表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/101

89.

「ああ……?なんだこれ。随分と馬鹿でかいけど──」


 箱と箱の隙間からは黒光りした筐体が見て取れる。まさかとは思うがゲーム台?


「これは……」


 俺の様子が気がかりだったのか、錦織も覗き込んできた。黒髪がさらりと揺れて、モスクが香る。俺は思わず身じろぎして背中を仰け反らした。


 錦織は持ち場そっちのけで箱をどかし始め、中から出てきたのは──


「グランド…ピアノ……」


 錦織は細目で言い淀みながら呟く。


「ピアノか……俺はまるっきり弾けんがアンティークぐらいにはなりそうだな」


 世紀の発見だと俺は思うのだが彼女の表情は感嘆のそれではなく、曇り、ともすれば怯えているようだった。


「錦織ってピアノ弾けるか?」


「手解き程度なら……」


「うお……やっぱり弾けるのか。いや、全く違和感ないんだけどね?」


「……」


 錦織は居心地悪そうに顔を背けた。嫌な思い出でもあったのだろうか。


「夜崎。こちらではソファにテーブル、テレビ付きの家具が見つかったよ」


 埃を払いながら壱琉が言う。錦織の様子を気に掛けながらもその場を後にし、彼の元へと向かった。


「おお……これはもうリビングルームだな。流石のオサレ高校。設備だけは整っている」


 汚れた教室とはいっても精々半年そこらの話らしく、全てを片付けた頃には新築同然の様相になったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