2.そしてまた別れ
あらすじ
起きたら女の子
でもまあ、死にゃしないでしょ!
生きていく上でポジティブって大事だと思うんです。
鏡の前に立つ少女(自分)を見つめる。見れば見るほど可愛らしく、一言でいえば美少女。胸はCくらいだろうか…。割と大きい。しかし不思議とこの体に欲情したりだとかはしなかった。自分の体にはやはり反応しないようになっているんだろう。
勝手に一人で納得していると、
コンコン
玄関をノックする音が聞こえた。
「ハルー!まだ寝てるの?早く起きなさいよー!」
快活そうな元気な声が聞こえる。この声は母親でもなければ幼馴染とかいうものでもない。幼馴染との恋は中学と高校の間で終わった。とくにこれといったドラマもなく…。
この声は今の彼女、清水 愛菜のものだ。しかしどうしたものだろうか…。この姿で出て行っても混乱を招くだけなのは想像に難くない。かといって出ていかなければ不審感を抱かせるだろう。一人でうんうん唸っていると、彼女は痺れを切らしたのか、
ドンドン!
先程より強い力で扉を叩き始めた。
「はやく起きなさいよハル!
じゃないと勝手に入っちゃうからね!」
そんなお断りを入れなくても、合鍵があるのだから勝手に入ればいいだろうに。おっと、自分はそうされると困る状態だったか。しかし、このままうだうだしていても埒があかないので、不安感から逃げるように足早に玄関へ向かった。
ガチャリと鍵を開け、そろーっとゆっくり扉を開く。
「なーんだ、やっぱり起きてたんじゃない。
一回目で出てきなさい…って…」
すごい目が丸くなってる。人の目ってこんなに丸くなるんだな。漠然と、他人事のようにそう思った。愛菜は惚けたように開いた口からようやく言葉を紡いだ。
「…誰?」
すごいなこいつ。俺と全く同じ反応してるよ。そりゃ俺でもびっくりするよ、ドアを開けたら寝起き頭の可愛い女の子がでてくるんだから…。ははーっと頭の中で乾いた笑いをこぼす。
さてどうしたものか…そう考えていると、愛菜の顔がみるみるうちに赤く染まっていった。それとは反対に、完全に目は据わっていた。
「誰なの…。
アンタは…。
ハルはどこにいるの?
中にいるのね…?」
静かに、しかし有無を言わさない口調で喋る愛菜。やばいなー、すごい怒ってるなー。でもね、あなたのいうハルは目の前のこのちっこい女の子なんですよー?
「いやー、あのな、愛?
ハルは俺…」
言い終わる前に愛菜は葉輝の肩をぐいっと押しのけ、部屋へと入っていった。
「ハル…?
どこに隠れてんの?
出てらっしゃいよ。
こんな可愛い女の子連れ込んでなにしてんの…?」
部屋をぐるっと見回しながら無表情で目を光らせている。ここで、「はーい、僕でーす。」なんて気軽に手を上げれば存在ごと抹消されそうな気がする。
「チッ、もう逃げたか。
あなたも災難ね、あんなクズに捕まるなんて。
ちなみに、あいつがどこに逃げたか知らないの?」
本人にクズとかいうなよ…。あ、そうか、俺はいま女の子なのか…いやーでも俺なんか悪いことしたのかなあ?状況だけ見ればね?修羅場なんですけど。
「い、いやー、ちょっとわかんないですね…。」
なんだか混乱したまま返事したからすごい適当な返事をしてしまった。ちら、と様子を伺うと、特に気にした様子もなくそのまま足早に去って行った。なんだかわからないままフラれてしまった…のか?だが不思議と辛くはなかった。あんなに好きだったのにな、自分はそんなもんなのかもしれないなと改めて思ってしまった。
その数時間後、俺のスマホに着信とメールが来ていた。
『死んどけ。
別れて。』
うん、やっぱ少しヘコむかも…。
転換して即座にフラれましたね。
彼があまり辛くないのは、執着心の薄さからだと彼自身は思っていますが、どうなんでしょうね?
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