経営にやってきた人々が中心であり、何も無くても有色人種を自分たちの格下の存在に扱いたがる連中だったのである。

おそらく最初は小さな感情的な対立だったのだろうが、日本人学校の設立などの動きが起こる度に反発する白人、さらにそれに反応した日本政府のハワイ共和国に対する干渉、日本海軍駆逐艦の邦人保護目的での寄港、日系人のストライキの勃発など、社会の不安定化の一要素に日系人が挙げられることが多くなっていった。

排日や黄禍論が大きな勢力になっていくキッカケを作ったのもハワイだったのである。

アメリカのルーズベルト政権が日本の行動をことあるごとに非難し、ハワイ、フィリッピンへのアメリカ軍、当然、軍人は全員白人である、の増強が続いていた時期、必然的にハワイの日系人社会も息を潜めるしかなくなっていた。


中国から突如として日本軍から一斉に撤退してしまうという一大椿事が勃発しても、この状況は大して変わらなかった。

そして日本がドイツとの軍事同盟を結ぶとルーズベルトの日本は侵略者というイメージ付けが功を奏し、ハワイ米国化は公論として揺るぎないものになっていった。

ところがである。

ルーズベルトが対日政策を硬化させていく中、なんと日本がその肝心の三国同盟からの離脱を表明したのだ。しかもその離脱理由が、ドイツがレニングラードで行っている民族浄化策は容認できないから、と来たものだ。

人種差別に徹底して抵抗する日本の姿は、日系人、ミクロネシア系人の自信を回復させることにつながり、間違っているのは米国であり、共和国の米国属州化は到底受け入れられないという勢力を助長することになったのである。

そしてこの空気を後押しするニュースが続いた。

日本がオーストラリアの開発に乗り出すこと、そしてその日本側の代表がゲオルギー・ジューコフというロシア人という白人だったというニュースだ。

このニュースが強い影響を与えたのは、日系人ミクロネシア系人ではなく、白人だった。

白人の対日本人観、対日系人警戒感が薄らいだのである。

結局国際情勢にまつわるニュースでハワイの世論は大海に漂う小舟のように振り回され、共和国の国論は一向に定まらなくなった。

そんな中で、今度は突然の米墨戦争の再燃である。

メキシコがアメリカ国境を侵犯した、という報道で、一瞬人種的対立が高まったのだが、アメリカ陸軍が連戦連勝で、メキシコシティ陥落も近い、という報道がなされると、すぐ沈静化した。

さすがにいろいろと振り回されすぎて、ハワイのこととは関係無いじゃないか、という冷静さが共和国全体に広まったからだ。但し、軍人はそこに含まれてはいない。

ハワイのアメリカ軍の軍人は、当然ながら母国の戦争に緊張度を高めていた。

近々、メキシコシティ攻略にハワイの部隊も動員されるのではないか、という噂が流れたからだ。

そしてその緊張をさらに煽ったのが、カリフォルニア湾入り口で空母ワスプ、戦艦アリゾナの撃沈というまさかのニュースである。ハワイ基地とも馴染みの深かった巨大艦の喪失は軍人に深刻な精神的なダメージを与えたのだ。

しかもメキシコ人は有色人種であり、白人主体の海軍がそれにやられたことは間違いないのだから。

しかし、一方でその事はハワイ駐留部隊のメキシコ派遣中止につながって、軍人の間にホッとした空気が流れた。

ハワイの一般住民にとってはそれこそ遠い外国の出来事である。

さらに軍事的劣勢なのはアメリカ軍という認識が世論で認められるにつれ、住民のアメリカ軍に対する畏敬的なものが薄れていくことになった。

もちろんハワイ駐留軍属の気勢もそがれ、共和国内での米国属州化へのモメンタムは大きく失われることになった。

そんな弱まったモメンタムに文字通りトドメを刺したのが、カリフォルニアの失陥とブラックアメリカ合衆国の誕生、そしてアメリカ合衆国の敗戦という形での第二次米墨戦争の終結である。

