93.
「さてと……」
俺はため息一つすると、壁際に置かれていたホワイトボードを取り出しては会議テーブル前に運んだ。
「口論してても埒があかない。ここは一つ、アイデアを書き出してみようじゃないか。はい、部活動の名前思いついた人〜」
ペンを片手に案を募る。
「「……」」
え、なんでこの二人無言なの。
「アイデアを募ると言い出したのは君だ。はじめに案を提示するのが"部長"としての道理では?」
不意に壱琉は畏まった言い方をした。その通りです、そうですね……。
「……わかったよ。じゃあ、『学校変革推進機構』ってのはどうだ?」
ボードにそれなりの文字で書き込む。
「却下」
錦織は瞼を伏せながら即答した。全否定精神変わらずですな。
「帰る」
そそくさと席を立つ壱琉。
「そんなに酷かったか!?」
俺は会議テーブルに両手を突き出して前のめりになった。
「……酷いもなにもふざけているのか君は。機構になってどうする」
壱琉は眉を上げながら戸に手をかけまいとしていた。どうやら本気で帰ろうとしているらしい。
「そういう壱琉はいい名前思いついたんだろうな」
未練がましく俺は壱琉を問いただす。彼はプライドが高い。流石に何の案も出さずに退場、という訳にはいかんだろう。
彼は顎に手をやって思考すると、「インコミッション部、略してインコミ部」とだけ言った。
インコミ部……なんかマスコミみたいな響きだな。いずれインゴミとかって揶揄されそう……。
「却下」
乾いた声音で錦織が否定した。
すると、どうしたものか、壱琉は会議テーブルに引き返してきた。




