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黒い森 二
森を進むと男の寝泊まりしているであろう場所に辿り着いた。
男は持っている限りの布を地面に敷き、そこに私を落ち着ける。
それを終えると男はテントからポットとカップ、ガスコンロを取り出し、お湯を沸かし始めた。
「今は白湯しかないが我慢してくれ、持ってきた茶葉がつい先日切れてしまってな。後でさっき採ってきた魚を焼いてやる」
コトコトとポットが揺れ始めた。
男はカップに白湯を移し、ある程度冷ました後それを私の口へ運んだ。
味はしないが身体が少しほかほかしてきた。
男も自分のカップに白湯を注ぐ。
「それにしても、変わった成りををしておるのぉ。お前もこの戦争に巻き込まれた節か?」
戦争?なんだそれは・・・
「何だ、初めて聞いたかのような反応だのう。記憶喪失か何かか?・・・まぁいい、その方がずっと良い。こんな何の足しにもならんことは知らん方が良い」
そう言って男は白湯を一気に飲み干した。
「そういえば、まだ俺の名を名乗っていなかったな。俺の名は大野木健蔵。将来、ぺいんたーになる男だ」
男は満面の笑みでそう言った。