27.未来の彼女
あらすじ
やっと声かけた。
長いよこのくだり。
「えっ? りょ、涼…?」
帰り仕度をしようと、カバンに物を詰めてる最中に涼から声をかけてきた。久しぶりに聞く涼の声に、心臓が高鳴る。
…ってええ! なに高鳴るって! いやいやいや、そんな乙女みたいな反応してない! してないよ!!
…でも、嬉しい。久しぶりに涼の声を聞けた。それに、涼から歩み寄ってきてくれたのが何より嬉しかった。
「な、なに? 私のこと避けといて今更…。」
なのに…何で私こんなひねくれてんの…バカなの…? 本当は、ごめんねって言いたいのに。はやく仲直りしたいのに…。
そうは思っても、自分のちっちゃいプライドが邪魔してつっけんどんな態度を取ってしまう。でも、涼はそんな私に優しく微笑みながら言った。
「そうだな。避けたのは俺だ。ごめんな? …ハルに迷惑かけたくなかったんだ。」
「迷惑…?って、私にはよくわかんないんだけど。」
涼が私を避けることの方が迷惑だ。おかげでこっちがどんだけ疲弊してると…い、いや、疲弊は涼のことだけじゃないけどさ!
「俺がハルの彼氏だって騒ぎ立てられるのは、ハルが嫌がるんじゃないかと思ってな。」
…え!? そんなことで今まで避けてたわけ!? 私が涼の彼氏って言われたら私が嫌がると…あ、でも、私男となんて無理!絶対無理!って言ってたもんな…。
そ、そりゃそっか…涼も気にするよね…。むしろ、涼は私のこと気にかけてそうしたってことか…ん、なんか、良かった…。
「もう…私はもしかしたら、涼に嫌われちゃったのかと思ったよ。」
「俺がたった一人の親友を嫌いになるわけないだろ?でも、そう思わせたのはすまなかった。」
申し訳なさそうに眉を下げる涼を見て、ちょっと可愛いな、なんて思った。ほら、叱られてしょんぼりする犬みたいな。あんな感じ。
「ていうか…さ、別に気にしないよ? 涼が彼氏って言われても…。あ、違う! そうじゃないよ!? 私は男と付き合うなんて断固拒否だし無理無理の無理なんだけど…!でも…涼だったらまぁ、そう言われても別に嫌でもないかも…なんて思ったり、思わなかったり…?」
頬を赤く染めながら、恥じらうようにポリポリと頬を掻くハル。その姿は、誰が見たってただの乙女だった。そのことをハルが知る由はない。知れば悶えて床に伏せってしまうだろう。
そんないじらしいハルの様子を見て、涼はふふ、と笑みを零した。すると、ハルが顔を真っ赤にして、わたわたと慌てながら怒った。
「わ、笑うなってば! なんだよぉ、人がせっかく許してあげようとしてんのに!」
そんな風に怒るハルまで可愛らしい。涼は、もうすっかり、自分はハルに毒されてしまったなと思った。正直、もう女の子にしか見えない。仕草も態度もその表情も。そしてその全部が可愛く見えて仕方ない。
「ごめんな。今度何か欲しいもの買ってあげるよ。」
笑いながらそういうと、ハルはほっぺをこれでもかと膨らませて、「私は今怒っています!」と言わんばかりの顔をした。
「まったく…涼? 前にも言ったでしょ? 女の子は、お金で機嫌を取ろうとしちゃいけないんだよ。…女の子はね、ただ傍にいて、優しくしてほしいの。『そうだね。ごめんね。』って。」
そう言って、ハルはおもむろに涼の手を取ると、自分の頭の上にぽふっと乗せた。
「そして、こうやって優しく撫でてくれたら、それでいいの。女の子が欲しいのはね、お金じゃなくて、心なんだよ。」
そう言って、ハルは恥ずかしそうにはにかんだ。あまりにもその笑顔が綺麗で、涼はぐっと息を詰まらせてしまった。
「もう、分かってないなぁ涼くん。しばらく私で練習しなよ! このハル様が付き合ってあげるからさ。じゃないと、未来の彼女に嫌われちゃうよ?」
「…ああ、そうだな。」
照れを隠すように、涼はハルの頭を優しく撫でてやった。大人しく撫でられながら、「えへへ」と笑うハルを見て、心臓が大きく脈打つ。顔が焼けるように熱い。この笑顔を独り占めしてしまいたいような衝動に駆られる。
ーーここまできたらもう、誤魔化せないな…。俺はやっぱり、ハルが好きなんだよな。
もう観念した。むしろ、こんな可愛い生き物に惚れない方がおかしいだろ。おかしいのは、俺じゃないよな?
そんな自分に、ふふっ、と自嘲気味に笑う。
「あー! なんで笑うんだよぉ! …なんか、へん?」
怒ってみたり、不安がってみたり、色んな表情を見せてくれるハルが、どうしようもなく可愛くて。
…我ながらなんともちょろいな。多分、ほとんど一目惚れだった。今までの距離も近くて、もともと自分の中で大切な存在だったハルが、自分の初恋の人になるのはそう難しいものじゃなかったみたいだ。
「な、なんで黙るの? なんか言ってよ、ちょっとクサかったかなとか思ってるんだから…。」
そうやって口を尖らせながら、涼の服をちょこんと摘んでくるハルを見てしまったら、涼には我慢なんてできなかった。
涼はそっとハルの肩を優しく掴んで、ハルの頬に自分の唇を押し付けた。すべすべしてぷにぷにしたハルの頬の感触がした。
すると、ハルの顔がみるみる真っ赤に染まって…
「わーっ! バカァ! 練習しろとは言ったけど、そこまで許した覚えはないーっ!!」
そうやって、顔を真っ赤にしながらポコポコ叩いてくるハルも可愛くて、ただひたすらに愛おしかった。
だから今は、それでいい。今は俺に、練習をさせてくれ。
未来の彼女…いや…ハルのために。
書いててハルのキャラが変わってる気がしますが、ここまでで結構女の子として心が変容しているので、今までもこういった喜怒哀楽は持っている子でした!
表現度合いが10から100になったぐらいで、キャラ崩壊には至っていません。
至って…ないよね?まあいいでしょう。可愛ければいいんですよ。
感想いっぱいください美味しくいただきます! もう見たら迷わず返信しちゃいます全身で喜び表現します!えへえへ。
ここからは割と普通の日常を続けていきたいなと思いますあ٩(๑•̀ ₃ •́ )۶




