9.あなたは今日から
あらすじ
愛ちゃんと仲直り。
ついでにオモチャにされた。
愛菜家からの帰り道。結局俺たちは、友達でいようということになった。正直、そのほうがしっくり来てしまうんだよな。
化粧道具は一式持たされた。なんでも、もう使っていないものらしい。今時の女の子はこんないくつも持ってるんだろうか…。疑問だ。
「私、私、私…。やっぱり慣れないな。」
愛菜に散々矯正されたが、やはり今日一日じゃ俺呼びは抜けないらしい。これに加えて、口調まで女の子らしくしろというのだから、もはや苦行である。
女子になってから、毎日が慌ただしくなってしまった。とはいってもまだ一週間も経っちゃいないのだけど。俺にはそれがとてつもなく長く感じるほど、濃密な数日だった。
これからのことをぼんやりと考えていると、いつのまにかアパートに着いていた。
「たっだいまーっと。」
誰もいない部屋に挨拶を投げかける。当然だが返事はない。
ふと、扉に備え付けられている郵便受けに、一枚の封筒が入っているのが見えた。
「なんだこりゃ…」
窮屈な玄関で腰を屈め、封筒を取り出す。そこには、葉輝の大学名が書かれていた。おもむろに中身を取り出すと、一枚のカードが入っていた。
「これ…学生証?」
しかし、大学一年生とはいえ、もう前期も終了して今は後期前の夏休みである。当然、葉輝も持ち歩いている。なぜこんな時期に…そう思って内容を読んだ。
「瀬川…ハル?」
なんでカタカナになってんだ。誤植か?確かに、文面などでは、友達からは『ハル』と呼ばれることが多い。それにしたって、大学が誤植とはいかがなものだろう…そう思いつつ他の項目も見ると、
「性別…女!?」
嘘だろ。まだこのことを知ってるのは母さんと愛だけのはずだ。なんでこれを大学が…
そこまで考えてハッとした。母さんの言っていた、後は任せておけ。これはこういうことなのか…?
ーーピロン!
新規のメッセージを知らせる音が葉輝の耳に届いた。
『あなたは今日から瀬川 ハル。もとい、私の娘として生きるのよ!』
いやいや、リアルタイムだなー。やっぱエスパー?それともどっかで見てんの?冷静に考えると後者の方が怖いよね。
あまりのエスパーぶりに乾いた笑いが漏れる。いや本当、その能力くれよ。
でももうこれで、考えることはないよな。そういうことは母さんがよくわからない力で揉み消してくれる。都合が良すぎる気がするが、実際そうなってるし…。
ま、深いこと考えるのはもうよそう。あまり考えることは得意じゃない。普通に友達とバカやって、恋人作って…
冷静に考えると、俺どうやって恋人作るんだ?女が好きな人を探すしかないのか…?でも、愛を見てももうそういう感情が湧いてこないしな…。かといって男と…うわ、無理かもしれない。
しまった、新しい問題が浮上してきたぞ。俺は生涯独り身の可能性…。
うん、なんか容易に想像できてきた。今みたいな狭い部屋でくたびれながらコンビニ弁当を独りで食べるOL……
う、うわ!すごく嫌だ!!
今回は短めです!
次回からようやく大学へ出向きます。
ぶっちゃけ、ここまでは私の書きたい物語じゃないです。
でも、こういう土台は大事ですよね。
そうそう、台風で倒れてる送電線もテレビで見ましたが、あれは土台が緩くなってしまったんですかね?テレビをしっかり見ていないのであまり分かりません!土台繋がりで言ってみたかっただけです。
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