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63.

「ルームフレグランスの名前はつらつら出てくるくせに、テーブルマナーに疎いとは…」


 錦織は呆れた溜息をつく。


 ほう、テーブルマナーね。ナイフとフォーク、どちらが右だか左だか分からない程度には疎いと言える。ていうか、ルームフレグランスについての独り言聞いてたのか。(※六話参照)


「パスタ料理にスプーン使っちゃいけないなんて何処で習うんだよ」


 俺は不満げにぼやいた。


「使ってはいけない訳ではありませんが本場イタリアではフォークのみを使用して食べるんです。スプーンを使うのは幼児くらいらしいですよ」


「なん…だと…」


 つまり、あの場で俺は壱琉に"赤ん坊"扱いされていたと。道理で機嫌を損ねたわけだ。


 しかし、スプーンを使うのがお洒落な食べ方だと思っている人間は俺含め五万といるだろう。第一、後ろのテーブル席の主婦も同じような食べ方してたし。親の背を見て子供は育つんじゃないの?


 携帯を持っていない俺は情報の真偽など知る由もないが正論製造機である錦織が言っているんだ。多分、正しいのだろう。


「あれか…これが日本語英語とかいう勘違いなのか」


「…少し違いますがそんな感覚です」


 錦織は腕組みして、目を伏せた。


「スパゲティがパスタ全般だと思い込んでいる連中も多分存在するだろうな。…残念、スパゲティは麺の種類です」


 イタリア料理には結構興味があって、旅行雑誌とかをよく図書館で借りたりしたもんだ。


「自問自答ですか。にしても興味の矛先が限定的すぎです。浅くてもいいので広く学習してみては如何でしょう」


 彼女の助言を半ば無視して、知識の披露を続ける。


「他にも知ってるぞ。イタリアのリストランテではピザが食えないんだ。食べるにはピッツェリアという専門の店に行かないといけない」


「勉学は不得意なのに、そういう知識は豊富なんですね…」


 錦織は引き気味だったが直ぐに表情を所得顔に変えて、含みのある声音で言った。


「…まあ、その知識。無駄にはならないでしょう」


「そうだといいけどなぁ…」

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