表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/101

85.


 控えめなドレスに身を包んだ黒髪の少女が道をふさいだ。凛とした佇まいに、吸い込まれるような瞳。錦織小雪合だった。


「…錦織!」


 俺は思わず立ち上がった。自分一人で事を片付ける手筈だったからだ。


「あまり上手くいかないことは分かっていました。…もっと私を頼っても良かったのに…」


 消え入るような声で錦織は言う。


「お、おう…」


「君は…錦織小雪合さん…?」


 慎重な口調で名を言い当てた壱琉。特別候補生とあって顔は割れているようだ。


「よくご存じで」


 錦織は淀みない微笑を讃える。少し怖いけど…。


「改めまして、錦織小雪合と申します。そこの自意識過剰君と同じく、特別候補生として活動している者です」


 自意識過剰君って誰だよ…壱琉のこと?


「この度、特別候補生の結束を…いえ、社会に貢献すべく立ち上げる部活、”社会貢献部”に入部して頂きたくこの場に参りました」


 流石の錦織。酷く丁寧な口調で勧誘した。ていうか、社会貢献部ってなんだよ。部活の名前まだ決めてないんですけど。


「錦織小雪合…そうかなるほど」


 彼は僅かに口角を上げた。初めて見せた微笑。


「私からもお願い致します。入部して頂けませんか」


 深々と頭を下げる錦織。何事かと、周囲の客や給仕の視線が一斉にこの場に注がれる。


 おいおい嘘だろ。あの錦織が頭を下げた!?でもまあ…それ程の相手ということ。


 倣って俺も今一度、頭を下げる。


 壱琉は周りを見渡した後、ため息一つすると、


「…そこまで頼み込まれると、断るのが返って失礼に当たりそうだ。…ただし、活動内容によってはすぐ退部する」


「それで十分だ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