1.決別
性転換好きなんですよ。
性転換してキョドってる感じいいですよね。
そういうことで、書きたい物語を書きなぐっていきます。
現実では絶対にありえないようなことが起きた時、人間は一周回って落ち着くようになっているらしい。俺はこれまでの人生とは決別しなければならないんだな、と漠然に考えた………。
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…暑い。
夏真っ盛りの中、エアコンも止まってしまったワンルーム。
俺は呻きながら重い瞼を開けた。汗がじっとりと滲み、なんだかとても気分が良くなかった。
「あーつ…。暑いのやっぱ苦手なんだよなあ…。」
夏と冬、どちらが好きかと聞かれれば葉輝はいつも冬と答える。冬は着込めばなんとかなるが、夏はどうあがいても暑いからだ。
単純に暑がりともいうのかもしれないな…。
重くなった体を起こすと、なんだか妙な違和感を覚えた。全身にまとわりつくような倦怠感はいつものことではあるのだが、それとは別に、なんだか体の感覚に違和感がある。
なんだかもう取り返しのつかないような…
ふと、身体を見下ろしてみると、覚えのない膨らみが二つあった。
「いやー、いやいや…。ないだろそれは…。」
薄々感じてはいた違和感の正体。
無意識に自分の足の間へ手を伸ばそうとしたところでピタッと止まった。ここで触れてしまえば、自分の中の何かが壊れてしまうような気がした。
はーーーっ…
大きなため息をつき、乱れた気持ちを整えて、そっと手を伸ばした。返ってくる感触は慣れ親しんだソレではやはりない。
「いやいや…。ファンタジーじゃあるまいし…。」
そう独言てみても虚しく部屋に響くだけだった。まるで、これは現実なんだぞ、と嫌でも理解させられているような…。
なんだか頭まで痛くなってきた。寝起きの頭には情報量が多すぎたようだ。
「ひとまず、顔でも洗おう…。」
早々に心身ともに疲れ果ててしまった。身体的には軽くなったが、精神的に重くなった足を動かして洗面所へ向かう。洗面所には鏡が備え付けられており、そこへ向かえば必然的に自分の顔が見えてしまうのだが、もう頭がパンクしている葉輝にはそこまで考えが及ばなかった。
スッと鏡に映った顔と目があった。
肩まで伸びた髪、くっきりとした二重で大きな目、鼻筋は真っ直ぐ通り高すぎず低すぎない。唇は腫れぼったくはなく、比較的薄いが女性らしさがある。
「…誰?」
鏡に映ってこっちを見ているのだから自分しかいない。しかし、まだ自分の脳はこの現実を受け入れることができていないようだった。
元々、葉輝は整った顔立ちだった。生まれた時から二重でまつげは他の男子よりも長く、人によっては女子より長くて羨まれたことも少なくない。このあどけない少女には自分の面影はあるが、やはり自分として受け入れるには少々難しいものがあった。
スーッと空気を吸い込み、肺に空気をいれる。肺に新しい空気が溜まり、満ちていくのがわかる。限界まで吸い込むと、次はゆっくり、肺の空気を全て入れ替えるように息を吐き出した。これは葉輝が心を落ち着けるために行う、癖のようなものだ。深呼吸を終えた葉輝は、観念したように口元を歪めた。
「こうなったら仕方ないのかもしれないな。
戻るかどうかも定かじゃないし。
俺はこれから女子として生きることにしよう。」
それはある意味では、思考の放棄。なんの解決にならない開き直り。ただ、ここではそれでよかったのかもしれない。普通なら気が狂ってもおかしくないが、葉輝はあらゆることに無頓着で、深く考えない性格だったことであまり悩むということをしなかった。それは良いことではないかもしれないが、決して悪いことでもなかった。
こうして、瀬川 葉輝はこれまでの人生と決別し、女の子として生きることにした。
まあ…性別変わっただけだし…。
普通に生きていけるよね?
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