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「は?」
呆けた声が気に障ったのか、あるいは内容に苛立ちを覚えたのか、錦織の鋭利な眼光が咎める。
「…え?だってどう考えても”社会貢献部”なんてダサいだろ。慈善活動じゃあるまいし」
俺は正直な言い分を答えた。言い終えた瞬間、ご令嬢の椅子が不自然にガタッと揺れ始める。
「ひぃ……!」
思わず声が裏返る。こわいこわい!今時のお化け屋敷かよここは。黒髪が横顔を覆い隠しているせいで更にホラー。
錦織は顔を上げると背筋を伸ばし、にこやかな表情で言った。
「社会貢献部。清潔で勤勉で良い響きでしょう」
胸元から一枚の紙を取り出し、テーブルの上をスライドするような形で差し出される用紙。余程自信があるのか、肉筆で書かれている。ええ……目が笑っていないんですけど……。
様子を見兼ねて、銀髪の美少年が挙手した。え!まさか助け舟を出してくれるの!いちるん!
「僕もその名称には賛成しかねる。何というか、少々安直では」
瞳を伏せながら生真面目なトーンで言う壱琉。
瞬間、紙がぐしゃりと握りつぶされた。おおおぃ!火に油を注ぐ気かー!貴様はぁー!




