94.
壱琉はテーブルに片手を添えると、詰るように言った。
「どの辺りがお気に召さなかったのか、聞かせて貰おうか」
声音こそ穏やかだが明らかな不満が見てとれた。それは錦織へと向けられている。
「インコミッション──和訳すると委任を受けるなどの意味合いになりますが、果たしてこの部活に相応しい名前かどうか」
錦織は腕組みしながら、何故か俺に対して返答していた。
その不敵な笑みからは『言わずともわかりますよね?』なんて言葉が聞こえてきそうだ。……これもう脅迫だろ。
「そ……そうだな、この部活は依頼を受けるんじゃなくて……もっとこう……主体的に動く感じの名前がいいかもな……」
アサシンに睨まれた恐怖で俺はしどろもどろに壱琉を説得せざるを得ない状況に……
「……社会貢献部よりはマシだと思うが」
壱琉は顔を背けながらぶつくさ呟いた。
「何か言いました?」
錦織は満面の笑みを返す。目が笑ってないんだよなぁ……。
時刻は午後五時。このまま不毛な議論をしていても大したアイデアは生まれないだろう。
「……まあまあ、二人とも落ち着けって。今日は部活動初日だ。焦らず少しずついこうじゃないか」
俺は自ら仲介に入り、二人を引き離した。
「元凶は誰なんだか……」
「フンッ……」
この様子じゃ、先が思いやられるなぁ……俺含めだけど。かくして社会貢献部(仮)はどんな道筋を辿っていくのだろうか。




