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37.触られたい

あらすじ

すとらーいく!

「はぁぁ〜〜〜……腕パンパンだよ…」


 重くなった腕をふるふると振る。これは間違いなく明日は筋肉痛だ。すでに痛だるいもの…


「ハル、その身体になってからあんまり運動してないだろ? 仕方ないさ。」


「いや、こうなってからって言うより、こうなる前からしてなかったような気がする…」


 思えば、高校になると同時に部活動もきっぱりやめたので、運動はしてこなかったような気がする。別に辞めた理由なんて大したものじゃない。ただなんとなくめんどくさかっただけだ。


「それよりほら、次なに歌うんだ?」


 優也が長方形のスクリーンのついた板を手渡してくる。私達はボーリングで2ゲームやった後、ボーリング場を出たところにあるカラオケのゾーンをじっと見つめていた翠の(無言の)要望でフリータイムにてカラオケをしていた。


「うーん、迷うねぇ。じゃあそろそろボ○ロとか歌っちゃおっかな!」


 女の子になってから声帯が変わって今までは出せない高い声も出せるようになっていた。そのおかげか、今まで手の出しづらかった女性アーティストであったりも歌えるようになってとても楽しい。

 その他にも、あまりちゃんと聞いたことないはずなのに何故か覚えているアイドルの曲を歌うと、皆聞き覚えがあるせいかなんとなく盛り上がった。


 優也に入れてもらったこのボー○ロイドの曲は割と高い音程が多いのだが、伸びやかに声が出てくる。今までの自分の声はあまり好きじゃなかったから、これは嬉しい変化だな。


 歌い終わると、涼が「良かったぞ。」と褒めてくれた。あれから、涼に褒められるたびに胸がちょっときゅんとする。もう誤魔化しも効かなくなってきた気がするな…


「ほんと?」


「ん? ああ、本当だ。」


「じゃあ撫でて。」


 開き直ってそうおねだりしてみると、涼は一瞬不思議そうな顔をしたが、すぐに頬を緩めて優しく頭を撫でてくれた。


「んふふ……」


 自然と愉悦の声が漏れる。ずっと触れていてほしいとすら思う。もう自分の脳内はすっかり女の子に侵食されてしまったみたいだ。もう相手が男だっていいんじゃない? ともう一人の自分が最後のダムを決壊させにかかってきていた。


「ハル、お前あんだけ男は無理っていいながら今すっかり女の顔してるぞ?」


 優也が苦笑いしながら痛いところを突いてくる。


「ぐ……それくらい分かってるよ…いや、今でも男とっていうのは無いと思ってるけどさ…」


 喉を詰まらせながらちらりと、ハルの頭を撫で続けている涼を見上げる。涼とぱちりと目が合う。すると、心臓がとくんと脈打ったのを感じた。


「今はなんか…涼に触られたくて仕方ないって言うか……」


「へぇ…」


 う、うわ、私何言ってるんだ…いくらなんでもこんなこと言うのおかしいよ…!


 その言葉をぶつけられた涼は、なんだか気まずそうな顔をして顔を紅潮させていた。


「ご、ごめん、涼。私にそんなこと言われても、困っちゃうよね。」


 はは、と自分でもよくわからない笑いを溢す。すると、涼は目線を逸らして頬をポリポリとかいた。


 や、やっぱり嫌だったよね…ほんと、今日はちょっとおかしいな…


 どうしてか気分が沈む。涼にそんな気は無いのは分かってたはずなのに。すると、いつのまにか俯いていたハルの頭の上から、涼の声が降ってきた。


「いや、嫌とか困るとかじゃないんだ…その、俺も、ハルに、さ………」


 そこまで言って言葉を切ると、涼は恥ずかしそうに「ううん…」と呻いた。でも、私はそれじゃ満足できない。その先をどうしても知りたい。


「俺も……何?」


 涼はハルの縋るような視線にあてられて、観念したように息を吐いた。もう惚れた弱みだ。ハルに隠し事なんてできない。


「いや、な。俺もハルに触っていたいなって……」


「へっ……?」


 触っていたい…?って何だっけ? えっとえっと、私は触ってほしくて、涼は触りたいってこと…? うぇえ…? い、いいの? で、でも男同士で触りたい触られたいってヤバいキモくない!? も、もうわかんないよー!?


 パニックを起こしたハルは俯いたままプルプルと震えだした。明らかに変化した様子のハルを心配して、涼が「ハル?」と声をかける。すると、ハルは顔を真っ赤にして口を一文字に結んだままゆっくり顔をあげ、ただ一言だけ言った。



「ヘ、ヘンタイ………」



「ブフッ……」



 二人の世界を勝手に作ってそこに浸っていたので、翠を膝に乗せて同じように世界を作って対抗していた優也は、ハルの一周回って回りすぎてもはや訳の分からないヘンタイ呼ばわりに思わず吹き出した。その言葉を言われた涼はポカンと口を開けて呆けていた。


「な、なに、触りたいって…どこ触る気なの…!」


 内心嬉しくて仕方ないのに、どこかひねくれた性格が素直になることを許してくれない。でも、涼はそんな私のことも分かってくれているようで、涼は優しく微笑んでくれた。

 実はそのときのハルは、誰から見ても喜んでいるのが分かるほど、目に見えてにやけていた。そんなことをハルが知ったらいよいよ悶え死んでしまうだろうから、涼はその言葉をそっと胸にしまった。


