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そそくさと空き教室から段ボール箱を回収し、職員室へと届けた。
「中々に重かったですけど、一体何が入ってたんです?」
綾崎先生は軽く汗を拭った。
「ふぅ~。…ああ、この学校の紙パンフレットだよ。近頃はデジタル化が顕著でね~。よく余ってしまうんだよ」
デジタル化ねぇ。俺はあまり乗り気ではないが。
最終下校時刻を三十分も過ぎてしまっていたので帰ろうとすると「お礼を持ってくる」と言って、綾崎先生が職員室の裏手へと入ってしまった。礼を頂く程、大した事をしていないのに。
手持ち無沙汰に職員室を見回していると、そばにある綾崎先生の机が目に映った。綺麗に整理整頓されていて、性格とは裏腹に几帳面な性格だと思う。更に視線をスライドさせると一枚の名簿用紙を発見した。
クラスは一年D組と書かれていて……俺は思わぬ収穫を得たのだった。
残り物には福がある、居残り人には得があるってか。




