14.昼食
あらすじ
ご飯食べに行きます!
「パスタ!」
「天ぷらー。」
「…なんでもいい。」
歩きながら今日の昼食を決めている。大体の場合、このようにハルと優也が違うメニューを言い張り、涼がなんでもいいと言う。
「よーし!こうなったらジャンケンだ優也!」
「おういいぞ。俺はハルの癖は覚えてる。負けないからな。」
互いに歯を剥いて闘志を剥き出しにする。たかが昼食を決める話で。
「「じゃーんけーんぽい!」」
じゃんけんは良い。どちらかが必ず負けて、どちらかが必ず勝つ。勝負の方法は極めてシンプルで、誰も傷つかない。勝ち負けに後腐れがなく、物事の決定がシンプルに進む…これはハルの持論。
要は正直なところ、パスタでも天ぷらでもどっちでもいいのである。本当に嫌なら、多少駄々をこねるのだから。
勝負はハルの勝ちだった。ハルは勝利に使ったVサインを高く掲げ、ドヤ顔で勝利を飾った。上記の持論に一つ付け加えると、勝てばこういうことができる。勝者の特権というやつだ。と、いうことで三人はパスタを食べるためイタリアンレストランに向かうことにした。
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「…お腹いっぱい。」
く、苦しい。まさかこれほどとは…。まさか…
ーー皿の半分しか食べられないなんて……
お腹が空いていたハルは、大好物のペペロンチーノを注文していた。ニンニクで口が臭くなってしまうのは難点ではあるが、ニンニクの風味とパスタのコンビネーションには抗えない。別に自分の口臭を誰かに嗅がせる機会などないだろう。
この店では1.5倍盛り、2倍盛りと選ぶことができ、ハルはもともと大食いの部類には入っていないので、いつも通り1.5倍盛りを注文した。
しかしどうだろう。実際に食べ切れたのは皿の半分程度だった。
「ハル、お前、女になって胃袋小さくなったんじゃないのか?」
「そ、そうなのかな…。そんなことあるんだ…。」
優也がその様子を見て考察をする。そして、残してしまったペペロンチーノを悲しげに見つめるハル。それに見かねた涼は、それを奪い取るようにして自分の目の前に置いた。
「無理なら食いすぎるな。お前が残すのが嫌いなのは知ってる。俺が食うから心配すんなよ。」
涼はぶっきらぼうにそう言って、ペペロンチーノを口に運ぶ。涼はすでに自分の分を食べ終えていた。涼が頼んだのはカルボナーラ。…2倍盛りの。
「涼、お前こそ大丈夫なのか?もうたくさん食べたじゃん。」
「心配すんなって。お前が落ち込んでんのは似合わないから。」
「へへ…ありがと。」
そう小さく笑うハルと、「おう」と返事をしてペペロンチーノを頬張る涼。そして、遠い目をする優也。
「お前ら…俺のこと忘れてない?」
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「私は小説探したいから本屋に行くけど、二人はどうする?」
涼が食べてくれた後で、今後の予定を相談する。ちなみに涼は何もなかったかのような涼しい顔をしている。大した奴だ。
「んー、俺は服でも見に行こうかな。涼は?」
「俺は特に見たいものもないな。ハルにでも付いていくよ。」
「おっけー。じゃあ二時間後にこの集合な!」
俺たちはモールに来ると大体一度解散する。お互いのニーズを尊重して、それぞれが行きたいところに勝手にいって後で合流する。協調性が全くないと逆に協調性が生まれるいい例だろう。
そうして優也とは一旦別れ、涼を引き連れてハルは本屋へ向かった。
ふと、すれ違う人々の中で、しばしば目をとめてしまう光景があった。手を繋ぐカップル。楽しそうに話すカップル。
つい最近まで、自分もそういう人間だったはずなのに、もう訪れないかもしれない未来。ちら、と涼に目をやる。ーーこいつにも、そういう相手ができるのかな…。別に他意はない。ただ単純にそう思っただけだった。
涼とは高校入学から一緒にいるが、浮いた話は一度も聞いたことがない。本人も誰それと付き合ってるなどとは言っていなかったし、本当にそういう相手はいなかったのだろう。
なんか、俺よりこいつの方が心配になってきた…。こいつこんなんで本当に彼女なんてできるのかよ…?そこでハルは、そんな親友のために一肌脱いでやることにした。
「なぁ、涼!この二時間だけ、お前は私の彼氏な!」
まだハルは特に意識はしていません。
ただ親友のためを思っているだけです。
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