「も、もう! 次優也だよ! 早く入れて!」


 なんだか居た堪れなくなり、半ばやけくそで優也にデンモクを回す。すると、優也は翠を膝から下ろしながら呆れた笑顔を向けてくる。


「いや、お前らのイチャイチャが終わるの待ってたんだろ。こっちの身にもなってほしいな。」


「イ、イチャイチャなんてしてない!」


「ハイハイ、ソウデスネー」


「うぐぐ………」


 優也に悔しさから歯噛みしていると、ちょんちょんと服の裾を摘まれる感覚があった。なんだろうと振り返ってみると、翠がじっとこちらを見つめていた。


「ん? どしたの? 翠ちゃん。」


「……………………ハル、可愛かったよ。」


 …………いや、君の方が可愛いよ。なんか庇護欲をこれでもかと掻き立ててくる。もう思わずひしっと抱きしめてしまった。翠ちゃんだけが私の癒しだ………

 私がしばらく翠ちゃんを抱きしめていると、いつのまにか歌い終わった優也に無理矢理引き剥がされた。優也のケチ。


 その後は翠ちゃんの可愛い歌声にほんわか癒されたり、翠ちゃんとデュエットをしたりでいつもの調子が戻ってきた。ちなみにデュエットした曲はかの有名なたぬk…………猫型ロボットの曲だ。

 その時の翠ちゃんはただ可愛いの一言に尽きる。「しゃらららら♪」と無口だったはずの翠ちゃんが流暢に歌うのだ。もうこれ以上のギャップ萌えはない。アイドルとして私の中で永遠に生き続けてほしい。グッズとか買えるだけ買う。




 そして、時間はあっという間に過ぎて17:00になってしまった。まだ夏だとは言え、最近は日が落ちるのも早くなってきたのでここらでお開きにしようということになった。翠ちゃんは高校生とはいえ流石に心配なので私もそれがいいと思う。優也がちゃんと家まで送るんだろうけどね。



 問題はそう………お別れの時なんだよ………



「翠ちゃん……! またね………!!」


 グズっと涙ぐんで翠を抱きしめるハルと、同じように目元に少し涙を浮かべてハルに抱きつきながらコクコクと頷く翠。まさしく今生の別れみたいになっているが、時間が来たから帰るってだけだ。

 今日が初めての顔合わせだったが、翠ちゃんも私に懐いてくれたみたいで嬉しい。


「私………ハルが好き。」


「はうっ………!」


 ダメだ!! 変な扉が開く!! ゴゴゴッていう重くて鈍い音が響く!! 静まれェェ!!!


「私も…翠ちゃん大好きだよ…絶対また会おうね…!」


「…………うん!」


 そして再びひしっと抱き合う二人。何度も言うが別にこれっきりなわけではない。


「ほら、早く帰るぞ……」


「優也! 野暮なことをしないで!!」


 こういうところでデリカシーないんだから! まったく。


 そんなこんなでしばらくそんな茶番をしていたら30分も経っていて、翠ちゃんは痺れを切らした優也に連行されていった。


「さよなら…翠ちゃん……」


 涙が頬を伝う。最期の悲しそうな翠ちゃんの顔を、私はきっと、一生忘れることはできない……


 何度も言うが、これから何度でも会える。ここまでくると、ただなんとなくこの茶番を続けたいだけだった。


「ハル、俺らも帰るぞ。」


 苦笑いしながら涼が声をかけてくる。表情を戻したハルは「うん。」と返事をしながら涼の横に並んで歩き始めた。


「…今日は楽しかったか?」


「もちろん。すっごく楽しかったよ。」


「それは良かった。」


 そんな会話の後、少し無言の時間が流れた。ふと、涼の手を見る。つい最近まで何気なく繋げたのに、意識しだすと急にハードルが高くなった気がした。……でも、なんとなく、繋ぎたいな。


「……ね、ねぇ…涼?」


「ん? どうし……っ!?」


 その時のハルは、少し目を潤ませてねだるような顔を向けていた。その顔があまりにも妖艶で可愛らしくて、思わず涼は息を詰まらせてしまった。


「あ、あの……手、繋いでもいいですか。」


 そう言っておずおずと手を差し出してくる。なんならこの場で抱きしめてしまいそうだ。ただ、そんなことをしたらまたハルはパニックを起こしてしまう。涼は、一瞬滞った肺を必死に動かして深呼吸をした。


「……もちろん……いいよ。」


 そう言って、差し出された手を握ると、少し汗ばんだ、細い指が絡みついてきた。指や手のひらのぷにっとした感触が如実に伝わってくる。


「……こ、これでも、いいかな…」


 ボソッとハルは呟くと、自分の指を涼の指に絡ませてきた。これは、いわゆる恋人繋ぎ……


 涼は手の感覚を考えないように、自分の心臓が暴れまわっているのをただただ感じていた。この手の感覚に少しでも身を委ねてしまえば、ダメになってしまいそうだったからだ。何がなのかは分からない。


 隣をふと見てみれば、恥ずかしそうに目を伏せながら口元がだらしなく緩んでいるハルがいた。



「………本当、勘弁してくれ……」



 涼は天を仰ぎながら、ハルに聞こえないよう小さくそう呟いた。

私のフェチがバレそう!!!!!


それだけです。


悪魔にTSさせられる話もかいてますますよろしくお願いします!感想もたくさん聞かせてくださいいお願いします!

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