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二年前 

「嫌だ!!私もうお家に帰りたいよ・・・こんな所で作品を作りたくない!」


くしゃくしゃな赤毛を振り乱しながらジャミール・ミラは駄々を捏ねていた。彼女は次の展示の作品を、クンスト・トーキョーで一番大きな展示場・セントラルアートホールに属するアトリエにて製作中のようだ。


「そこをなんとかお願いしますぅジャミール先生。先生の素晴らしい作品を世界中の人が見に来るんです。どれだけの経済効果になることか」


今回の展示の責任者であろう眼鏡をかけた胡散臭い男、ワダミーがなんとか彼女に作品を作らせようとゴマをすっている。


「嫌だ!!パパとママのいるお家に帰る!」


ジャミールはプイッとそっぽを向いて手を動かそうとしなかった。


「この展示が終わったら会えますよ」

「今会いたいんだもんっ」

「ちっ、これだからガキは・・・」


ワダミーは聞こえないようにそう呟いた。しかし、ジャミールの護衛、久世カナトにはその呟きが聞こえていたようだ。


「どうかしましたかワダミー殿?」


久世さんはワダミーの細い肩にそっと手を置いてそう言った。


「いっいえ・・・ただ早く作ってくれたらなーと思っただけで・・・」


ワダミーは久世の無表情な迫力に当てられていた。


「では私はこれで・・・後は頼みましたよ」


そう言ってワダミーはバツが悪そうにその場を後にした。一方ジャミールはまだ不貞腐れているようだ。


「なんでこんな何もない所で作らなくちゃいけないの。お家で作ってた時はあんなに楽しかったのに・・・カナちゃん私今日はもうお部屋に帰る」

「わかりました」

(ワダミー殿にはここで作品を作れとは言われていないからな)


その日、いつもと同じ帰り道で帰路についている途中二人はある数人の賊に襲われた。理由はよくある身代金目当てだった。十人以上の人数だったが久世は殆ど素手で彼らを圧制した。しかし、不意を突かれた。まだ残党が一人隠れていたのだ。


「なにっ」


その残党は他の賊とは動きが全く異なっていた。目が虚ろだが動きがかなり俊敏で力も人間のものではないようだった。不意をついて残党がジャミールに襲いかかろうとした瞬間、久世は腰に掛けていた刀を鞘から引き抜き、ジャミールの目の前て残党を切り裂いた。返り血が久世の体に覆いかぶさった。


「大丈夫ですか!?」

「!?」


振り向くと怯えて声が出なくなったジャミールが地面に座り込んでいた。


「あっ・・・あ・・・」

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