この、連鎖的に発生した誰も予想だにしなかった事態を白人とアメリカ軍人が冷静に受け止めるには、かなりの時間を要した。

すなわち、カリフォルニアの海軍基地を失ったこと、西海岸の艦隊は、シアトルへと撤退したこと、そして南部十二州がブラックアメリカという外国になったことだ。

キング暫定大統領の独立宣言に盛り込まれた、アメリカ合衆国は人種差別を行い世界を欺いている、というメッセージは、ミクロネシア系原住民と日系人を大いに元気付け、白人を冷たい目で見ることにつながった。


さすがにハワイの白人社会は沈黙せざるをえなかった。

ハワイの属州化など語る方が夢物語になった。


繰り返すがハワイのアメリカへの帰属は、共和国となってからもずっと課題であり続けた。

ハワイ共和国は条約によってアメリカ合衆国に軍事的に保護されているとはいえ、れっきとした外国である。アメリカは、その状態をそのまま維持するつもりは全く無かったのである。

ハワイ経済が完全にアメリカ経済に組み込まれていたからである。

ハワイの生産物をアメリカが買い取り、ハワイの必要なものをアメリカが供給する。そしてその生産を行うための投資はアメリカ資本が行い、そこで働く労働者は日系人とミクロネシア系、これがこの時のハワイの姿だった。

この状態で、ハワイ州となるのに大きな障害だったのが、日系人とその日系人の存在を理由にした日本の政府と軍の介入だったのである。日本の目が邪魔だった。

ハワイの恒久基地化を望む軍とルーズベルトの意思は、ここでも一致していたのである。

が、ブラックアメリカの誕生は、全ての戦略の大前提が崩壊したことを意味し、ハワイ基地の維持すら、そもそも可能かどうかも怪しいという状況になってしまったのだ。

第二次米墨戦争は終結したが、太平洋におけるアメリカ軍の拠点はそのまま日本に備えた大軍を残したまま、放置される状態が続いていた。


太平洋に点在するアメリカ合衆国の軍事的拠点、すなわち、北からアラスカ、アリューシャン、ハワイ、グアム、フィリッピンは、いずれもアメリカ本国からの補給無しでは維持不可能な拠点ばかりだ。

その補給の大元であるカリフォルニアがブラックアメリカ合衆国になった、ということは、駐留部隊の行動力を大幅に失わせることとなったのである。


そんなところにキンメル大将の後任として派遣されたのが、ニミッツだった。

シアトルからホノルルに到着したニミッツは、すぐに前任者キンメルに面会を求めた。

が、それは叶わなかった。他ならぬキンメルが面会を拒んだからである。

実は、合衆国の敗北宣言を聞いて、誰よりも大きく打ちのめされていたのがキンメルだったのである。そして、その状態があまりにひどいので、急遽、任期なかばながら、司令官の交替が行われることになったのだ。

退任にあたり、キンメルは、引き継げることは僕からは何も無い、すべて副官に聞いてくれ、とだけ言い残し、シアトルに向かう船に乗った、とニミッツは副官から聞かされただけだった。

キンメルが何故敗北宣言で精神的に深く打ちのめされていたのか、それはニミッツにも容易に想像ができた。キンメルは一言で言えば、ルーズベルトファミリーの一の子分、のような存在だったのである。ルーズベルトの覇権が確立されたから、破格の出世を遂げ、キンメルも要職につけた、そういう関係だった。

そしてルーズベルト腹心の部下であるキンメルは、ルーズベルトの戦略を誰よりも詳しく理解していた。だからブラックアメリカの誕生が何を意味しているのかも、誰よりも深く理解できたのである。

