5.発見
あらすじ
異常事態を一発で当てる異常母さん
その後、母さんは『後は任せておいて。』といい電話を切った。よくわからないが任せておけばいいのだろう。本当によく分かっていないが。
なぜかスリーサイズも測らされた。別に自分の身体なので抵抗はなかったが、なにしろやったこともなければ意識したこともないので、グー○ル先生の力も借りて四苦八苦しながら測った。
ひとまずはこれでいいのだろうとホッと息を吐く。
「さてさて…あとやらなくちゃいけないのは…。愛のこと、かな…。」
そう、俺が浮気相手を部屋に連れ込んだ挙句逃亡したと思っている俺の元彼女。実際放っておいてもいいのだが、今まで受けた恩を仇で返しているような気がしてならなかった。というか、そんな不名誉な勘違いをしたままでいてほしくはない。
復縁はあまり望んでいない。愛のことは好ましく思ってはいるが、男の時の好きと今の好きはどこかが違う気がした。
「とりあえず愛の家に行こうか…と思ったが、着るものがないな…。俺のじゃ全部余っちまう。」
身長は元々大きいほうではなかったが、それよりもいくらか縮んでしまったため、どの服も今の体には合わなかった。こんな格好で外出なんてすれば、近所から失笑の嵐に遭う。それだけは避けたかった。
とはいっても、このまま動かないのも良くないなぁ…。そう思っていると、ピロンッとスマホからメッセージアプリの通知音が鳴った。一体誰だろうか。
スマホの液晶画面を覗き込むと、母の文字があった。
『外出するのであれば、明日まで待ってね!』
この人はエスパーかなんかなんだろうか。そういえば、女になったこともすぐわかってたみたいだし、なにかそういう能力でもあるのかもしれない。
考えれば考えるほど常識がわからなくなってくるな…。
昼飯、作るか…。なんだか頭の中がこれからの問題でいっぱいだ。そういうときは料理なんかをすると少し気が紛れる。何作るかな…オムライスは昼からじゃ重たいかな…。
レパートリーはそう多くはない。なにせワンルームの狭いアパートのキッチンだ。そんなキッチンでできる料理なんてタカが知れている。
ーーよし決めた。今日はフレンチトーストだ。
なんだかフレンチトーストのことを考えると元気が出てきたぞ。2枚くらい作っちゃおうかな。自然と頰は緩み、足取りが軽くなった。
余ってた食パンを取り出し、卵と牛乳を合わせる。恥ずかしながら、甘いものが好きな甘党なので砂糖は普通よりやや多目。食パンの耳は綺麗に取ってしまう。大きめの薄い皿に卵と牛乳を合わせたものを広げ、そこにゆっくりと食パンを下ろしていく。皿をレンジに入れてタイマーをセット。じゅわーっと染みていく様子を見て、思わず涎が出そうになってしまった。
しばらく待って、両面しっかり浸かったのを確認すると、あらかじめ温めておいたフライパンにサッと通して焼き上げていく。焼き過ぎない方が好みなのでほどほどに焼けたところで皿に盛る。
「んー、いい匂い。やっぱりこれなんだよなぁ。」
フレンチトーストは昔からの好物だ。噛むとぎゅっと甘い卵と牛乳が染み出てきて、それでいてパンの食感も失われていない。
「はー、美味い。」
何故だか、これまで食べたフレンチトーストの中で一番美味しく感じた。甘さの感じ方が変わったというべきか。卵の中から主張してくる甘さが、脳に美味しいという信号を送り続けている。
「これも女子になった影響なのか…?だとすれば、悪いことばかりじゃないな。」
甘党の葉輝からすると、とても嬉しい発見だった。これからどんな甘いものを食べようかな。ニッコリと笑っている葉輝は、それで頭がいっぱいだった。
フレンチトースト、美味しいんですよね。
誤字脱字、変な文等あったら教えてくださいね!
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