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23.優也

あらすじ

優也に送ってもらった。

 優也に家まで送ってもらってからの一週間。ハルは相変わらず涼とは話さず、優也や康平といることが多くなった。

 涼と仲直りがしたくないわけではない…ただ、自分の中のつまんないプライドが邪魔をしていた。


 度々、一人で講義を受ける涼を見てはため息を吐くハルに見兼ねた優也は、飲み物を持ってきてくれたり話しかけてくれたり、甲斐甲斐しく世話を焼いてくれた。


 また、涼と話さなくなってから、SNSで持ち上がっていた涼との交際疑惑は鳴りを潜めていた。

 一部では優也に乗り換えたとの声もあったが、真っ向から否定するハルによって、それが盛り上がることはなかった。


 しかし、それに比例して、日に日に告白される量も多くなり、最初こそ少し嬉しい気持ちもあったが、最後は辟易していた。



「もう…辛い…しんどい…男ってなに…うざ…。」


「まあまあ、男なんてそんなもんだよ。お前だってわかるだろ?」


 そう言って優しくハルの頭を撫でる優也。



 最近、なにかと優也が撫でたり優しくしてくる。別に嫌ってわけでもないし、手慣れた手つきで撫でてくるから、いかんせん心地よい。

 女の子を撫でるっていうより、小動物を撫でているような感覚に近いからあまり忌諱感はない。誰が小動物か。


 今は講義中で、後ろの方に座っているため、このやりとりに気付いている人はあまりいない。

 正直、優也がいなかったら、この状況に心が折れていたかもしれないな…。


「わかるけどさ…、私は男なんて好きになれないよ…。ていうか、皆そうじゃないの…?」


「どうだろうな? そうじゃないから、今ハルはそうしてるんじゃないのか?」


「なんの解決にもなってないじゃん…。」


「まぁ、別に解決する気は無いしな。」


 無表情で頭を撫で続ける優也。…いつもそんな顔してれば、多少はかっこよく見えるのにな。言ってることは最低なのに…。


 すると、優也は何かに気付いたように、ちら、とハルの後ろの方に視線を移して、またハルの目に視線を戻して言った。


「…あ、ハル。お前、目にゴミくっついてんぞ。」


「ええ…? うそ…んん、取れた?」


 目をぐしぐしして、顔を優也に突き出す。


「んー、よく見えない。も少しこっち来い。」


 そんなに優也、目悪かった?と聞きながらお尻を振って、少し優也の方にずれる。

 すると、優也はそっとハルの頬に手を添えると、ゆっくりハルに顔を近づけた。


 …いや、別にだからどうとも思わないけどね? 野郎の顔間近で見て思うことと言ったら、毛穴いっぱーいって程度だ。まして相手は()()優也。


「んねー、まだ?」


 目を閉じてじっと待つ。頬に当てられた手があったかい。てか熱い。体温高いなこいつ。まだ寒くないんだから早くして。


「んー、いやこれ違うわ、まつげだわ。」


 顔を離してあっけらかんと言う優也。言ってる意味が分からなくて、ハルは固まってしまった。


……はぁ?どうやったらまつ毛がゴミに見えるんだ?


「…いや、優也お前、バカなの?」


「いーや? ハルのまつげってゴミみたいにいっぱいくっついてんなって意味だ。」


 ブチっと血管の切れる音が聞こえた。これは比喩じゃない。確かに聞いた。こいつは…○す……。


「おうおう…なんだ…? 喧嘩か…?」


「ええ? 俺は女の子(笑)とは喧嘩なんかできねーなぁ。」


 優也は、小馬鹿にしたようないつものにやけ面を貼り付けていた。


 ファイッ!という掛け声と、カァン!という甲高い音がどこからか聞こえた。こっちは幻聴だ。


「…よろしい。ならば戦争だ。」


 スマホをすっと取り出すハル。


「こいつで、けちょんけちょんにしてやる。」


 それに対して優也は、ニヤニヤしながら同じようにスマホを取り出した。


「ああ、勝つのは、俺だがな。」



 そして始まったのは1vs1のスマホゲーム。本当に殴り合うわけにもいかないので、こうやってお互いぶつかり合う。


 …あまりにも特殊だ。ちなみに、今も講義は続いている。



 序盤はお互いに熱く燃えていたが、後半になるとなぜか平和を求めてPVEのゲームを二人で始める。

 こうやって、二人はなにも言わなくても仲直りしている。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「さて、帰るか。」


「いつも悪いね。でも、本当に私一人で帰れるよ?」


 講義も終わって、身支度をしながら言った。

 そう、最悪、心細かったら愛菜を呼べばいい。電車で通学している優也を毎日付き合わせるのは、やはり気が引ける。


「俺が言い出したことだ。気にすんな。」


 そう言って微笑む優也。…うん、イケメンだな。本性知ってるからまったくときめかないけど。

 さっきの仕返しとばかりに、少しイジワルを言ってみる。


「…今日こそ、スイーツ奢ってよね?」


「…さて?なんの話だ?」


 そう言って肩を竦めて笑った。



 今日も私の平穏な一日が終わっていく。


 ただ一人、心中穏やかじゃない誰かを残して……

宇宙に行けるとしたらなにがしたいですか?

私はメントスコーラです。


お疲れ様でした。


感想だけでもいただければモチベーション爆上がりです生きる糧ですありがとうございます。

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