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10.登校

あらすじ

社会的にも女の子に!

あと、名前が葉輝からハルに!

めんどくさかったわけじゃないから!!!

「ハールーちゃん!」


 俺を呼ぶ声がする。微睡んで朦朧とした意識の中で、うっすらと目を開く。


 黒い…楕円…。なんか、わしゃわしゃしてる…。あ…なんか見覚えある…。そう、これは…。


「…ゴキブリ。」


「誰がじゃい!」


 ゴキブリ(愛菜)が勢いよくハルの毛布を引っぺがす。


「あ…やめて…ゴキブリさん…。やめてよぉ…。」


 涙目になりながら必死で毛布に手を伸ばすハル。その光景にゴキブリ(愛菜)は…


「グアッ…」


ゴキブリとは思えない鳴き声をあげて、ゴキブリ(愛菜)は倒れた。ーー鼻血を出して。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「全く…誰がゴキブリだって言うの?」


 ハルの髪型を整えながら愛菜は文句を垂れる。今日から大学の後期が始まるということで、今日は愛菜が化粧をしてくれるということになった。とはいうものの、愛菜と友達として付き合い始めてから、愛菜は毎日アパートに押し寄せ、ハルに女子としての任務をレクチャーしていた。


「あはは、ごめんな。でも、私の寝起きが悪いのなんて、愛も知ってるだろ?」


 そう、先ほどの通り、ハルは寝起きに幼児退行することがままある。ただ、それは愛菜も知っていることで、いままでそれでとやかく言われたことはなかったのだが。ちなみに、愛菜のドス黒オーラのおかげで、『私』は定着しつつある。


「そうだけど…今のハルは…ダメよ!」


「ダメ…とは?」


純粋な瞳で小首を傾げるハル。それを真正面から見ていた愛菜は、また鼻血が出そうになりながらもなんとか踏みとどまった。


「と、とにかくダメなの!」


(あやうく光になって消し飛ぶところだったわ…。あたしとしたことが、もう一生『ゴキブリ』でもいいなんて思うなんて…なんでこんなに可愛いの!!)


 そんな愛菜の心情など露知らず。ハルは不思議そうな顔で首を傾げた。


「ふーん、変な愛」


 そう言ってハルはにへらと笑った。それを見た愛菜は…


「ごめん、ぶん殴っていい?」


「え、なんで」


「殴って顔の形を変えないと私の心の形が変わりそう。」


 すごい理不尽だ。やっぱ怖いよこの人…。


 無機質な笑顔で拳を握りしめる愛菜を見て、ハルは体を震わせた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 なんとか愛菜を宥めすかし、大学まで来た。今日は後期のガイダンスなので、行かなければこれからの予定が立てられない。しかし、夏休み明けということも相まって、講義室へ向かう足取りは重くなっていた。


『自信を持って行け!』


 そう愛菜は言っていた、が…。


『あの子誰?』『あんな可愛い子いたか?』『やばい。タイプ。』


 なんだか道行く生徒達がこちらをチラチラみて何かを言っている気がする。なんだ、そんなに変なのか。あんまり見ないで…この姿でくるの初めてなんだから!

 無意識に早足になるハル。それらの視線から逃げるように講義室へと逃げ込んだ。しかし、そこも決して逃げ場所ではなかった。


…げげ。


 ハルに集まる視線。それはそうだろう。講義室なのだから、自分と同じ学科の人間はみんなここにいる。あまりに焦りすぎて失念していた。ちなみに、助け舟の愛菜は学科が違うためここにはいない。なんでも、やりたいことがあるのだとか。俺のためにそんなん捨てろよふざけんな。


『あんな子、うちの学科にいたか?』『もしかしてあれが例の…?』『踏まれたい。』


 聞こえてくる声に、ハルは頬を引きつらせた。なんか許容し難い言葉も聞こえた気がするが、聞かなかったことにする。聞かなかったったら聞かなかったのだ。


 ハルは全ての声を無視して、いつもの席に一直線に向かった。俺はいつも、音無(おとなし) 優也、水瀬(みなせ) (りょう)、佐藤 康平(こうへい)の四人でつるんでいる。いつも、講義が始まれば四人並んで座って駄弁って無意味な時間を過ごす。


 ちら、と康平と目があった。康平は茶髪の短髪で、猿みたいなやつだが、これでも彼女持ち。なんでも、高校を卒業する時に一つ下の後輩に告白されたらしい。青春だねぇ。爆発しろ。そして禿げろ。禿げてしまえ。肝心のその康平は、心奪われたような惚けた表情をしていた。


 …いや、あいつ、俺がハルだって気付いてないな。それはそうなんだろうけど、まずそのアホ面やめろ。俺を見ながらそのアホ面されると変な気持ちになるからやめろ!その面写メって彼女に送りつけてやるぞ!彼女に謝れ!


 ハルは、脳内でバカ丸出しの顔した康平を叱りつけると、一番近い方に座っていた涼の隣にどかっと座る。


…うわー、座ったはいいけど、どうしたらいいんだ。みんな見てるよ…。じ、自己紹介とかするべきか?


 そーっと辺りを窺ってみる。好奇心をあらわにするやつ、ニヤニヤと汚い笑みを貼り付けているやつ、中にはもう顔が真っ赤になっているやつまでいる。


…言えねー!俺がハルですなんて言えねー!この空気で言えたら大したモンだよお前。


 隣を窺うと、そりゃあもう純粋な眼差しでこちらを見ていた。


 ああああ…隣の涼の視線が痛いぃ….。あんま見ないでくれよ緊張してるんだからぁ…。


 涼とは高校から一緒にいる。いわば悪友のような、親友のような、俺が心を置ける数少ない友人でもある。そんな彼からも、視線を頂戴している。熱気は感じないのでまだいいが。


 心臓がうるさいほどに響く。元々人前がそこまで得意ではないハルには、このプレッシャーは重すぎた。その結果、いつものヤケクソが出てくるのだ。


 ええい!言ったもん勝ちだろこんなの!言えばいいんだろ!

 勢いそのままに席を立つ。そして、ぎゅっと目をつむり、一息に言い切る。


「わ、私は!瀬川 ()()です!!!」


 …とんでもなく大きな声で叫んでしまった。


 ーー何故か敬礼付きで。

今回は少し人物紹介も挟んだので少々長めになっちゃいました。

音無くんは次でちょろっと紹介する予定です。ちょろっとね。


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