18.添い寝
あらすじ
涼に散々甘えた。
…んん。あったかい…。
ハルは、微睡む意識の中、包まれるような温かさに頬を緩めた。心まで温めてくれるような、そんな優しさを感じる温度。ハルは気持ちよくて、その温かさに身を委ねた。
…きもちいいなぁ…なんでこんなにあったかいんだろう。
頭に何か滑る感覚がある。優しく髪を梳かれ、大事そうに頭を撫でる何か。ハルはその感触がたまらなく心地よかった。
…んん。なでなでされてるみたい…。しあわせ…。
心がふわふわしている。ずっとこのままでいたい。そう思っていると、ハルを包んでいたなにかが、よりきつくハルを締め付けた。でも不思議と嫌ではなく、むしろより安心した。ハルはもっとその温度を感じたくて、その何かにしがみついた。
…心地いいなぁ…。いつぶりだろう、こんな感覚。そう、この感じは、誰かに抱き締められているような…
そこまで思って気付いた。ん?本当にどういう状態なんだ?と。
よく考えてみると、さっきから柔らかい何かに顔が挟まれている。こ、これは…。
恐る恐る顔を上げてみるとそこには…
「おはよ、ハル。」
とっても近くで微笑む愛菜の顔があった。
…え、なんで?
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「あー…そういえばそうだった。」
「まったくもう。いきなり呼び出しておいてそれはないんじゃない?可愛いハルのためならなんてことはないけどさ。」
呆れたように愛菜が言う。
そう、別に愛菜が無断でハルの家に侵入して、ハルが寝ていることをいいことに不埒なことをして一線を越えた、とかそういうわけではない。いや、実際は越えたことはあるのだが、今回はそうじゃない。愛菜は、ハルが呼んだからここにいるのだ。
昨日涼が帰ったあと、一人で部屋に入ってしばらくしてから思った。「やっぱ寂しい」と。十分に涼で人の温もりは充電したつもりだったのだが、どうやら足りていなかったらしい。このまま一人で夜を越えるのは、あまりにも辛すぎた。
かといって、帰ったばかりの涼を呼び戻して添い寝してもらうのは嫌だった。帰ったばかりのところを呼び戻すのも嫌だし、添い寝も嫌だ。大体、『男だった』自分と添い寝なんて、涼もしたくないだろう。と、よくわからない基準で考えていた。手は平気で繋ぐのに。
そこで白羽の矢が立ったのは愛菜だった。急な連絡だったのでダメ元で連絡してみたが、「今行く。」の一言だけ言って切られた。その5分後に肩で息をしながらアパートに来てくれた。「待たせたな。」なんてニヒルな顔を浮かべながら。やだ…イケメン…。なんて思ったのは一生の不覚だった。
そして、「なんだか寂しい。」といえば、両手を広げて「おいで。」と言ってくれた。そのまま優しく抱きしめられ、胸に顔を埋めると、「わぁ…なんか雌にされてる気分…。相手も雌なのに…。」と、よく分からないことまで考えた。一方で愛菜は、なぜかお経を唱えていたらしい。ハルの貞操とあたしのプライドを守るためとかなんとか言っていたが、よくわからなかった。
そして、何故か私が『男だった』時より優しい。というか、すごいベタベタしてくる。付き合ってたときよりデレデレまである。なんでだ、私が女だからか。
「起きたばっかりで記憶が混濁してたみたい。ごめんね?」
「いーよ!ハルの寝惚けちゃんは今に始まったことじゃないしね!……めちゃくちゃ理性削ってくるけど。」
朗らかな笑顔で許してくれる愛菜。最後になにか呟いていたが、よく聞こえなかった。
「じゃ、今日はどうしよっか?今日はなんか予定でもあるんだっけ?」
「いや、今日は何にもないよ。なんにも考えてなかった。」
「そ。そしたら、ちょっと行きたいところがあるんだけど、付き合ってくれる?」
ニコッと笑いながら提案してくる愛菜。最近はなにかとダメな子になりがちな愛菜だったので、こうして、できる愛菜を見ると少し安心する。あまりにも失礼なので、そんなことはおくびにも出さないが。
「うん、いいよ。どこへ行くの?」
「ちょっと…ね。ハルをお着替え人形さんにするの。」
…へ?あ、ああ…そういうことね…。
「あたし好みの女の子にしてあげるから。あ、違う。えと…か、可愛い女の子に、ね?」
間違えちゃったと言わんばかりに、テヘっと笑みを浮かべる愛菜。別に誤魔化せてないからねそれ。愛菜好みになってどうすんだ。
うん、やっぱりこの子はダメな子なのかもしれない…。ハルは、先ほど改めた認識を、再び捻じ曲げた。
タイトルで少し期待した方いますかね?
そうだとしたら嬉しいです。期待してほしかったので!!!
でも、まだ彼らにそういうことは早いので、ここは百合っぽい感じで!我慢してください!!
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