33.え、ロリコ……
あらすじ
ボーリング行くぞ。
現在の時刻をお知らせしよう。現在は9:40。時間は前回から回り回って翌日土曜日、ボーリングへ行く日の朝だ!
まさに快晴。雲ひとつない青空。10月に近づくにつれて喧しいセミの声は聞こえなくなってきたが、やっぱりまだ暑い。ていうか太陽を遮るものがなきゃ、夏だろうがなんだろうがあっつい。
「…私はいつのまにかインドア派になっていたらしい…」
「いや、お前は元々インドア派だったよ。」
「うせやろ…?」
暑くて頭が回らない。何故だか自分は自分の中でアウトドア派にジョブチェンジしていたらしい。確かに言われてみれば外で動き回るってことは高校生になってからしてないな…。
今日は日中30度を越す真夏日。今はまだ早い時間なのでそこまで気温が高くなってはいないが、アスファルトの照り返しで著しく気温が上昇するであろう正午過ぎを思うと、今から頭が痛い。
「うー、暑いよー、疲れたよー、おんぶー。」
「いや、まだ10分も歩いてないし気温もそんな高くないぞ。」
ハルの家からラウンドツーまでは、徒歩で片道20分程度だ。せいぜい数キロの道のりなのだが、朝から仕事熱心な太陽とついつい甘えてしまう涼がいるせいでデロデロに溶けてしまう。ぜんぶりょうのせいなんだぁー。
今日は優也の彼女に会うということで、少し気合を入れて化粧をしてきた。まあ、それもこの日差しのせいで崩れ去る危機に陥っているわけだが。こまめに汗を拭いてはいるが、これはあとで直さないといけないな…と到着前から少し憂鬱になる。
ちなみに、服もちょっと気合いをいれてスカートなんて慣れないものを履いてみた。着てみた感想としては、女の子としての華がちょっと増して「わ! なんかちょっと可愛くない?」なんてテンションがあがった。ただ、やっぱりこれを考えた人の脳みそは一生理解できない。すっごいスースーする。なんだこりゃ。
この気合い入れバージョンを最初にお披露目したのは、いわずもがな涼くんだ。「ねぇ、どう? 似合う?」なんてちょっとからかってみたら、涼は顔を赤らめて「…可愛いぞ。」なんて恥ずかしそうに言ってくれた。涼は女慣れしてないから、中身が私でもそういった反応をしてくれる。なんてからかいがいがあるんだろう。
暑さにぶーたれながら歩いていると、涼はフッと違う方向に歩き出した。思わず立ち止まって、どうしたのかと見ていると、涼が向かっているのは道の脇に設置されている自販機だった。そこで涼は100円程度の天然水を購入して戻ってきた。
「あ、喉渇いたの? ごめんね、気利かなくて。」
「……いいや、これはハルにだ。」
「はぇ? 私に?……ってひゃぁっ!」
涼は、結露して水滴のついたペットボトルをそっとハルの首筋に当ててきた。顔に当てなかったのは化粧が落ちることを懸念してのことだろう。急な冷たさにびっくりして変な声を出してしまった…
「も、もうっ、びっくりしたぁ。」
「はは、すまんな。でも、これでいくらか涼しいだろ?」
確かに、こうしてるとひんやりして気持ちいい。
「…うん、ありがと。へへ、逆に気利かせてもらっちゃったね。」
にへら、と笑みを浮かべながらハルは受け取ったペットボトルを首筋に当てる。なんだか色々耐えきれなくて、涼は思わずハルの頭に手を伸ばす。ハルは嫌がるそぶりも見せず、むしろ、「髪はぐしゃぐしゃにしないでね。」なんて言って頭を差し出してきた。恥ずかしそうに微笑みながら頭を撫でる涼、嬉しそうに笑うハル、呆れたようにそれを眺める優也………………
「お前ら、やっぱイチャイチャしないと死ぬわけ?」
…………いつからそこに………?
そこには、腰に手を当ててジト目を向けてくる優也と、麦わら帽子を被った黒髪ボブカットの白いワンピースを着た幼女が居………?
………え?……………幼女……………????
時間が止まる。その間わずか0.05秒とかそんな比喩表現じゃない。脳みその理解が追い付かないため、防衛本能で体内時計が完全に停止している。マジモンのザ・ワー○ドだ。
…………………………?
涼を見る。きょとんとしてる。
幼女を見る。きょとんとしてる。
………………………………………????
「………事案?」
「おい、まて。動くな。まずはそのスマホを地面に置け。」
ひぇぇ………おまわりさん………この人です………
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「こいつは朝比奈 翠。俺の彼女だ。」
………? 彼女………? 誘拐してきたんじゃなくて?
ひとまず外で話すのもなんなので、全員でラウンドツーまで移動してから本題に入った。
その話題の当の本人は、無表情で終始眠たげな目でこちらをじっと見つめている。幼い容貌と150センチほどしかない身長。麦わら帽子も相まってその辺にいる小学生にしか見えない。
「小学生にしか見えない。そう思ってるなハル。」
「え"っ!? そ、そんなことないよっ!?」
な、なんでそんな手に取るように私の考えてることわかんのこのロリコ………ーー
「ロリコン、もナシな。」
「ほぉぉぉっ!!?」
こ、こわい! このロリコンエスパーこわいよぉ!!
