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黒い森 五
「お前は名は何と言う?」
名?そんなものあっただろうか・・・・記憶にない・・・私は私。名など初めから無かった。
「お前自分の名を忘れてしまったのか?それともただ話せないだけか?」
男はその大きく柔らかな黒い瞳で私をじっと見つめた。そして何かを納得したようだった。
「そうか・・・良いことを思いついたぞ!!俺がお前に名を授けよう!名が分からぬままじゃ不便だしな。有難く思えよ!!」
男は得意げな顔をしてがっはっはっと笑った。
「うーむ・・いざ名付けるとなると難しいのぉ・・・」
男は私の心の奥底を覗き込むような目つきで私の顔をじっと見つめている。
「なんだかお前を見ていると不思議な気持ちになるのぉ」
今度は目をつぶり男は何かぶつぶつと言っている。数分後、男は何かひらめいた顔をしていた。
「そうだ!!良い名が思いついた!今日は冴えてるのぉ」
そして男は深く息を吸った。
「お前の名は・・・」




