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77.

 先の命運は自身が握る、か。


 生真面目な綾崎先生の視線を受け取った俺は、反り気味になっていた腰を伸ばした。


 一通りの食事を終えると、両者共にナプキンで口元を拭った。模擬食事会であるのでメインは魚の切り身一切れだった。ナイフやフォークの扱いを再確認するだけなのでこれで十分である。


「…さてと、ざっとこんなものかしら」


 綾崎先生は残ったスパークリングを飲み干すと、小さな吐息を漏らした。


「手ごたえの程はいかがなものでしょうか」


 扉越しにも綾崎先生の声が届いたのか、錦織と五十嵐が順に入室してくる。


「そうだな…相手が大人の女性で良かったかもしれん。緊張感を損なうことなく一通り確認することが出来たよ」


「それは良かった♪」


 俺がまじまじと感想を述べると、五十嵐は上機嫌で相槌を打つ。


 テーブルに広げられた食器やカトラリー。大した数ではないがそれなりに汚れている。ここは礼も兼ねて俺が片づけをするのがスジだろう。


 俺は浅くため息を切ると、立ち上がった。


「よし。これにて模擬食事会は終了。…後片付けは俺が全部するから、錦織と五十嵐さん、それと綾崎先生は先帰っていいですよ」


 似つかない言動だったせいか、錦織と綾崎先生は顔を見合わせて小さく笑っていた。五十嵐はそれを不思議そうに見つめている。


「そうですか。ではお言葉に甘えて。…五十嵐さん。行きましょうか」


「は~い」


 錦織は五十嵐さんを連れて”しつけ部屋”を後にした。


 二人は親友なのだろう。仲睦まじい様子に俺は羨望の眼差しを向けた。俺は同性の友人を欲していたのだろうか。まだ分からない。


 部屋の上部に備え付けられた時計を見やると、最終下校時刻を少し過ぎていた。これは早めに済ませなければ。

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