副官の言によれば、帰国するキンメルの姿は、まるで幽霊のようだったそうである。


共和国の代表がやがて司令部に到着し、ニミッツにとって初めての実務的な会談が始まった。

「で、ニミッツ司令官、就任早々、こんな話を申し上げるのは、なんですが、実は我々は非常に困難な状況にありまして……」

という言葉で始まったハワイ共和国の現状は、文字通り緊急事態そのものだった。

要するに、水と食料、石油不足の危機が迫っていたのである。

元々火山島であるハワイには、地下に一種の蒸留装置があるからか、天然の湧き水は豊富だ。とはいえ、それは島民が生活を営む上で、という条件付きの話であり、ハワイを基地にして駐留している艦船や航空隊の将兵、さらにはグアム、フィリピン、アリューシャン列島などの部隊に回せるほど豊富というわけではない。つまりそういった部分は、本土から運び込んだものに頼っている。

食料も同じでアメリカ人の食事に無くてはならない、牛乳やバターなどの酪製品、たまご、肉、小麦粉などほとんどすべて本土からの補給品だ。

そして石油も同じだ。ハワイのどこにも油田などはない。

それらの補給がものすごく細い糸になってしまった状態、というのが今のハワイなのである。

そして、同じ話は副官からも聞いていた。

が、それに続く話は初耳だった。

「そのため、我々としてはなんとかブラックアメリカ合衆国に物資の補給を頼めないかと、密かに接触を試みておりました。幸い、ロサンゼルスからブラックアメリカもハワイへの物資供給に同意するという返事が先刻まいったのですが、そこに困った話が一つありまして」

「我々の存在……ということですか?」

「そうです。ブラックアメリカというよりも背後にいるメキシコの意向らしいのですが、メキシコ攻撃の可能性がある部隊をそのままにして、ハワイ共和国の存続を保証してくれと頼むというのは少々虫が良すぎるんじゃないか、と、こう言われたとかで……」

「それで、貴方は我々にどうして欲しいと?」

「二つ解決策が考えられると思います。一つは、あなた方の必要とする物資は、我々共和国からということではなく、軍の組織に頼って別にアメリカ合衆国から得る、これならブラックアメリカのものを横流しするつもりだろ、と言われなくて済みます。で、もう一つは……、これもさらに申し上げにくいのですが、現状、我々ハワイの住民の大多数の意向は、どうやらブラックアメリカ合衆国の方を、今までの合衆国よりも支持しているようです。あの人種差別国家と名指ししたキング暫定大統領の演説は効きましたな。ですのて、合衆国へのハワイの編入は、同じ合衆国と言いながら、ブラックアメリカ合衆国の方を選択するのが、ハワイの世論に沿う、ということになるのではないか、ということなんです。で、その時問題になるのが、我々が基地を貸している軍隊はどういうことになるんだろうか、ということです。聞けば、メキシコ軍の捕虜になったアメリカ軍からも相当数の軍人がブラックアメリカを故国として選んだ、と聞き及んでおります。では、ハワイやグアム、フィリピンの部隊はどうするんだろう、ということなんですが……」

「それはつまり、我々が帰属先をアメリカ合衆国ではなく、ブラックアメリカ合衆国に変えれば丸く収まる……ということですか?」

「米布互恵条約の相手先をブラックアメリカに継承と解釈を変更すれば、基地の存続を含め我々としては何も不満はありませんし、ブラックアメリカにもなんの懸念も無くなりますからな」

「お話の趣旨はよく分かりました。ですが、時間を少々頂きたい。これは全ての部下の将来に深く影響する話ですから。部下達の意見も聞く必要がある……」

「よくわかります。ただ、今のところ、アメリカ合衆国がシアトルからハワイに向けて物資をどういうスケジュールで出してくれるのか、ずっと問い合わせているのですが、これが、なしのつぶて状態なのです。何でも船腹が確保できず、見通しが全然立たないというような話で。メキシコ軍が侵攻してきた時、カリフォルニアの港湾から軍艦を脱出させるのが精一杯だったとかで、貨物船はほとんど全部カリフォルニアに置いてきてしまったらしいのですよ。従って、どこまで時間を稼げるかは、イコールどれだけ何を節約できるか、ということに掛かってきます。その事をご考慮の上、行動計画を見直されるように深くお願いする次第です」


