プロローグ2
「エェッッ?!」
聞こえてきたお願いに、心底びっくりした。
まぁ、神様からのお願いというから、すごいのが来るかと思ったら、世界を救ってほしいって……
「…ちなみに、救ってほしいというのは、どういう意味ですか?」
「言葉の通りでございます。今、私の世界は魔族とそれ以外の種族との間の戦争が絶えないのです。」
「…ちなみにどのくらい?」
「約40年続いております。」
「40年ッ?!」
俺が生まれる前じゃねぇか!…まぁ、いいか。
「はぁ.... まぁ、いいですよ?」
「本当ですか?!戦争ですよ?!死んじゃうかもしれないんですよ?!」
いや、神様から言ってきたんでしょうが。
「それは、そうですが。私が言うのもおかしいのですが、何故すぐに引き受けてくださったのですか?」
本当に不思議そうに聞いてくる。『何故』かぁ...
「俺は、今の世界だと馴染めていない気がするんです。
なんというか、こう、ぬるま湯に浸かってるというか。とにかく、俺は刺激が欲しいんです。」
「…もう、家族や友人に会えなくなるのかもしれませんよ?」
なんだか悲しそうな顔で見てくる。
「俺は家族とも友人とも、周囲の人間とうまく噛み合わないんです。だから、未練はないです。」
「…分かりました。本来なら、こちらの世界のことなので、関係のない人を巻き込みたくはなかったのです。」
本当はそうなんだけどね。
「引き受けてくださり、本当に、ありがとうございます。成し遂げることができたら、あなたの願いを何でも叶えてみせましょう。」
願いか...思いつかない。
「いきなり戦争に送り出されたら、アレでしょうし、何か道具を揃えましょう。」
「いいんですか?」
「いいんです。こちらがお願いしましたから、このぐらいはさせて下さい。」
「ありがとうございます。ではですね、お金と、装備と、何か他に旅用の道具をお願いします。」
「かしこまりました!それでは、一年分の保存食と…」
…エッ?
「あとはすぐに傷を治す薬...」
それは欲しいかも。
「が無限に湧き出る水筒と…」
…エェッッ?!
「あとは、死んでも生き返る魔術の札と…」
「魔術?!」
「はい。魔術はご存知ですか?」
「知ってますけど、えっ?そちらの世界って魔法とかがあるんですか?!」
「はい、ありますよ。」
ニコリと微笑む神様。ていうか魔法あるのか〜。
「魔法とか魔術は努力次第で習得できますよ。是非、習得なさってください♪」
…まぁ、あんまり興味ないけど。一応頑張ってみるか。
「えっ。興味ないんですか?」
少し驚いた顔をする神様。
「そんなに無いですね。」
「そうなんですか…」
少しだけ悲しそうな顔をしている。一応頑張ってみるって。…一応ね。
「……はい。」
「…そうでした。道具の準備でした。あとは、旅に適した服装と、宝石と、神様が認めた証、あとは神様との通信機。このくらいですね。」
「色々とツッコむところがあったような…」
「気のせいですよ♪」
……そうだな。気のせいだな。
「それでは、あちらの世界に送り出します。肉体の年齢はそのままで、装備でしたね。」
「はい。なんか、手頃な物を頼みます。」
「はい、お任せください。それでは転移を始めます。」
「あぁそうだ。なぜ、俺が選ばれたんですか?他に適任者がいるような気がしますが?」
「それはですね、あなたが分け隔てなく接することのできる人だからです。」
「ふーん。あっ、そうだ。成功の条件は?」
「…そうですね。戦争が終結すれば、成功です。さらにいえば種族同士が仲良くなれば、もっと良いです。」
「了解です。」
「はい。本当に、この度はありがとうございます。」
視界が黒く霞んでいく。転移が始まってるのか。
そろそろだな。よし、気合入れていくぜ!
「世界をお願いします。」
完全に視界が黒くなる前に、そんな声が聞こえた。
行ってきます。
「お気をつけて」