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62.

 例の如く事後報告。


「フラれた…というか、部活の話にすらもっていけなかった…」


 項垂れながら、弱々しい声音で口火を切った。


「…でしょうね」


 錦織はため息まじりに首肯する。


「でしょうねって…期待してなかったの?」


「ええ、期待してませんでしたよ」


 なんでこの子、清々しいまでの有り顔してるの…。


「…もしかして、錦織が参加しなかったのは失敗が目に見えていたからか?」


 彼女は顎に手をやって、考えるような仕草をする。


 目蓋が再び開かれると答えた。


「それもありますが最たる理由としてはやはり"品位"についての問題ですかね」


 こうして教室で話している俺達。高校一年生で…いや、高校生の口から"品位"なんて言葉が出てくる時点で普通ではない。


「え、何?この高校って品格を持ち合わせた人しか入学出来ないの?」


 冗談ぶっこいた。まあ、これまで接してきた錦織や壱琉は特別候補生の時点で最早、一般概念の高校生から大きく逸脱しているのだろう。


 俺を含めて…と言いたい所だが含めると語尾の「位」が飛んでいって、語頭に「下」が追加されそうだ。自意識が過剰と自分でも分かっていながら、偶に出てしまう自己肯定感の低さ。この相反した心持ちは一体何なのだろうか。


 錦織は一歩詰め寄ると、冷静な口調で言う。


「品格前提、そんな決まりはありませんが…。夜崎くんも分かっているでしょう?彼相手なんです。一般観念では太刀打ち出来ないんですよ」


 彼の乾いた眼差しを思い出して、つい辟易した吐息が出てしまう。


「…そんな事は分かっていたつもりだったけどな。普段しないような丁寧さをもって食事に臨んだし、何より壱琉が真面に聞く耳を持たなかった。こりゃ無理ゲーだろ」


 錦織はほんの少しの間小さく唸ると、右手の人差し指を垂直に上げて発言してきた。ごく稀に見る錦織のあどけない仕草は何処か微笑ましいものがある。


「初め…初動に何をしたのかお聞きしたいです」


 初動ね…店員が美少年二人を発見して、頬を朱に染めていた所から話せばいいかね。


「運良く…といか壱琉はカウンター席だったんだ。だから俺は知り合いを装って、店員に案内して貰った。…ここまではスマートだよな?」


 錦織は「貴方にしてはよくやった」という表情をして、小さく首肯した。


「席についた後は無難にミートソーススパゲティを注文して、食べる時もきちんとスプーンとフォー…」

「待って」


 間髪入れず発言中に錦織が割り込んでくる。咎めるように鋭い声音が飛んできた。


「何故、パスタにスプーンが出てくるの?」


 彼女の質問に対して、俺は訳が分からなかった。


「…何故って、スプーンはソースと混ぜる時に使うし、何よりフォークと一緒に使いながらくるくる巻いて食べるのがお洒落の常套手段だろ」


「貴方ねぇ…」


 錦織は顳顬に手をやった。

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