ニミッツが副官から聞かされた話では、ハワイ基地に残された石油のストックは、何も節約をしなければ三ヶ月で枯渇する、と見積もられていたのである。

従って、言われるまでもなく、ニミッツは大型艦は、当面、軒並み係留することとした。

とにかく水と燃料、食料のハワイ基地の在庫を動かさないのが一番節約できるからだ。

そしていろいろと口実をつけ、工廠、補給廠、大型艦搭乗人員を中心に本土へ移動させて待機状態とした。

要するに口減らしである。

元々ハワイ基地に課されたタスクは通常の軍事基地よりもはるかに多いのである。

そしてその機能の中でどうしても停止させたらまずいもの、というのは、ふだんの軍事演習とは縁もゆかりも無いものばかりだったのだ。

気象観測、民間の船舶の安全確保、誘導、電波管制、さらには国際通信の盗聴、領空、領海侵犯に対する警戒などは簡単に止めるわけにはいかず、これらの人員には手をつけられなかった。

結果、本土への転属命令が出たのは、戦闘艦の搭乗員、工廠、補給廠要員に集中することになったのである。

かくて太平洋艦隊は、見かけだけの張り子の虎状態へと転落していくことになる。


ニミッツがこのように涙ぐましい節約努力をやり始めて一ヶ月もした頃、そのニミッツにクレームをつけに来た人物が現れた。

そう、フィリピンにあってアメリカ陸軍を率いているマッカーサーである。

日本の中国撤収の結果、援蒋ルートの物資が急激に減らされ、そのあおりでフィリピンへの補給も必要以上に減らされておかんむり状態だったところへの、ハワイのニミッツのケチケチ大作戦が始まったのだから、その影響は大きかった。

