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19.ツーショット

あらすじ

起きたら愛菜。

「疲れた…。」


 そう、疲れた。一言で言えばそういうしかない。なにせ今はもう夕方。出発が午前中だったにもかかわらず日はとっぷり暮れ、あたりを煌々と照らすのは眩しい朝日ではなく、優しい夕焼けだった。


 家を出てから、私達は少し電車を乗り継いで、先日訪れたモールより少し規模の大きなところへ来ていた。

 最初こそあれが可愛いこれが可愛いと二人できゃいきゃい騒いでいたが、途中から疲労が勝ってきて後半はあまりよく覚えていない。

 ちなみに、愛菜は最後まで元気だった。これが女子力の差なのかな…と見当違いなことを思ったりもした。


 ちなみに、殆どのメインはハルの試着とハルの服の調達だった。母から送ってもらった服もあるのだが、いかんせん種類は多くない。愛菜の、色んな服を試させたいという要望もあり渋々付いていった。


 可愛い服を着るのはあまり抵抗がなく、むしろ少し気分が高揚した。着実に女になっている証拠なのだが、ハルが気付くことはない。

 ただ、試着するたびに、愛菜が瞑目してハンカチで鼻と口を押さえながら静かにサムズアップするのだけはやめてほしい。ダメな子になりつつある愛菜を止められるのは、自分しかいないのではないだろうか。


 そんなこんなであっという間に時間は過ぎ、時刻は夕暮れ。いい子は帰る時間になってしまった。既に脚は棒になり、混雑した電車で立つことを強いられたのは苦行だった。

 その間ずっと腰を支えてくれた愛菜は、そのへんの軟派なやつよりよっぽど男らしい。本人に言えば殴られるので言わない。


 ちなみに、服は何着か購入した。愛菜が着せてくれるものはどれも可愛くて目移りしてしまったが、必死に自制して3着程度に抑えた。

「服が可愛いんじゃなくて、ハルが可愛いんだよ。」などと言っていたが、自意識過剰は良くない。あまり自分を高く評価してると、思わぬところで足をすくわれるからな。


「ご飯はどうしようか?」


 …確かにお腹すいたな。お昼は軽くハンバーガーを食べてすぐに行ったので、既にお腹は空っぽだ。かといって今から食材を買いにいける体力もないし…。


「あたしさ、このへんで行きたいところあるんだけど、いいかな?」


 うむ、やはりこの子は出来た子だ。どこにいこうかとなっているときに、あくまで自分が行きたいところとして提案するあたり良い。


「いいよ!なんのお店?」


「着いてからのお楽しみだよ。ハルもきっと好きだから安心してね。」


 そう言って笑顔を見せる愛菜に微笑み返して、愛菜の後を付いていった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 ジューーーッ………


 肉が焼ける音が響く。なんと食欲をそそる音なんだろうか。それに、いい香り…。


 ハルは愛菜に手を引かれて、ハンバーグ専門店へ来ていた。網目のついた、まるまる太ったハンバーグを見て、ハルは涎を飲み込んだ。


「美味しそう…!」


「へへへ、たまにお母さんに連れられて、ここ来るんだ。ほら、切ってごらん。」


 言われるがままにナイフをハンバーグへ落とす。すると…


「うわぁ…!」


 繊細な肉の切れ目から見えたのは、鮮やかな赤。そう、このハンバーグ店は、焼き具合がレアのものを取り扱っている。ハルは昔からステーキはレアのものを好んで食べた。ただ、ハンバーグのレアは殆ど食べたことがない。

 切れ目から覗く赤身と、そこから溢れ出す肉汁が、ハルの食欲を掻き立てる。


「い、いただきますっ!」


 慌てて手を合わせて、一口大に切ったハンバーグにフォークを突き立てた。フォークは、抵抗もなく、ハンバーグにスッと刺さった。持ち上げると、そこから漏れた肉汁が落ちて皿の上にシミを作った。

 ゴクリ、と唾液を飲み込んで一口。ぎゅっと噛み締めると、すかさず肉の旨味が広がる。加えて生肉独特の食感と甘やかな肉汁が口の中で絡む。


「美味しい…。」


 息をつくように自然に言葉が出た。美味しい。本当に美味しい。今日一日が全て報われたような気がする。

 肉の余韻を楽しんでいると、ニコニコとしてこちらを眺めてくる愛菜に気づいた。なんだか急に恥ずかしくなってきてしまった。


「そういえばさ、ハル。」


 と、愛菜は思い出したように尋ねてくる。


「んー?なに?」


 口直しにお冷を口に含みながら聞き返すハル。


「水瀬くんと付き合ってるって本当なの?」


「ブフッ!?」


 危ない。何を言っているんだこの人は。驚いて水が射出されるところだった。危うくこのハンバーグがデロデロになるという大惨事になるところだった。危ない危ない。


「ゲホッゲホッ。な、何言ってるのさ…。」


「ああ、ごめんね?別に脅かしたかったわけじゃなくて、やっぱりほら、女友達の色恋沙汰って面白いじゃない?」


「いや、そうじゃなくてさ…なんで私と涼が付き合ってるなんてことになるの?」


「え?いや…ほら、これ。」


 おもむろにスマホを取り出して操作し始める愛菜。そして、液晶画面をこちらに向けてハルに突き出す。

 その画面には、仲良く手を繋いで歩く私と涼が写っていた。


「これさ、学内SNSにあがってるよ?これが水瀬くんだとはまだここでは明言されてないけど、そのうちわかっちゃうだろうね。」


 oh…ぬかった…。大学外だとはいえ、昨日行ったモールはほぼご近所。ガイダンス終わりに寄った学生もそれなりにいただろう。そんな場所で手を繋いで歩いたんだ。発見されたっておかしくない。


「と、とにかく、涼と私は付き合ってない。ていうか、男と付き合うなんて無理だって。今でも親友の関係だよ。」


 ひとまず愛菜に弁明しておく。すると愛菜は少し呆れた様子で言った。


「ふーん、そっかぁ…でもさ、ハル。これ、多分これから少し大変だよ?」


「……へ?」


 そう、私はまだ分かっていなかった。自分が他人からどう見えているのか。あのときの行動で周りはどういう反応をするのか。私の深く考えない性格は、ここで祟った。


 …てか、やっぱこれ盗撮だよね?

更新ペース遅めでごめんなさい!

違うシリーズも思いついたら書かずにいられなくて書いています!

こちらも毎日更新できるよう頑張るのでよろしくお願いします!


よろしければ感想お願いします( ˙꒳˙ )

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