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39.相談

あらすじ

夢オチちゃんちゃん♪

――ずるるっ


 琥珀色の液体に浸けた白い糸を啜る。つるっとしたそれは、少ししょっぱいが、出汁の香るつゆを纏わせて口の中に収まった。ハルはそれをもちょもちょと咀嚼する。


 現在はハルが淫夢を見た日のお昼時。ハルの作った素麺を、ハルと愛菜は向かい合わせで囲んでいた。


 ハルは、刻んだミョウガを入れた小皿に箸を伸ばし、少しミョウガの少なくなってきたつゆの入った器にぽいぽいと追加した。刻んだみょうがの、得も言われぬ独特の風味を感じながらつゆをカラカラという音を響かせながらかき混ぜる。すると、愛菜が食べる手を止めてじっとこちらを見ているのに気が付いた。


「ん……? どうかした? 私の顔になんかついてる?」


「いや…強いて言うなら可愛い顔がついてる……」


 愛菜は至って真面目な顔でそんなことを言う。愛菜に言われるのは今では慣れっこなので「ああ、そう」と適当に受け流す。


「あの…もう一回すすってみて」


 よく分からない要求をしてくる愛菜。言われている意味がわからず、思わず首を傾げてしまった。


「なんで? なんか変?」


「いや…ハルが麺すすってるの……エロいなって………」


「あ…そう……」


 どうやらなんでもないらしい。もう愛菜を気にするのはやめて、改めて麺に箸を伸ばす。そして、一周くるりとつゆに麺を通してずるずるとすすった。「おお…」という愛菜の声が聞こえたが気にしないことにした。これから私の話に付き合ってもらうことへのサービスだ。こんなサービスもいかがなものかと思うけれど。


「ありがとう……ハル、よかった。特に濡れた唇と口元が……」


 そんな事細かに聞いてないんだけどな。もう愛菜のことを止めようとするのもやめた。いや、諦めた。私じゃ抑止力にはなり得ない。


「うん…それは良かったよ」


 そしてごほんと咳払いを一つ。これから本題に入る。


「あの、愛。その、相談があるんだ」


 内容が内容なだけに、少し恥ずかしくてもじもじしながら切り出す。すると愛菜は優しげな微笑を浮かべて首を傾げてきた。すなわち「なんでも言ってごらん?」ということだ。


「昨日、涼と優也と優也の彼女さんで遊びに出掛けたんだけど、その時私がドジったせいで涼に…だ、抱き締められちゃって……それからなんだか、調子おかしくなっちゃって。……その、ずっと、涼に触れられたいって思うように……これって変、なのかな…」


 あまりに恥ずかしくて、紅潮していく顔を隠すようにどんどん俯いていくハル。すると何故か、愛菜はハルの体を包むように優しく抱き締めてきた。


「……んと、なにしてるの?」


「ハルは、あたしに触られたいと思う?」


「いや……」


 愛に触られる……別に嫌ではない。ただ、別にそれを望んでいるかと言われたらそういうことでもない。


「じゃあ、あたしに抱きしめられて嬉しいとか思う?」


「まあそりゃ…ぎゅってされるのは嬉しいけど」


 だからといってどうこう思うこともない。こうやって抱きしめられると心地がいい。あとはちょっと眠たくなる。


「じゃあ、水瀬くんにこうやって抱き締められたらどう?」


 ぽやーっと考える。涼に抱き締められる。涼のあのしっかりした胸板に頬を預けて、あの頼り甲斐のある腕を背中に回されて、あの優しい手でそっと頭を…………


「………し、死んじゃう………」


 妄想の途中でキャパオーバーした頭が爆発して、顔が真っ赤に茹ってしまった。


「ハル、もう水瀬くんにぞっこんだね」


 ハルを抱きしめながらからからと笑う愛菜。


「ぞ、ぞっこんって……私は男のことなんて……」


「ハルはそんなこと気にしてたの?」


「そ、そんなことって…」


「だったら、今更女の子を好きになれんの?」


 愛菜の声音が少し変わった。怒り…とは少し違う。どこか、悲しみを含んだような声。


 女の子…は、無理かもしれない。愛菜を見ても、翠ちゃんを見ても、そう言う気にならなかった。むしろ、同族のような、仲間のような意識の方が近い。


 愛菜は、ハルの両頬に手をやると、ぐいっと顔を上げさせ、真剣な顔でハルを真っ直ぐに見据えた。


「ハル、もう男とか女なんかにこだわっちゃいけない。ハルが触ってほしいって思うのは男なの?それとも女なの?」


 男……女………違う、私が触って欲しいのは………


「わかるでしょ? ハル、迷う必要なんかないんだよ。それを悪く言う奴がいるなら、あたしがハルを守るから。だからハルは、もっと素直になっていいんだよ?」


 愛菜はいつもの眩しい笑顔に戻った。でも、その眩しさに紛れた悲しみや寂しさを、ハルは見逃してはいなかった。でも、ハルはそんな愛菜に、なにかを言うことは出来なかった。なにかを言う権利は、自分にはないから。


 きっと、一番泣きたいのは目の前の愛菜なのに、私は涙腺が緩んでいくのを感じた。だから、絶対に泣くまいと、愛菜の胸に飛び込んであの日の茶番を返してやった。



「……愛のおっぱいも、最高だね」


「ふふ、そうでしょ。いつでもおいで」


「ばか……投げるとこでしょ」


「ハルだったらいつでも歓迎だよ」


「もう、またそうやって」


 二人はけらけらと笑い合いながら、しばらく抱き合っていた。

ハルアプローチ編はじまるよー


悪魔TSのほうもよろしくお願いします!!


感想もいただけたら本当に嬉しいですどうかお願いします…………

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