もちろんフィリピンは大きいし、資源調達はハワイよりも大量かつ広汎に出来た。

とは、言うものの、燃料と食料、つまり小麦粉、牛肉、酪製品となるとフィリピンでの完全自給は不可能だった。

そうでなくても食へのこだわりが徹底しているのがアメリカ軍で、中でも陸軍はその傾向が突出していた。その食い物の恨みがマッカーサーをハワイに駆り立てたのである。

「てめぇ、ニミッツ、お前、いい加減にしろよ、なんだ、あの補給物資の量は? 俺たちを餓死させるつもりか。ナチスかてめぇは!」

と、司令部に文字通り怒鳴り込んできた。

が、とは言ったものの、マッカーサーもニミッツの姿がすっかりみすぼらしくなっていることに驚きを隠せなかった。

「お前、いったいどうしたんだ、そんなにやつれて」

「ま、とにかく掛けてくれ。話はそれから。すまんな、もうコーヒーの在庫が無くなってな。これしか無いんだ。まあ、馴れればこれも結構ウマイ。ちょっと酸っぱいが」

と、マッカーサーの前に真っ赤な色の紅茶のようなものを出す。

「紅茶ではないな、なんだこれは?」

「ハイビスカスティーと言うそうだ」

「……、なかなかだが、いつもこれってのはちょっとないな。で、コーヒーが無いって、それは?」

「ああ、実は……」

ニミッツはハワイおよび太平洋域にあるアメリカ軍拠点の置かれた厳しい状況を説明した。

さすがにハワイ共和国がブラックアメリカへの参加を匂わしたという下りは、マッカーサーも驚かせることになった。

「で、お前はどうするつもりだ?」

「まだ、わからない。そちらの考えも聞きたいが……。お互い、部下にはカリフォルニアやアリゾナの出身者多いだろ。相当動揺しているだろ」

「なるほどな。日本の奴等が画策したのはそういうことだったのか」

「うん、何の話だ?」

「実は、一回だけなんだが、フィリピンの西の海上を高速でパラオに向かう変な船の一群を発見した、という報告を受けたことがあった」

「それで?」

「今にして思えば、あれは日本からメキシコへ戦車を運んでいたんじゃないかなってな」

「何、それはつまり第二次米墨戦争を陰で操っていたのは日本だと言いたいのか? まさか」

「まだある。これは中国にいる義勇軍の幹部からの情報なんだが、黄海はいろんな潮がぶつかる大陸棚の遠浅の海で漁場として有名なのは知っているか?」

「いや、あんまり詳しくない。我々が入れない海だからな。日本の近海だろ」

「その通り。で、とにかく漁場としていい場所だって言うんで、中国船も日本船も入り乱れて操業しているんだが、時折り日本軍が軍事訓練、というより何かの実験で海域を立ち入り禁止にするんだそうだ」

「黄海でか。なるほど、日本海軍の造船基地は長崎だからか。十分ありえるな。それで何かあったのか?」

「ああ、そういう禁止された海域ってのは、禁止が解かれた後は漁業者にとっては金城湯池なんだそうだ。海に気絶した魚がプカプカ浮いている状態になってるそうでな、大した努力をしなくても船が満杯になるほど獲物が捕れるとかで」

「ほう。それで」

「半年、いやもうちょっと前かな、古い、巡洋艦クラスの軍艦を標的に魚雷みたいなものを使って吹っ飛ばしたって言うんだよ。そしてその後、その現場に向かった漁船が沈みかねないほどの魚を捕ったっていうんだ。集まった船全部が全部、そんな状態だったって、中国じゃ、かなり話題になったらしい」

「それは良かったな」

「そうじゃねぇ。問題は、その標的になった巡洋艦、たった一発で真っ二つに折れたっていうんだ。しかも魚雷は直接当たっていないって言うんだよ。近接信管か何かで、船からちょっと離れた場所で爆発しただけだったらしい。それなのに、その軍艦、真っ二つになったって、連中は騒いでいたんだ。それしかないと思わないか、カリフォルニア湾の入り口での……」

「あっ、アリゾナとワスプはそれに食われたってのか! で、それはどんな戦艦の武装なんだ?」

「そこがよく分からん。というか、魚雷本体を見た人間がいないから、本当に魚雷かどうかもわからん。つまり厳密に言えば、巡洋艦がたった一発で真っ二つになるような爆発を起こせる兵器は魚雷しか考えられないから魚雷だろう、ってなったってことだ。そんなバケモノじみた量の爆薬を詰め込んだ砲弾なんて空中を飛ばすこと自体不可能だからな。直感で言えば、普通の大型魚雷の爆薬って多くても五百キロはないんだろ。で、そのぐらいの魚雷でも大抵の軍艦なら、三本もあれば沈められるらしいな。ま、全部直撃すれば、の話だが。が、ほんの少しでも船体から離れた場所での爆発なら、水がクッションになるから、そんなに大きな被害にはならないとも聞いた。だとするとその魚雷もどきは、非接触と分かる距離でのたった一発の爆発で大型艦を葬ったということはだな、爆薬の量が、数倍どころじゃなくて、数十倍とか数百倍のレベルで桁違いということになるんじゃないか」

「百倍として、五十トンの爆薬か。まあ、確かに潜水艦の大きさを考えれば、砲弾は無理でも魚雷ならありえなくはない……。陸上で爆発させたら、町がまるごと一個ふっとびかねない量だな」

「ただその海域に入っていた標的じゃない方の日本船は、かなり小さな船だったらしい。最初はアメリカ海軍の高速魚雷艇のようなものかと思ったんだが、そいつの話じゃ、形が全然違うし、あれよりももっと小さくて戦闘艦にも見えないって言うんだよ」

「われわれの常識じゃ判断できん、って話なんだな。やれやれ、じゃ、カリフォルニアでメキシコ軍がそれを持っていたということは、日本の関与が濃厚ということか……。となると……、我々は今、フクロのネズミってことになるのか」

