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48.

 他者からすれば、何一つ代わり映えのない教室に見えただろう。


 ホームルーム前の弛緩した空気感、窓から注ぐ柔らかな斜光、チャイムが鳴ればそそくさと席へ着く生徒達。


 表面上は確かに変わっていない。しかし、実際はどうだ。俺は今、他生徒と同じく席へ着席しているのだが、幾分視線が痛い。数歩先、斜め前に座る錦織も同様の状況であった。


 おまけに登校時、下駄箱近くの掲示板を確認したのだが、【不適切な行いをした生徒について】と銘打たれた貼り紙が一つ貼られているだけで、その内容も処分された生徒についても、見事に煙に巻いてやがった。


 どうせこのクズ高校の事だ。保護者会すら開かないつもりでいるんだろう。


 何でこんな状況になったかは言うまでもないが、とにかく情報の伝達スピードが早いこと早いこと。


 四限目が終わり、昼時になった。


 本当に座学は味気の無いものばかりで退屈だ。やはり形式めいた日本の授業を根本から変える必要がある。


 着席しながら後ろに伸びをして、ついでにフードの中をゴソゴソする。


 紙の質感…。


 胸元でその折り畳まれた紙を小さく開けると、【廊下へ来てください】との指示。


 はいはい。言われなくても行きますよ。


 この達筆な文字は恐らく錦織。入れられる度に思う事だが、マジでさおりんのステルス能力半端ないな。


 冗談抜きで学校の裏事情を暗躍できる才能だぞこれ。


 未だ、教室にいる生徒の視線を受け付けんとばかりに、堂々と退室すると左手に黒髪が揺れた。


 俺は不機嫌な口調で、


「あの、錦織さん?これくらい口頭で直ぐ伝えられると思うんだが」


 壁を背にしていた錦織は胸の前で腕組みすると、瞼を伏せながら言った。


「冗談も程々にして下さい。ただでさえ私達は特別候補生としてクラス中に知れ渡っているんです。無駄に神経を擦り減らしたくないんですよ」


「そうですか…」


 俺は素っ気なく答えた。


 錦織は体を起こすと、廊下をそそくさと歩き始めた。どうやら「面を貸せ」という事らしい。


 小走りで錦織の背後へと追いつくと、彼女の方から疑問符が投げかけられた。


「で。先日私が退室した後、綾崎先生とどんな話を?」

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