思わず涙目になって、隣に立っていた涼の腕にしがみついてしまった。涼は苦笑しながら、そんなハルにされるがままになった。
すると、翠は何を思ったのか、ゆっくりと顔色一つ変えずハルの前まで歩いてきた。何かと思って、頭にクエスチョンマークを浮かべていると、
「………ん。」
と、喉の奥を鳴らしたような声を出して手を差し出してきた。
「……へ?」
「………よろしく。」
どうやら、友好の握手だったらしい。機嫌を損ねたのかと思って内心ちょっとびくびくしていたハルは、ほっと息をついてその小さな手を握った。
「こちらこそ、よろしくね。私は瀬川 ハル。こっちの朴念仁は水瀬 涼。私のことは気軽にハルって呼んでね。」
「誰が朴念仁だ。」
「え……違うの?」
「………一概には否定できないな…」
そんな様子を見て、翠はクスリともしない。先程から寸分違わぬ無表情でこちらを見つめてくる。……あれ、これ完全にファーストコンタクトミスった?
「翠、こいつらのこと気に入ったみたいだな。」
いやいや、どう見たらそう見えるの…。そう思って呆れていると、翠はこちらをじっと見つめながらゆっくりと首を縦に振った。それが表すことは一つだ。すなわち「YES」。
「え、優也、翠ちゃんの思ってること分かるの?」
「……まぁ、分かるのは俺くらいだろ。」
……うわぁ、なにそのノロケ。他の人ならいいなぁって思うのに、優也がやると殺意湧いてくるな。
どう考えても理不尽な理由で優也を睨みつけていると、翠はおずおずと口を開いた。
「あの…………ハル、と…………仲良くなりたい。」
ありゃりゃあ? すっごい可愛いこといってる。お兄ちゃん…じゃなくて、お姉ちゃんって呼んでもいいのよ?
「私も、翠ちゃんと仲良くなりたいな。今日は楽しもうね?」
「…………………うん。」
相変わらず無表情なんだけどなんかぽわぽわした雰囲気出してる! なんなのこの子! すっごい可愛い!! こりゃ誘拐してもおかしくないわ! ………あ、誘拐してきたんじゃないんだっけ。
「受付は俺が済ませておくよ。翠、少しこの二人と待っててくれ。」
優也が翠に優しく話しかける。今までそんな優しい声音聞いたことねーぞ、おぉい。
翠は表情を一切変えずに、コクリと頷いた。そして、ゆっくりこちらを見るとまた手を差し出してきた。また握手かな?なんて思っていると、
「………………手、繋ぎたい。」
……なんだか私までイケナイ気持ちが湧いてきそうになる。こんな純真無垢な子初めて見たよ。
「いいよ、ほら。」
そう言って差し出された手をキュッと握ってやると、こちらをじっと見つめながら少しだけ力を込めて握り返された。それから優也が帰ってくるまで手を繋いでいたが時折ご機嫌な様子で握った手を少し揺らしていた。もう持ち帰りたい。妹にしたい。
「あれ? そういえば、翠ちゃんはいくつなの?」
そういえば歳を聞いていなかった。これで本当に小学生なら事案なんだけどね。まあせめて中学生くらいであってほしい。
「…………………17。」
…? 17? え、高校生なの…? まじ………?
どうやらロリコンエスパーさんは合法のロリを捕まえてきたらしい。そんな失礼なことを考えていると優也が鋭い目つきでこちらを睨んできた。なんで本当に考えてること分かるの? 怖すぎない?
そんなこんなで優也が受付を済ませてボーリング場へ向かう。翠は相変わらず無表情だが、足取りはとっても軽やかで楽しみにしているのが伝わってくる。
ちょっと不思議な子だけど、いい子で良かった。と心から思う。ヒール履いた高圧お姉さんだったら本当にどうしようと思っていたからね。
……いや、ロリっ娘もどうしようと思ったけどさ……。
新しく翠ちゃんを追加しました! こういう無表情キャラっていうのは顔には出ない感情っていうものが顕著にでてくるので、違った可愛さがあるんですよね。翠ちゃんにはしばらくお付き合いいただきます!
それと、新しく「悪魔にTSさせられたけど、それが何?」を投稿しました!
タイトルはまた変える可能性がありますが、多分変えないかなと思います。めんどくさいので( ˙꒳˙ )
そちらも是非ご覧いただけたらなと思います!
私の自己満足みたいになってきているこの作品達を好きと言っていただけると本当に嬉しい気持ちでいっぱいになります。なんでしょうね?私の価値観を肯定されてる感じというんでしょうか。頭が悪いので難しい言葉が使えません(๑ ˭̴̵̶᷄൧̑ ˭̴̵̶᷅๑)
後書きはついついいっぱい書いてしまいますね。活動報告に書いた方がいいんでしょうか?ふむ、わかりませんね。
感想などなどお待ちしております!もうみたらすぐ!すぐ返事しちゃいます!!