「その通り。日本の抱き込み工作の結果だろうが、イギリスがブラックアメリカを承認した、ということはイギリス東洋艦隊もオーストラリアもカナダも、味方がどうかは怪しい、と考えるべきだな」

「で、日本軍は何か動きを見せているか? パラオは?」

「いや、静かなもんだよ。情報によると、いつもよりもパラオ泊地にいる艦船は少ないらしい。何度か艦隊を組んでシンガポールへ向かったという話ならある」

「シンガポールへ? いやインド洋か? じゃ、太平洋はガラ空きなのか」

「そこまではわからん。今はこっちも仕掛けられるような状態じゃないってことぐらい、日本がいかに無能揃いだとしてもさすがに分かるだろ。だから単純に軍縮しているだけかも知れない。今の我々の状態は、日本から見たら全然不安を感じない、安心できる状態だからな。日本のことを心配してる場合じゃない。我々の方が時限爆弾を背負わされてるんだぞ。正直、フィリピンの内政なんて、本土からの援助が切れたら、維持できるようなもんじゃない。ドルの威力にみんな頭を下げてる、ってのが実態だからな。グアムも似たようなもんだ。もしその威力が無くなったら、我々は夜逃げするしかないぞ」

「そ、そうか、そうなるのか……。確かにハワイだって、実際に住んでいるのは日系人が圧倒的に多い……。金を持ってるから偉そうにできたのが白人だったというだけだからな……。合衆国は我々を見捨てる気かな……。海軍本部は何も言って来ないんだよ。とにかくハワイ基地の要員は減らせるだけ減らして、シアトルに送り返したんだが、それについても何も言って来ない。陸軍はどうなんだ?」

「似たようなもんだ。前に聞いた話じゃ、ケンタッキーの端っこに要塞作ってメキシコ軍を迎撃する準備が大忙しでそれどころじゃない、ってすぐ電話切られたとかだった。おそらく首都移転が決まったから、ボストンへの引っ越しとかでまともに仕事していないんだろ。なんか付き合うのが馬鹿馬鹿しいと思うようになってきてる……」

「そうか。いや、ちょっと俺もお前も頭冷やすべきだな。明日か明後日、また改めて話すことにしよう。今日はもう気持ち的にちょっとムリだ。とんでもないことを口走る危険がある。それに時間を置けば新しい指示でもくるかもしれない」

ニミッツの憔悴しきった姿を見たマッカーサーは、その提案に同意し、陸軍幹部宿舎へと引き揚げることにした。

が、その後の再会談でも状況は何も改善せず、またアメリカ合衆国政府からも海軍本部、参謀本部からも何も具体的な話が来ないまま終わった。

そして大統領がルーズベルトからウォレス副大統領に代わり、ブラックアメリカ合衆国、メキシコ合衆国それぞれとの講和条約が結ばれ、何故かそれにくっついた形で日本との間で通商条約が再締結された、というニュースが続いた。

ニミッツも、フィリピンに戻ったマッカーサーもただただ節約に励めと命令を出し、事態の進展を見守るだけだった。

年が変わり、春が終わりを告げ、ニミッツもマッカーサーも台風の発生を心配しなければならなくなった頃、日本、満州国、メキシコ、ブラックアメリカの四カ国連合が、対ドイツ、イタリアに宣戦布告するというニュースが流れた。

理由はまたしても「人種」である。ナチスによる人種浄化は絶対に許さない、というものだった。

アメリカ合衆国本土でもブラックアメリカ合衆国の宣戦布告に驚きはしたが、それを非難する意見はほとんど出なかった。むしろ、アメリカ合衆国に対する批判的な意見、モンロー主義に対する批判、そして人種差別法がまだ残されている州があることなどが批判のやり玉にあげられていた。

大リーグへの黒人ほか有色人種の選手の参加を認めろとか、社会の隅々で今までの人種差別的慣習への批判が沸き起こっていた。

有色人種が多数派のハワイ共和国でも、当然この影響を受けた。いままでのアメリカ合衆国は悪いアメリカ、ブラックアメリカこそハワイが参加すべきアメリカとする論調が世論をリードしはじめたのである。

