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王との謁見 

僕は今なんと王の間に立っている。東郷さんと久世さん、そしてお腹に抱えた宇宙人と共に。


「その少年の腹にへばり付いているのが東郷の言っていた新種の宇宙人か?」

「はい」

「うむ・・・確かに我輩も見たことのないタイプだな」


まるでマスコット又は縫いぐるみのような王様が自身の髭を撫でながらそう言った。


「そなた名前は?」

「あっはい!環アルスと申しますです!」

「はっはっはっ、東郷は相変わらず面白い連れが多いのぉ」


東郷さんは王の言っている意味が良く分からなかったのか、キョトンとした顔をしてる。


「してアルス、その宇宙に寄生されてから何か体に変わったことはあるか?」


「変わったことですか?・・・特にないですが・・・この宇宙人は殆ど重さを感じないので張り付かれて邪魔だなと思ったことは寝る時と着替える時以外は感じたことはないですね。寧ろ時々存在を忘れちゃつてるぐらいです。あと疲れとかも感じないです。逆に元気というか・・・体が軽いというか・・・」

「そうか」

「すいません、参考になりませんよね。この宇宙人全くアクションを起こさないので他に言えることがなくて・・・」

「いや良いのだ。あともう一つ訪ねたい。その宇宙人が青白く光ったという報告を受けたのだが、それは誠か?」

「一瞬だったので確かとは言い切れないですが、もう駄目だ。と思って時にふわっと青白く光ったように見えました」

「・・・」

「王様?」

「いや、質問に答えてくれてありがとう。ついでに近くでその宇宙人を観察しても良いか?」

「はい!勿論です」


王様はぴょいっと王座から降り、僕の所まで来た。そしてふむふむと言いながら宇宙人を観察し始めた。僕が見られているようで何だか恥ずかしい。


「ちょっと触ってみても良いかのう?」

「どうぞどうぞ」

「どれどれっ・・・・なぬ!?」

「わぁっ」


王様が宇宙人に触れた次の瞬間、宇宙人の体は青白く発光し辺りを牽制し始めた。


「なんなだこれは」

「陛下!」


久世さんと東郷さんは宇宙人を取り囲むようにして体を構えた。しかし、宇宙人はただ青白く発光しただけでそれ以上の反応を見せなかった。


「なんだったんだ今のは?」


僕が触ってもピクリとも動かなかったのに、王様が触れた瞬間光るだなんて・・・もしかして身分の違いとかで判断してる?いやそれだったら不良に絡まれた時の説明がつかない。


「陛下、ご無事ですか?」

「あぁ、大丈夫だ。ビンビンしてる」


王様は何事も無かったかのように王座に戻った。


「あっあの何だかすいません」

「そなたの謝ることではない。あと、その宇宙人は君に危害を加えないだろう。多分其方を気に入って張り付いているだけだ」

「僕を気に入っている?」

「あぁそうだ。それに君にとってはその宇宙人と一緒の方が良いかもしれん・・・」


最後の言葉の濁りは気になったが、危害を加える宇宙人ではないみたいなので少し安心した。


「王、そろそろ次の謁見が・・・」

「そうか。吾輩の意見もあまり参考にならなかったようで済まぬの」

「こちらこそお時間を取らせて申し訳ない」

「いやいや、新しいアーカイブの仲間にも会えたので何よりだ。その宇宙人のことはこちらでも調べておくぞ。だがあまり期待はしないでくれ」


王様は愛嬌のある声でほっほっほっと笑った。


「有難う御座います」

「ではアーカイブ諸君、日々の働き期待しておるぞ」

「御意に」

「そしてアルス。其方もたっしゃで。その宇宙人をよろしく頼むぞ」

「はい!」


王様に宜しく頼むと言われてしまった。何もしていないのに誇らしい気分だ。


「私はあとで向かうので君たちは先に事務所に戻ってくれたまえ」

「わかりました。東郷さん」


東郷さんにそう言われ、僕と久世さんは先に王宮を後にし事務所に戻ることにした。


ーーーーーーーーーー

「陛下」


アルスたちの王との謁見の後、東郷はまだ王の間に居た。


「なんだ東郷?私には次の謁見があるのだか」

「あの宇宙人についてなのですが・・・」

「先ほども言ったように、彼女あるいは彼はあの子供アルスには手を出さないよ。ただ、私のような者には触れることが出来ないだけだ・・・でも何故彼のような一般市民に・・・」

「陛下、本当は何かご存知なのでは?」


王と東郷の間に沈黙が流れた。


「・・・今はまだ言えない・・・・・・正確にはまだ確証が掴めていないと言っておこう」

「・・・・・・・」

「そう心配するな。あの子に害はないのは確かだ」

「・・・わかりました。ではこれで」

「あぁ」


一通り話を終えると東郷は王の間を後にし、王はそれを見送った。


「また迷惑を掛けるかもしれないな・・・」


東郷が王の間の扉を閉めると、王はぼそりとそう呟いた。

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