30.髪留め
あらすじ
ハルの あーん 攻撃!
こうかは ばつぐんだ!
※若干の百合あり! 苦手な方は遠目から目を細めて恐る恐るご覧ください!
「ふーん、それで? 水瀬くんとは仲直りしたんだ?」
髪をとかす手つきが気持ちよくて少し身じろぎさせていると、頭上から声が降ってくる。
「うん、喧嘩…ってわけじゃないんだけどね、あの写真で涼が私のこと気にしてくれてたみたい。」
「まあ、あんだけ騒ぎになればね。ハルは可愛いんだから人との距離感間違ったらダメって言ったじゃない。どうせ色んな男誑かしてんでしょ。」
「た、誑かすって…あんま人聞きの悪いこと言うなよ…。私はただ前みたいに皆と仲良くできたらいいなと思うだけでさ。」
「それが誑かしてるって言ってるの。いい? 男なんてすぐ勘違いするんだから、あんまり馴れ馴れしくしないこと。」
「で、でも私元々男だったんだし…」
「でも、ハル、随分モテてるみたいじゃない…?」
「う、ううん…私が男だったって知らなかったー、とか…?」
「…………。」
「わ、わかりました…っ!」
禍々しいオーラがでてる!久しぶりに見た! こ、これがかの有名な暗黒微笑ってやつ…?
御察しの通りではあるが、顔に黒い影を貼り付けて歪な笑みを浮かべているのが愛菜。そしてそれに恐れ慄いているのがハル。そして愛菜の背中から出ているオーラと無数の黒い手の正体は誰も知らない。
ナニ○レ珍百景にだしたら事故映像としてアイチューブに載るだろう。間違いない。実は愛菜がぬらりひょんだと言われても、今なら信じる。
涼が家に来た翌日、つまり金曜日なので、今日も今日とて学校がある。今日は愛菜が迎えにきてくれた。
毎日来るわけではなく、ハルが一緒に行こーと呼んだり、愛菜の気分で訪れたりする。
ちなみに今日何故いるのかといえば、昨夜ハルが「今日涼と仲直りして、一緒に帰ったんだぁ。」と嬉しそうに愛菜に話した結果、愛菜が妙な対抗心を燃やし、「じゃ、明日は私が迎えにいくね。おやすみ。」と一方的に電話を切られたためである。
言葉通り、愛菜は出発の一時間前にハルの家に来て身支度からなにから甲斐甲斐しく世話を焼いてくれた。ただ、何にそんな対抗心を燃やしているのかはよく分からない。
「ほら、できた。うん、ハルは今日も可愛いね。」
髪型を整えて、ハルの顔を覗き込む愛菜。不思議だ…可愛いって言葉はあまり嬉しくないな…。愛だからか…?
「う、うん。ありがと?」
「それじゃ、そろそろいこっか。」
「あ…ま、待って! あの、これ、付けてくれない…?」
「ん…?」
頬をうっすら染めて手をこちらに差し出すハル。なにかと思って見てみるとちんまりと小さな髪留めが掌に乗っていた。
「この髪留め…こんなの持ってたっけ?」
「へ!? いや、あの、りょ…涼に…買ってもらって…」
ぼそぼそと俯きながら小さく呟く。ただ、愛菜はその言葉を一字一句聞き漏らさなかった。主人公特徴の難聴を、愛菜は持ち合わせていなかった。当然だ、だって私、主人公じゃないもの!
「へぇ…水瀬くんに…ねぇ?」
愛菜は上がる口角が抑えられなかった。それも仕方ない。こんなにいじらしくて可愛いハルが見れたのだ。それが自分に向けられたものではないのが悔しいが、今この表情を見れているのは私一人。それで満足だ。
「も、もう! からかわないでよっ。別にそういうんじゃなくて、仲直りしたからさ…っ!」
「ふふ、わかってるよ。ほらこっちおいで?」
ハルはまだ納得いっていないのか、「むー」と唇を尖らせながら髪留めを愛菜に渡して後ろを向いた。
愛菜はハルの後ろ髪をゆるく結い上げると、そこに髪留めをつけてやった。
「ほら、できたよ。」
そう言って手鏡でハルに自分の姿を見せる。
「わぁ…」
ハルは頬を淡く染めながら嬉しそうにニヤニヤして、そっと髪留めに手をやった。そして、少し顔を横に傾け、改めて髪留めを付けた自分を見てご満悦そうに微笑んだ。
「うん…嬉しい。ありがと。」
ハルは鏡越しに微笑みながら愛菜にお礼を言った。そんな天使のような笑顔を見せるハルを見た愛菜は、鏡越しだったにも関わらず、正気を保てなくなった。
「あのさ、キスしていい?」
「…へ?」
「優しくするから。」
「あ、いや、え? そういう問題じゃないと思う…」
「私の性癖を歪めたのはあなたよ。ハル。」
「えっと…全然話が見えてこないんだけど…」
「もう我慢できない。させて。」
ガッとハルの肩を掴み真顔で懇願する。ハルは未だに状況がよくわからず目を白黒させていた。
「ええ…? よく分かんないけど、ごめんなさい。」
「よくしてたじゃない? 今だけよ…」
「いや…愛キス魔じゃん…絶対今だけにならないよ…」
そう、愛菜はとにかくキス魔。隙あればキスしてくるほど。一回許せば何度だって迫られるに決まってる。
まあキス自体は好きだし、私もキス魔に当てはまるっていうか半分キス魔にさせられた部分もあるけど…
「ちょっとだけだから! もうこれ以上こんなに可愛いハルに何もしないなんて無理! 死ぬ!!」
そう言って大袈裟にぶっ倒れる愛菜。なんだかキャラが崩壊し始めているのを感じたので、ハグまでなら許してあげた。
ただ、ぎゅっとしている愛菜が、寂しそうに「ハル…」と呟いたのを聞いて胸が少しきゅっと痛くなった。愛菜もきっと無理して自分と一緒にいるのだろう。まだ想ってくれているからここに居てくれているのだろうから…。
そう思うと、愛菜に申し訳ないような可哀想というような色々な感情が湧き上がった。なので、少しくらいなら。と愛菜の頬に手を当て、軽くキスをした。
突然のことで愛菜は少しの間きょとんとした顔をしていたが、すぐに嬉しそうに微笑んでハルの胸に顔を埋めた。それはまるで、ハルが男だった時みたいで。
なんだか、愛菜を好きだったときの感情が少し蘇ってきて、ハルは愛菜をすこし強く抱きしめた。すると、顔を胸にうずめたまま、愛菜がポツリと喋り始めた。
「ハル…」
「ん…?」
「ハルのおっぱい…最高だね…」
投げ飛ばしてやった。私の今の気持ちを返せ!!!
この二人の絡みが好きと言ってくださる方がいて、私はとても嬉しいです。
これからもこの二人はちょいちょい絡めていくのでよろしくお願いします!
苦手な方も申し訳ありませんがお付き合いください!٩(ˊᗜˋ*)و
感想の方もお待ちしています! 最近いただける感想が多くてとても嬉しく思います! おかげでモチベが上がりまくってほかの連載も書いてしまう始末…。
本当にありがとうございますありがとうございます………