そしてハワイ共和国はブラックアメリカへの接近と同時に、かつての王朝政府のように日本に接近しはじめたのである。少なくとも水と食料の供給元になれる国であり、しかもハワイ産品の売り先としてもそれなり大きな市場だったからだ。

在ハワイ共和国 アメリカ軍の立場はいよいよ微妙なものにならざるをえなかった。

フィリッピンは、まだそこまでこのニュースに反応することは無かったが、何しろアジアに向かって伸びる補給線の一番端っこで、まるで本国から見放されたかのように本国からの補給は来なくなった。

ただ、それでフィリッピンのアメリカ軍が飢える、ということにはならなかった。

日米通商条約が再び結ばれたため、アメリカからではなく日本から食料や水が届くようになったからだ。

再び、マッカーサーが動いた。ハワイのニミッツのところへと押しかけてきたのである。

「もうやってられん。おい、ニミッツ、お前からハワイ共和国に言って、さっさとブラックアメリカに参加すると宣言させろ。そしたら俺もすぐブラックアメリカ軍に転属するって宣言出すから」

「おい、いったいどうした? この間よりもずっと状況は良くなったじゃないか。日米通商条約も復活したから、ブラックアメリカが渋ろうとなんだろうと日本から食料も水も届くようになっただろ。いったい何が不満なんだ」

「俺にはお前が何故平然としてられるかの方が、よほど不思議だよ。米だぞ、みそだぞ、しょうゆだぞ、たくあんだぞ、うめぼしだぞ、納豆だぞ、豆腐だぞ、干物だぞ。のりだぞ、わかめだぞ、魚だぞ、ようかんだぞ、冗談じゃない、あんなもの食料と呼べるか!」

「あー、それはもしかして、あれか? アメリカ人はアメリカ飯を食うべきだって、やつか」

「そんな面倒なことは言わん。肉だ、肉を食わせろ」

「肉なら、ベーコンが本土から山ほど来てただろ」

「ニミッツ、お前、頭おかしいんじゃないのか、ベーコンなんてもんはな、肉の範疇には、はいらねぇ。あれは単なる調味料だ。肉というのは分厚いステーキ肉に決まってるだろ。そんな事も知らんのか、大将にもなって、まったく最近の海軍は情けない限りだ。とにかく、さっさとブラックアメリカ編入を決めさせろ。俺はもう腹をくくった」

「ホントにいいのか、それで? お前、アメリカ合衆国のことはどうでもいいのか?」

「肉を食わせんような母国は母国として認められん! そんだけだ!」

かくして、ニミッツは、陸軍のモンキー・D・マッカーサー大将の強い要請で、彼とともにハワイ共和国のブラックアメリカ合衆国への参加を促し、自らの率いる太平洋艦隊をブラックアメリカ軍にすることに同意したのであった。


東京では、総理府で東条首相が岡田外相と閣議後、隣室で懇談をしていた。

「しかし、対ドイツ宣戦布告によって、まさかハワイとフィリッピンの米軍がブラックアメリカ軍になるとは思いませんでした」

「やはり殿下の言う、人種差別反対の大義名分は大きかったんですかね。それに通商条約発効でアメリカからハワイ、フィリッピンへの食料輸出に際して格別の便宜を図ったことが結構効いたかもしれません」

「ほう、それは?」

「いや、陸軍将兵の間で人気の高い食材ばかりを特に選んで送るように言っておきましたから、おそらく軍人にとっては特に喜ばれたのではないかと」

「おう、それはそれは、何よりでしたな。こちらの誠意が正しく伝わったようで」



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― 新着の感想 ―
[一言] 誠意(和食) まあなれてない人には味噌汁も辛いっぽいし
[気になる点] こんな兵糧攻めもあるのかぁ
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